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文献名1霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
文献名2第1篇 幽界の探険よみ(新仮名遣い)ゆうかいのたんけん
文献名3第9章 雑草の原野〔9〕よみ(新仮名遣い)ざっそうのげんや
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ焚書 データ凡例 データ最終更新日2021-10-19 02:00:53
あらすじ
雑草の原野で、ふたたび自分は一人になっていた。ザラザラと怪しい音がすると、自分の両岸に焼け砂のようなものが飛び込み、目が焼けるような痛さで開くこともできなくなった。

頭上からは冷たい氷の刃が降ってきて、梨割りにされる。一生懸命、「アマテラスオホミカミ」を唱えると、目の痛みがなおり、自分は女神の姿に化していた。

舟木がはるか遠方から、比礼を振りつつこちらへ向かってきた。再開の歓喜にしばし休息していると、後から悪鬼がやってきて、氷の刃で切ってかかった。舟木が比礼を振り、自分は神号を唱えると、悪鬼は退散した。

どこからともなく、「北へ北へ」という声が呼ばわり、自分の体が自然に進んでいった。「坤」という字のついた王冠をかぶった女神と、小松林という白髪の老人から筆を託され、自分は五百六十七冊の半紙を書いた。すると、「中」という鬼が現れて書いたものを槍で突き刺し、空に散乱させてしまった。

他にも鬼がやってきて、自分の書いたものを焼いてしまった。「西」という男が、自分の書いたものを抜き出して、もって来る。鬼たちは「西」を追いかけるが、自分が比礼を振ると、逃げてしまった。「西」は書いたものを抱えて南の空高く姿を隠してしまった。
主な人物 舞台 口述日 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1921(大正10)年12月30日 愛善世界社版44頁 八幡書店版第1輯 61頁 修補版 校定版43頁 普及版23頁 初版 ページ備考
OBC rm0109
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本文  雑草の原野の状況は、実に殺風景であつた。自分は、いつしか又一人となつてゐた。頭の上からザラザラと怪しい音がする。何心なく仰向くとたんに両眼に焼砂のやうなものが飛び込み、眼を開くこともできず、第一に眼の球が焼けるやうな痛さを感ずるとともに四面暗黒になつたと思ふと、何物とも知らず自分の左右の手を抜けんばかりに曳くものがある。また両脚を左右に引き裂かうとする。なんとも形容のできぬ苦しさである。頭上からは冷たい冷たい氷の刃で梨割りにされる。百雷の一時に轟くやうな音がして、地上は波のやうに上下左右に激動する。怪しい、いやらしい、悲しい声が聞える。自分は一生懸命になつて、例の「アマテラスオホミカミ」を、切れぎれに漸つと口唱するとたんに、天地開明の心地して目の痛もなほり、不思議や自分は女神の姿に化してゐた。
 舟木ははるかの遠方から、比礼を振りつつ此方へむかつて帰つてくる。その姿を見たときの嬉しさ、二人は再会の歓喜に充ち、暫時休息してゐると、後より「松」といふ悪鬼が現はれ、光すさまじき氷の刃で切つてかかる。舟木はただちに比礼を振る、自分は神名を唱へる。悪鬼は二三の同類とともに足早く南方さして逃げてゆく。
 どこからともなく「北へ北へ」と呼ばはる声に、機械のごとく自分の身体が自然に進んで行く。そこへ「坤」といふ字のついた、王冠をいただいた女神が、小松林といふ白髪の老人とともに現はれて、一本の太い長い筆を自分に渡して姿を隠された。見るまに不思議やその筆の筒から硯が出る、墨が出る、半紙が山ほど出てくる。そして姿は少しも見えぬが、頭の上から「筆を持て」といふ声がする。二三人の童子が現はれて硯に水を注ぎ墨を摺つたまま、これも姿をかくした。
 自分は立派な女神の姿に変化したままで、一生懸命に半紙にむかつて機械的に筆をはしらす。ずゐぶん長い時間であつたが、冊数はたしかに五百六十七であつたやうに思ふ。そこへにはかに何物かの足音が聞えたと思ふまもなく、前の「中」といふ鬼が現はれ、槍の先に数十冊づつ突き刺し、をりからの暴風目がけ中空に散乱させてしまうた。さうすると、又もや数十冊分の同じ容積の半紙が、自分の前にどこからともなく湧いてくる。また是も筆をはしらさねばならぬやうな気がするので、寒風の吹きすさぶ野原の枯草の上に坐つて、凹凸のはなはだしい石の机に紙を伸べ、左手に押さへては、セツセと何事かを書いてゐた。そこへ今度は眼球の四ツある怪物を先導に、平だの、中だの、木だの、後だの、田だの、竹だの、村だの、与だの、藤だの、井だの印の入つた法被を着た鬼がやつてきて、残らず引さらへ、二三丁先の草の中へ積み重ねて、これに火をかけて焼く。
 そこへ、「西」といふ色の蒼白い男が出てきて、一抱へ抜きだして自分の前へ持つてくる。鬼どもは一生懸命に「西」を追ひかけてくる。自分が比礼をふると驚いて皆逃げてゆく。火は大変な勢で自分の書いたものを灰にしてゐる。黒い煙が竜の姿に化つて天上へ昇つてゆく。天上では電光のやうに光つて、数限りなき星と化してしまうた。その星明りに「西」は書類を抱へて、南の空高く姿を雲に隠した。女神の自分の姿は、いつとはなしに又元の囚人の衣に復つてをつた。俄然寒風吹き荒み、歯はガチガチと震うてきた。そして何だかおそろしいものに、襲はれたやうな寂しい心持がしだした。
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