雑草の原野で、ふたたび自分は一人になっていた。ザラザラと怪しい音がすると、自分の両岸に焼け砂のようなものが飛び込み、目が焼けるような痛さで開くこともできなくなった。
頭上からは冷たい氷の刃が降ってきて、梨割りにされる。一生懸命、「アマテラスオホミカミ」を唱えると、目の痛みがなおり、自分は女神の姿に化していた。
舟木がはるか遠方から、比礼を振りつつこちらへ向かってきた。再開の歓喜にしばし休息していると、後から悪鬼がやってきて、氷の刃で切ってかかった。舟木が比礼を振り、自分は神号を唱えると、悪鬼は退散した。
どこからともなく、「北へ北へ」という声が呼ばわり、自分の体が自然に進んでいった。「坤」という字のついた王冠をかぶった女神と、小松林という白髪の老人から筆を託され、自分は五百六十七冊の半紙を書いた。すると、「中」という鬼が現れて書いたものを槍で突き刺し、空に散乱させてしまった。
他にも鬼がやってきて、自分の書いたものを焼いてしまった。「西」という男が、自分の書いたものを抜き出して、もって来る。鬼たちは「西」を追いかけるが、自分が比礼を振ると、逃げてしまった。「西」は書いたものを抱えて南の空高く姿を隠してしまった。