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文献名1霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
文献名2第2篇 幽界より神界へよみ(新仮名遣い)ゆうかいよりしんかいへ
文献名3第13章 天使の来迎〔13〕よみ(新仮名遣い)てんしのらいごう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
自分はなお進んで水獄の二段目を奥深く極めた。そして三段目を探検しようとしたとき、にわかに天上から喨々と音楽が聞こえてきた。

空を仰ぐと、天使が共を連れて、自分の方に降臨してくるのが見えた。そして、都合により産土の神のお迎えであるから、一時帰るがよい、とお達しがあった。

三四十分、ふわりふわりと上へ上っていくような心地がし、気づくと高熊山の岩窟の前に端座していた。それから約一時間ばかり経つとまた、再び霊界にいた。

すると、産土様である小幡神社の大神様が現れた。そして、霊界が切迫しているため、幽界より先に、神界の探検をする必要があることを告げた。

自分の体が捉まれて運ばれ、おろされたところは綺麗な海辺であり、富士山が近くに大きく見えた。今から思うと、三穂神社に行ったのである。そこで、夫婦の神様に、天然笛と鎮魂の玉を授かった。

と思うせつな、不思議にも自分は小幡神社の前に端座していた。帰宅の念を天使にたしなめられ、神界へ旅立つことになった。天使は、神界と幽界が今、混乱状態であることを告げ、神界へ旅立って高天原に上るように、と告げた。

天の八衢までは天使が送っていくので、そこから鮮やかな花の色をした神人が立っている方へいくように、と教えられた。

神界といえども善悪不二であり、よいことばかりではないこと、現界と霊界は相関しているので、互いに出来事が移ってくること、また神界にいたる道には、神界を占領しようとする悪魔が邪魔をしようとすることを聞いた。

やがて自分ひとり、天然笛と鎮魂の玉を持ち、羽織袴装束で、神界へと旅立ちすることになった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月18日(旧09月18日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1921(大正10)年12月30日 愛善世界社版59頁 八幡書店版第1輯 66頁 修補版 校定版59頁 普及版31頁 初版 ページ備考
OBC rm0113
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本文  自分はなほ進んで二段目を奥深く究め、また三段目をも探険せむとした時、にはかに天上から何ともいへぬ嚠喨たる音楽が聞えてきた。
 そこで空を仰いでみると、白衣盛装の天使が数人の御供を伴れて、自分の方にむかつて降臨されつつあるのを拝んだ。さうすると何十里とも知れぬ、はるか東南の方に当つて、ほんの小さい富士の山頂が見えてくるやうな気がした。
 自分のその時の心持は、富士山が見えたのであるから、富士山の芙蓉仙人が来たものと思つた。しかしてその前に降りてきた天使を見ると、実に何とも言へぬ威厳のある、かつ優しい白髪の、そして白髯を胸前まで垂れた神人であつた。
 神人は自分に向つて、
『産土神からの御迎へであるから、一時帰るがよい』
との仰せであつた。しかし自分は折角ここまで来たのだから、今一度詳しく調べてみたいと御願ひしてみた。
 けれども御許しがなく、
『都合によつて天界の修業が急ぐから、一まづ帰れ』
と言はるる其の言葉が未だ終らぬうちに、紫の雲にわが全身が包まれて、ほとんど三四十分と思はるる間、ふわりふわりと上に昇つてゆくやうな気がした。しかしてにはかに膝が痛みだし、ブルブルと身体が寒さに慄へてゐるのを覚えた。
 その時には、まだ精神が朦朧としてゐたから、よくは判らなかつたが、まもなく自分は高熊山の巌窟の前に端坐してゐることに、明瞭と気が付いた。
 それから約一時間ばかり正気になつてをると、今度はだんだん睡気を催しきたり、ふたたび霊界の人となつてしまつた。さうすると其処へ、小幡神社の大神として現はれた神様があつた。
それは自分の産土の神様であつて、
『今日は実に霊界も切迫し、また現界も切迫して来てをるから、一まづ地底の幽冥界を探究する必要はあるけれども、それよりも神界の探険を先にせねばならぬ。またそれについては、霊肉ともに修業を積まねばならぬから、神界修業の方に向へ』
と仰せられた。そこで自分は、
『承知しました』
と答へて、命のまにまに随ふことにした。
 さうすると今度は自分の身体を誰とも知らず、非常に大きな手であたかも鷹が雀を引掴んだやうに、捉まへたものがあつた。
 やがて降された所を見ると、ちやうど三保の松原かと思はるるやうな、綺麗な海辺に出てゐた。ところが先に二段目で見た富士山が、もつと近くに大きく見えだしたので、今それを思ふと三穂神社だと思はれる所に、ただ一人行つたのである。すると其処に二人の夫婦の神様が現はれて、天然笛と鎮魂の玉とを授けて下さつたので、それを有難く頂戴して懐に入れたと思ふ一刹那、にはかに場面が変つてしまひ、不思議にも自分の郷里にある産土神社の前に、身体は端坐してゐたのである。
 ふと気がついて見ると、自分の家はついそこであるから、一遍帰宅つて見たいやうな気がしたとたんに、にはかに足が痛くなり、寒くなりして空腹を感じ、親兄弟姉妹の事から家政上の事まで憶ひ出されてきた。さうすると天使が、
『御身が今人間に復つては、神の経綸ができぬから神にかへれ』
と言ひながら、白布を全身に覆ひかぶされた。不思議にも心に浮んだ種々の事は打忘れ、いよいよこれから神界へ旅立つといふことになつた。しかして其の時持つてをるものとては、ただ天然笛と鎮魂の玉との二つのみで、しかも何時のまにか自分は羽織袴の黒装束になつてゐた。その処へ今一人の天使が、産土神の横に現はれて、教へたまふやう、
『今や神界、幽界ともに非常な混乱状態に陥つてをるから、このまま放つておけば、世界は丸潰れになる』
と仰せられ、しかして、
『御身はこれから、この神の命ずるがままに神界に旅立ちして高天原に上るべし』
と厳命された。
 しかしながら自分は、高天原に上るには何方を向いて行けばよいか判らぬから、
『何を目標として行けばよいか、また神様が伴れて行つて下さるのか』
とたづねてみると、
『天の八衢までは送つてやるが、それから後は、さうはゆかぬから天の八衢で待つてをれ。さうすると神界の方すなはち高天原の方に行くには、鮮花色の神人が立つてをるからよくわかる。また黒い黒い何ともしれぬ嫌な顔のものが立つてをる方は地獄で、黄胆病みのやうに黄色い顔したものが立つてゐる方は餓鬼道で、また真蒼な顔のものが立つてをる方は畜生道で、肝癪筋を立てて鬼のやうに怖ろしい顔のものが立つてゐる方は修羅道であつて、争ひばかりの世界へゆくのだ』
と懇切に教示され、また、
『汝が先に行つて探険したのは地獄の入口で、一番易い所であつたのだ。それでは今度は鮮花色の顔した神人の立つてゐる方へ行け。さうすればそれが神界へゆく道である』
と教へられた。しかして又、
『神界といへども苦しみはあり、地獄といへどもそれ相当の楽しみはあるから、神界だからといつてさう良い事ばかりあるとは思ふな。しかし高天原の方へ行く時の苦しみは苦しんだだけの効果があるが、反対の地獄の方へ行くのは、昔から其の身魂に罪業があるのであるから、単に罪業を償ふのみで、苦労しても何の善果も来さない。もつとも、地獄でも苦労をすれば、罪業を償ふといふだけの効果はある。またこの現界と霊界とは相関聯してをつて、いはゆる霊体不二であるから、現界の事は霊界にうつり、霊界の事はまた現界にうつり、幽界の方も現界の肉体にうつつてくる。ここになほ注意すべきは、神界にいたる道において神界を占領せむとする悪魔があることである。それで汝が今、神界を探険せむとすれば必ず悪魔が出てきて汝を妨げ、悪魔自身神界を探険占領せむとしてをるから、それをさうさせぬやうに、汝を神界へ遣はされるのだ。また神界へいたる道路にも、広い道路もあればまた狭い道路もあつて、決して広い道路ばかりでなく、あたかも瓢箪をいくつも竪に列べたやうな格好をしてゐるから、細い狭い道路を通つてゐるときには、たつた一人しか通れないから、悪魔といへども後から追越すといふわけには行かぬが、広い所へ出ると、四方八方から悪魔が襲つて来るので、かへつて苦しめられることが多い』
と教へられた。間もなく、神様の天使は姿を隠させたまひ、自分はただ一人天然笛と鎮魂の玉とを持ち、天蒼く水青く、山また青き道路を羽織袴の装束で、神界へと旅立ちすることとなつた。
(大正一〇・一〇・一八 旧九・一八 外山豊二録)
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