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文献名1霊界物語 第1巻 霊主体従 子
文献名2第2篇 幽界より神界へよみ(新仮名遣い)ゆうかいよりしんかいへ
文献名3第17章 神界旅行四〔17〕よみ(新仮名遣い)しんかいりょこう(四)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-02-23 15:06:41
あらすじ神界場面がたちまち一変し、また自分は元大橋たもとに立っていた。大祓詞声が聞こえて来る方に行くと、五十がらみ爺と四十がらみ女が背中合わせにひっついて、天狗と稲荷をそれぞれ拝んでいた。自分は神様にお願いして祝詞を奏上すると、二人体は分離した。二人は感謝して神業に参加しようとしたが、男方は強欲ために地獄に堕ちて肉体は滅びてしまった。また光景が一変し、小さな十字街頭で、先ほど見た八つ頭八つ尾霊が憑いた男が、車に乗るように進めてきたが、自分は断って徒歩で進んだ。非常に険峻な山坂を三つ四つ越えると、そこには澄み切った河べりに、老いた松が青々と並んでいる景勝地であった。自分はこここそ神界であると思った。またとぼとぼと進んでいくと、小さな町に出た。地形は蓮華台上にあり、高天原中心と称してもよいような町であった。山を下って少し北に進んだ小さな家で、か幽庁におられた大王が、若い若い女姿で自分を出迎えた。大王と再会を喜んで珍しい話を聞いていると、虎狼がうめくような声で祝詞が唱えられているが聞こえた。そ祝詞声であたりは暗黒に閉ざされ、「足」という鬼に「黒」という古狐が憑いているが見えた。河からは大きな竜体が、どこからともなく悪魔が現れてきた。自分は「天照大御神」「産土神」を念じて祝詞を唱えると、一天にわかに晴れ渡った。祝詞も悪魔口から唱えられると、かえって世中は混乱する。言霊は身も魂も清浄となった人が使ってはじめて、世中を清めることができるである。自分は八衢に帰っていた。さきほど鬼、狐、悪竜は自分を追ってきた。鬼は眷属を引き連れて自分を八方より襲撃し、口中から何十万本も針を吹きかけた。しかし自分体は神明加護を受けており、何影響もなかった。そありがたさに感謝祝詞を唱えると、すべて悪魔は消えてしまった。「足」という鬼は、一見神に仕えるかような服装をしていた。河から上ってきた竜は竜女に姿を変え、本来は大神御経綸に参加すべき身魂であった。しかし、「足」鬼と肉体上関係を結び、使命を台無しにしてしまった。「足」鬼は竜女と関係を持った罪ために滅びてしまった。本来竜女は三千年苦行を経て、ようやく人間として生まれてきたもであり、人間になった最初一生は、男女交わりを絶たなければ、再び竜体に堕ちてしまう。そため、竜女を犯した者は竜神祟りを受けて、末代まで苦しまなければならなくなるである。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月19日(旧09月19日) 口述場所 筆録者谷口正治 校正日 校正場所 初版発行日1921(大正10)年12月30日 愛善世界社版90頁 八幡書店版第1輯 78頁 修補版 校定版90頁 普及版48頁 初版 ページ備考
OBC rm0117
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本文  神界場面が、たちまち一変したと思へば、自分は又もと大橋袂に立つてゐた。どこからともなくにはかに大祓詞声が聞えてくる。不思議なことだと思ひながら、二三丁辿つて行くと、五十恰好爺さんと四十かつかう婦とが背中合せに引着いて、どうしても離れられないでもがいてゐる。男は声をかぎりに天地金御名を唱へてゐるが、婦は一生懸命に合掌して稲荷を拝んでゐる。男合掌してゐる天には、鼻高い天狗が雲中に現はれて爺をさし招いてゐる。婦をがむ方をみれば、狐狸が一生懸命山中より手招きしてゐる。男が行かうとすると、婦背中にぴつたりと自分背中が吸ひついて、行くことができない。婦もまた行かうとして身悶えすれども、例背中が密着して進むことができない。一方へ二歩行つては後戻り、他方へ二歩行つては、又あともどりといふ調子で、たがひに信仰を異にして迷つてゐる。自分はそこへ行つて、「惟神霊幸倍坐世」と神様にお願ひして、祝詞を奏上した。そとき私は、自分ながらも実に涼しい清らかな声が出たやうな気がした。
 たちまち密着してゐた両人身体は分離することを得た。彼らは大いに自分を徳として感謝辞を述べ、どこまでも自分に従つて、
『神界御用を勤めさしていただきます』
と約束した。やがて男方は肉体をもつて、一度地高天原に上つて神業に参加しやうとした。しかし彼は元来が強欲な性情である上、憑依せる天狗霊が退散せぬため、つひには盤古大神眷族となり、地高天原占領を企て、ために、霊は神譴を蒙りて地獄に堕ち、肉体は二年後に滅びてしまつた。さうしてそ婦は、今なほ肉体を保つて遠く神に従ふてゐる。
 こ瞬間、自分光景は忽ち一転した。不思議にも自分はある小さな十字街頭に立つてゐた。そこへ前に見た八頭八尾憑いた男が俥を曳いてやつて来て、
『高天原にお伴させていただきますから、どうかこ俥にお召し下さい』
といふ。しかし「自分は神界修業身なれば、俥になど乗るわけにはゆかぬ」と強て断つた上、徒歩でテクテク西へ西へと歩んで行つた。非常に嶮峻な山坂を三つ四つ越えると、やがてまた広い清い河ほとりに到着した。河には澄きつた清澄な水が流れてをり、川縁には老松が翠々と並んでゐる実に景勝地であつた。自分はこここそ神界である、こんな処に長らくゐたいもだといふ気がした。また一人とぼとぼと進んで行けば、とある小さい町に出た。左方を眺むれば小さな丘があり、山は紫にして河は帯やうに流れ、蓮華台上と形容してよからうか、高天原中心と称してよからうか、自分はしばしそ風光に見惚れて、そこを立去るに躊躇した。
 山を降つて少しく北に進んで行くと、小さな家が見つかつた。自分は電気に吸着けらるるごとく、忽ちそ門口に着いてゐた。そこには不思議にも、か幽庁にゐられた大王が、若い若い婦姿と化して自分を出迎へ、やがて小さい居間へ案内された。自分はこ大王と再会を喜んで、いろいろ珍らしい話しを聞いてゐると、にはかに虎が唸るやうな、また狼が呻くやうな声が聞えてきた。よく耳を澄まして聞けば、天津祝詞や大祓祝詞声であつた。それら声とともに四辺は次第に暗黒度を増しきたり、密雲濛々と鎖して、日光もやがては全く見えなくなり、暴風にはかに吹き起つて、家も倒れよ、地上すべて物は吹き散れよとばかり凄じき光景となつた。そ濛々たる黒雲中より「足」といふ古い顔鬼が現はれてきた。それには「黒」といふ古狐がついてゐて、下界を睥睨してゐる。そ時にはかに河水鳴りとどろき河中より大いなる竜体が現はれ、またどこからともなく、何とも形容しがたい悪魔があらはれてきた。大王居間も附近も、こ時すつかり暗黒となつて、咫尺すら弁じがたき暗となり、か優しい大王姿もまた暗中に没してしまつた。ただ目に見ゆるは、烈風中に消えなむとして瞬いてゐる一つかすかな燈光ばかりである。自分は今こそ神を祈るべき時であると不図心付き、「天照大御神」と「産土神」をひたすらに念じ、悠々として祝詞をすずやかな声で奏上した。一天にはかに晴れわたり、一点雲翳すらなきにいたる。
 祝詞はすべて神明心を和げ、天地人調和をきたす結構な神言である。しかしそ言霊が円満清朗にして始めて一切汚濁と邪悪を払拭することができるである。悪魔口より唱へらるる時はかへつて世中はますます混乱悪化するもである。蓋し悪魔使用する言霊は世界を清める力なく、欲心、嫉妬、憎悪、羨望、憤怒など悪念によつて濁つてゐる結果、天地神明御心を損ふにいたるからである。それ故、日本は言霊幸はふ国といへども、身も魂も本当に清浄となつた人が、そ言霊を使つて始めて、世なかを清めることができ得るである。これに反して身魂汚れた人が言霊を使へば、そ言霊には一切邪悪分子を含んでゐるから、世中はかへつて暗黒になるもである。
 さて自分は八衢に帰つてみると、前刻鬼、狐および大きな竜悪霊は、自分を跡から追つてきた。「足」鬼は、今度は多く眷族を引連れ来たり、自分を八方より襲撃し、お口中より噴霧やうに幾十万本とも数へられぬほど針を噴きかけた。しかし自分身体は神明加護を受けてゐた。あたかも鉄板やうに針を弾ね返して少し痛痒をも感じない。そ有難さに感謝ため祝詞を奏げた。そ声に、すべて悪魔は煙ごとく消滅して見えなくなつた。
 ここで一寸附言しておく。「足」鬼といふは烏帽子直垂を着用して、あたかも神に仕へるやうな服装をしてゐた。しかし本来非常に猛悪な顔貌なだが、一見立派な容子に身をやつしてゐる。また河より昇れる竜は、たちまち美人に化けてしまつた。こ竜女は、竜宮界大使命を受けてゐるもであつて、大神御経綸世界改造運動に参加すべき身魂であつたが、美しい肉体女に変じて「足」鬼と肉体上関係を結び神界使命を台なしにしてしまつた。竜女に変化つたそ肉体は、現在生き残つて河をへだてて神に仕へてゐる。彼女が竜女であるといふ証拠には、そ太腿に竜鱗が三枚もできてゐる。神界摂理は三界に一貫し、必ずそ報いが出てくるもであるから、神界大使命を帯びたる竜女を犯すことは、神界としても現界としても、末代神譴めを受けねばならぬ。「足」鬼はそ神罰により、そ肉体一子は聾となり、一女は顔一面に菊石を生じ、醜い竜葡匐するやうな痕跡をとどめてゐた。さて一女まづ死し、ついでそ一子も滅んだ。かれは罪ために国常立尊に谷底に蹴落され胸骨を痛めた結果、霊肉ともに滅んでしまつた。かくて「足」肉体もついに大神懲戒を蒙り、日に日に痩衰へ家計困難に陥り、肺結核を病んで悶死してしまつた。
 以上一男一女は「足」前妻子女であるが、竜女と「足」鬼と間にも、一男が生れた。「足」鬼は二人子女を失つたで、彼は自分後継者として、そ子を立てやうとする。竜女方でも、自分肉体後継者としやうとして焦つてゐる。一方竜女には厳格な父母があつた。彼らもそ子を自分相続者としやうとして離さぬ。「足」方は無理にこれを引とらうとして、一人肉体を、二つに引きち切つて殺してしまつた。霊界でかうして引裂かれて死んだ子供は現界では、父につけば母にすまぬ、母につけば父にすまぬと、煩悶結果、肺結核を病んで死んだである。かうして「足」方は霊肉ともに一族断絶したが、竜女は今も後継者なしに寡婦孤独な生活を送つてゐる。
 本来竜女なるもは、海に極寒極熱一千年を苦行し、山中にまた一千年、河にまた一千年を修業して、はじめて人間界に生れ出づるもである。そ竜体より人間に転生した最初一生涯は、尼になるか、神に仕へるか、いづれにしても男女交りを絶ち、聖浄な生活を送らねばならないである。もしこ禁断を犯せば、三千年苦行も水沫となつて再び竜体に堕落する。従つて竜女といふもは男子と交りを喜ばず、かつ美人であり、眼鋭く、身体どこかに鱗数片痕跡を止めてゐるもも偶にはある。かかる竜女に対して種々人間界情実、義理、人情等によつて、強て竜女を犯し、また犯さしめるならば、それら人は竜神より恨をうけ、そ復讐に会はずにはゐられない。通例竜女を犯す場合は、そ夫婦縁は決して安全に永続するもではなく、夫は大抵は夭死し、女は幾度縁をかゆるとも、同じやうな悲劇を繰返し、犯したもは子孫末代まで、竜神祟りを受けて苦しまねばならぬ。
(大正一〇・一〇・一九 旧九・一九 谷口正治録)
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