大八洲彦命は少数の神軍とともに、広大な原野を東に進軍していた。すると、常世彦が魔軍を指揮して四方から火を放った。
進退きわまった大八洲彦命は真澄の珠を空中に投げた。珠は爆裂して数十万の星となった。星は地上に落下すると数十万の神軍となった。神軍の発射する言霊によって火炎は消滅し、後には魔軍の死骸が累々と横たわっていた。
大八洲彦命は、胸長彦の残党が立て籠もる天保山を討とうとしていた。しかし真澄の珠から現れた神軍は、残らず天に帰ってしまった。
大八洲彦命は多いに落胆したが、そこに二柱の女神が命の前に降り、加勢を頼むような心持では、到底このたびの神業はならない、これは天の大神の試練である、と神示を下した。
大八洲彦命は援軍が来ないことを観念したが、天教山に八島別が球援軍を組織していることを知らなかった。一方胸長彦は天保山が攻撃されることを恐れ、大八洲彦命に偽って一度帰順して、天教山の八島別軍を殲滅しようと計画を立てた。そして、天教山に敵軍が現れたと大八洲彦命を欺こうとした。
大八洲彦命は胸長彦一派の偽りの帰順を受け入れ、両軍あわせて天教山に攻め込んだ。しかし、先鋒の胸長彦軍は八島別軍によって殲滅されてしまった。
この様子を見た大八洲彦命は、天教山に帰順の神書を送った。この神書を見て、八島別は大八洲彦命の消息を知り、自分は命の救援軍を組織してきたのだ、と命に伝えた。
大八洲彦命は真相を知って喜び、天に向かって神言を奏上した。こうして、敵軍を殲滅した天津神の神算鬼謀は実に感嘆の次第である。