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文献名1霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
文献名2第4篇 竜宮占領戦よみ(新仮名遣い)りゅうぐうせんりょうせん
文献名3第29章 天津神の神算鬼謀〔29〕よみ(新仮名遣い)あまつかみのしんさんきぼう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
大八洲彦命は少数の神軍とともに、広大な原野を東に進軍していた。すると、常世彦が魔軍を指揮して四方から火を放った。

進退きわまった大八洲彦命は真澄の珠を空中に投げた。珠は爆裂して数十万の星となった。星は地上に落下すると数十万の神軍となった。神軍の発射する言霊によって火炎は消滅し、後には魔軍の死骸が累々と横たわっていた。

大八洲彦命は、胸長彦の残党が立て籠もる天保山を討とうとしていた。しかし真澄の珠から現れた神軍は、残らず天に帰ってしまった。

大八洲彦命は多いに落胆したが、そこに二柱の女神が命の前に降り、加勢を頼むような心持では、到底このたびの神業はならない、これは天の大神の試練である、と神示を下した。

大八洲彦命は援軍が来ないことを観念したが、天教山に八島別が球援軍を組織していることを知らなかった。一方胸長彦は天保山が攻撃されることを恐れ、大八洲彦命に偽って一度帰順して、天教山の八島別軍を殲滅しようと計画を立てた。そして、天教山に敵軍が現れたと大八洲彦命を欺こうとした。

大八洲彦命は胸長彦一派の偽りの帰順を受け入れ、両軍あわせて天教山に攻め込んだ。しかし、先鋒の胸長彦軍は八島別軍によって殲滅されてしまった。

この様子を見た大八洲彦命は、天教山に帰順の神書を送った。この神書を見て、八島別は大八洲彦命の消息を知り、自分は命の救援軍を組織してきたのだ、と命に伝えた。

大八洲彦命は真相を知って喜び、天に向かって神言を奏上した。こうして、敵軍を殲滅した天津神の神算鬼謀は実に感嘆の次第である。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月22日(旧09月22日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1921(大正10)年12月30日 愛善世界社版166頁 八幡書店版第1輯 106頁 修補版 校定版167頁 普及版87頁 初版 ページ備考
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本文  神界の場面は、ガラリ一転した。大八洲彦命は少数の神軍とともに、広大無辺な原野に現はれた。そして一隊を引率れ、東へ東へと進軍された。その果しもない原野には身を没するばかりの種々の草が茫々と繁つてゐる。その刹那、諸方より火の手があがつた。しかも風は非常に強烈な旋風である。天の一方を望めば、常世彦が現はれ軍扇をもつて数多の魔軍を指揮してゐる。
 火は諸方より燃え迫り、煙とともに大八洲彦命の一隊を包んでしまつた。ここに大八洲彦命は進退これ谷まり、自分の珍蔵してゐる真澄の珠を、中空にむかつて投げつけられた。その珠は中空に爆裂して数十万の星となつた。この星は残らず地上に落下して威儀儼然たる数十万の神軍と化した。さうしてその神軍は、一斉に百雷の一度にとどろくごとき巨大なる言霊を発射した。それと同時に、さしも猛烈なる曠野の火焔はぱつたり消滅し、丈高き草はことごとく焼き払はれた。魔軍の死骸は四方八方に黒焦となつて累々と横たはつてゐた。
 それから大八洲彦命の一隊はだんだん東へ向つて進んでいつた。そこに又もや一つの大きな山が出現してゐる。この山には彼の胸長彦の残党が立て籠もり、再挙を計つてゐた。
 この山を天保山といふ。胸長彦はこんどは安熊、高杉別、桃作、虎若、黒姫を部将として、大八洲彦命の一隊を待ち討たむとしてゐた。このとき真澄の珠より現はれたる数十万の軍勢は残らず天へ帰つてしまつた。せつかく勢力を得て、勇気百倍せる大八洲彦命は非常に失望落胆して、天にむかひ再び神軍の降下せむことを哀願された。折しも天よりは紫雲に打ち乗つて容姿端麗な白髪の神使が、二柱の実に美はしい女神をしたがへ大八洲彦命の前にお降りになり、厳かに天津神の命を伝へられた。その命令の意味は、
『大八洲彦命が今度世界の修理固成をなして、国常立大神の神業を奉仕したまふ上において、加勢の力を頼むやうなことであつては、この神業は到底完全に成功せぬ。それゆゑ大八洲彦命の胆力修錬のため、わざとに神軍を引き上げさせ、孤立無援の地位に立たしめたのは神の深き御仁慈である』
と云ひをはり、天の使は掻き消すごとく姿をかくしたまうた。
 天保山のはるか東北にあたつて天教山といふのがある。そこには八島別が、天神の命により、大八洲彦命を救援すべく計画されて、あまたの神軍を引率してをられた。
 大八洲彦命は今の神使の教示を聞き、もはや天よりの救援隊は、一神も来らぬものと断念されてゐた。そのために天教山の八島別の軍勢を、わが援軍なりとは少しも気づかず、かへつて天保山の別働隊のやうに思はれたのである。
 一方胸長彦は、天保山の陣営が強圧さるることを恐れて、いろいろと謀議を凝らした結果、まづ第一に大八洲彦命を偽つて帰順し、命とともに八島別の陣営なる天教山を殲滅せむことを企てたのである。そこで胸長彦は安熊、桃作、虎若の三部将を軍使として大八洲彦命の陣営に遣はして、帰順の意を表し、かつ天教山には大八洲彦命にとつて、強敵の現はれたことを注進した。
 大八洲彦命の陣営は、原野の中心にあつて非常に不利な位置であつた。もし天教山の上より一斉射撃を受けたならば、大八洲彦命の一隊は、全滅さるる恐れがあつたのである。さういふ立場に立ちいたれる大八洲彦命は、渡りに船と快諾されてここに和睦をなし、胸長彦とともに天教山を攻撃することとなつた。
 天教山の方においては、胸長彦の先頭に立ちて攻め来るのを見て、てつきり敵軍に相違なしと思ひ、山上より大風を起し、岩石を飛ばし、攻めくる敵軍を散々に悩ました。しかも先頭に立つた胸長彦の軍隊は、第一戦において殆ど滅亡されてしまつた。
 その次に第二軍として現はれたるは、大八洲彦命の軍勢であつた。命は数十羽の烏を使つて、天教山なる八島別にたいし、帰順すべく神書を認め、足に括りつけて放たれた。烏は空中高く舞ひあがるとともに天教山へ昇り、八島別に伝達した。八島別命はその伝達を読んで、はじめて大八洲彦命の消息を知り、かつ、
『自分は天の命により、大八洲彦命を救援に来たものである』
との信書を書いて、同じく烏の足へ括りつけて放した。烏はにはかに金色の鵄と化り、四方を照しつつ大八洲彦命の前に下つてきた。
 ここにおいて始めて相互の真相がわかり、大八洲彦命の軍は歓喜のあまり天にむかつて神言を奏上した。
 その声は天教山の八島別の陣営に澄みきるごとくに響きわたつたので、八島別は山を下らず、そのまま諸軍勢を引き率れ天の一方に姿をかくしてしまつた。かくのごとくして敵軍を殲滅せしめたまひし天津神の神算鬼謀は、実に感歎の次第である。
(大正一〇・一〇・二二 旧九・二二 桜井重雄録)
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