国常立尊は邪神から守るために、冠島・沓島に三個の神宝を隠したのだが、実は島には珠の体のみを納めておき、珠の精霊はシナイ山の山頂へ、誰にも知らせずに隠しておいたのである。これが一厘の仕組といわれる神示である。
武熊別は、三個の珠が冠島・沓島に隠されたことを知ってからよからぬ心を起こし、竹熊とはかって、両島を襲撃して神宝を奪おうとした。
攻め寄せる竹熊・武熊別の大軍に、両島の国魂神は迎撃するが旗色悪く、神宝の神力を使って敵を滅ぼそうとしたが、珠には何の力もなく、効果を発揮しなかった。これは、珠の霊を国祖がシナイ山に隠しておかれたからである。
国魂神は急を知らせる信書を、信天翁(あほうどり)の足にくくりつけて、竜宮島に送った。信書を受け取った金勝要神は、金幣で邪気を祓い、信天翁の背に金幣の一片を括り付けて送り返した。
すると信天翁は金の鳶と化して、空から魔軍に火弾の雨を降らし、敵を悩ませた。また天の雲間から高津神が現れて旋風を巻き起こし、魔軍の艦隊を沈没させた。
国常立尊はこの戦闘の様を見て、魔軍を憐れに思い、神言を奏上した。すると天は晴れ渡り、沈没した魔軍は浮かび上がって救われた。
敵味方を問わず、国常立尊の大慈大悲の御心に感謝の念を抱かない神人はなかった。