竹熊は次に、玉彦の持つ黒玉を狙った。玉彦は地位が低かったが名誉欲が強く、黒玉を得てから慢心を起こしていた。
竹熊は大八洲彦命の部下であった長彦をたぶらかし、黒玉を得ようとした。長彦は、玉彦が黒玉を得てから自分の命令に反抗するようになったことを、面白くなく思っていた。
竹熊の間者は、大八洲彦命の命令と偽って、「近頃慢心する玉彦から黒玉を奪い、汝が保有するように」と長彦を焚きつけた。
長彦は、玉彦が妻の坂姫の言うことなら何でも聞くことを知った。また、坂姫が舞曲が好きであることを知ると、竹熊の間者・鳥熊と計って自ら舞曲を会得し、舞曲を通じて坂姫と親友になってしまった。
あるとき坂姫は長彦・鳥熊と舞曲に興じているときに、舞曲の小道具として、黒色の玉を使わせてもらうよう、玉彦に懇願した。玉彦はやむなく黒色の玉を持ち出して舞曲に供した。
鳥熊は舞曲を演じる振りをして黒色の玉を奪って樹上に上ると、追ってきた長彦を蹴落として打ち殺した。長彦の死に玉彦・坂姫が驚き狼狽している間に、鳥熊は大虎彦の鳥船に乗って、その場を逃れてしまった。
そして大虎彦は鳥船から鳥熊を投げ殺すと、黒色の玉を奪って竹熊に献上した。