常世の国に、武豊彦、鬼雲彦の二神があった。両神はそれぞれ、あまたの神々を率いて地の高天原の神政に参加すべく、はせ参じた。
武豊彦は真摯に神政に使えたが、鬼雲彦は、神国別命の声望をねたみ、何とかして陥れようとするようになった。
しかし、鬼雲彦のよからぬ心と、神国別命の徳の違いを目の当たりにした部下の神々は、次々に鬼雲彦を去って、神国別命の下へとついてしまった。嫉妬の念に燃える鬼雲彦を武豊彦は諭すが、逆に恨みをかってしまう有様であった。
鬼雲彦はついに、言霊別命に、神国別命を讒言するまでになった。言霊別命は、鬼雲彦にしかるべき地位を与えてなだめようと苦心したが、ついに果たせず、鬼雲彦は勢力争いを起こして敗れ、邪神となって地の高天原を追われてしまった。
鬼雲彦は鬼城山に逃れて国照姫の傘下に入った。また、清熊という利欲に深い神も、神国別命の清廉潔白さと合わず、その心魂を言霊別命に見透かされ、竜宮上を脱して鬼城山に合流してしまった。