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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑
文献名2第3篇 神戦経過よみ(新仮名遣い)しんせんけいか
文献名3第15章 山幸〔65〕よみ(新仮名遣い)やまさち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ言霊別命弟に、元照彦という神があった。元照彦は、兄が神業にかまけて親兄弟をないがしろにしていると、日ごろから憤慨していた。元照彦は狩猟が上手で、相棒伊吹彦とともに山獣を獲ることを楽しみとしていた。あるとき、元照彦は大台ケ原山で狩猟をしていた。そこへ、伊吹山に立て籠もる邪神・八十熊たちも、狩猟にやってきた。しかし、元照彦狩猟があまりに上手いで、邪神たちは一匹鳥獣も得ることができなかった。そこで邪神たちは元照彦相棒・伊吹彦を見方に引き入れ、元照彦を殺そうとした。伊吹彦は元照彦を裏切り、元照彦は邪神に囲まれて矢を射掛けられ、そ場に倒れてしまった。弟危急を知った言霊別命はただちに天鳥船で大台ケ原山に駆けつけ、さまざまな霊威ある領巾を邪神軍に向かって打ち振ると、邪神たちは逃げていった。元照彦は重傷を負い、危篤に陥った。母神は元照彦に、「放縦な心を立て替えて、兄とともに神業に参加するように」と諭した。元照彦は敬神念を起こし、数ケ月間苦痛に耐えながら天地大神を祈った結果、傷は癒えた。そして神業に参加し、言霊別命に従って神教を宣伝して偉功を表わすことになった。元照彦を裏切った伊吹彦は、八十熊らとともに伊吹山に逃げた後、どこからともなく飛んできた矢に当たって山上から転落し、息絶えた。そして伊吹山邪鬼となった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月30日(旧09月30日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版75頁 八幡書店版第1輯 184頁 修補版 校定版77頁 普及版36頁 初版 ページ備考
OBC rm0215
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本文  言霊別命弟に元照彦という放縦な神司があつた。こ神司は、言霊別命が神業に従事して神界を思ふあまり、親兄弟を顧みざるを憤慨してゐた。

  ふるさと空打ちながめ思ふかな国にこせし母はいかにと

 元照彦は山幸を好み、天香具山鉄をもつて諸々武器を作り、あまた征矢を製して大台ケ原に立てこもり、大峡小峡にすむ熊、鹿、猪、兎などを打ちとり無上快楽としてゐた。さうして伊吹彦といふ供神は常に元照彦に陪従し、山幸を助けてゐた。
 ここに伊吹山に立てこもり時節を窺ひゐたる武熊別部下、八十熊、足熊、熊江姫、そ他多く魔神も大台ケ原山にわけ入り、花々しく山幸を試むれども、終日奔走してただ一頭獲物もなかつた。そわけは元照彦が熟練せる経験により大小鳥獣を一も残らず狩とつた後ばかりを進んだからである。八十熊以下は方向を転じて山を越え、再び山幸を試みた。そこには伊吹彦がゐて征矢をもつて盛んに山幸をしてゐた。八十熊以下者は伊吹彦に種々宝を与へて、しきりにそ歓心を買ひ、つひに伊吹彦をして元照彦に背き、かつ征矢をもつて元照彦を殺さしめむと計つた。伊吹彦は八十熊ら欲に誘はれ、つひに八十熊味方となつてしまつた。
 元照彦は伊吹彦変心せしことを知らず、常ごとく相伴なつて日出ケ山に登り、群がる猪にむかつて征矢を射らしめた。伊吹彦はそ猪にむかつて矢を射るがごとく装ひ、たちまち体を翻して元照彦目がけてしきりに射かけた。元照彦は驚いて八尋まはり大杉蔭にかくれ、征矢を防がむとした。こ時、八十熊ら魔軍八方より現はれ来りて、さかんに征矢を射かけた。元照彦は進退これ谷まり、身に十数創を負ひそ場に仆れた。
 言霊別命は竜宮城にあり、弟危難を知りて直ちに天鳥船に乗り、大台ケ原に駆り進んだ。ただちに伊吹彦、八十熊以下魔軍にむかひ種々領巾を打ち振れば、魔軍は黒雲をおこし、武熊別隠れたる伊吹山さして雲を霞と逃げ去つた。
 元照彦は重傷を負ひ、つひに病床に臥し、生命危篤状態におちいつた。ことき母神国世姫は、
『汝平素放縦なる心を立替へ、深く神を信じ、兄弟と共に神業に参加せば、大神恵によりて汝が病はたちどころに癒えむ』
と懇に涙とともに諭された。
 ここにはじめて元照彦は敬神至誠をおこし、数月間、苦痛を忍びつつ天地大神を祈り、つひに病床を離れ全く悔改めて、山幸快楽を捨てて苦しき神業に参加し、言霊別命蔭身に添ひて、神教を天下四方国々に宣伝し偉功をあらはした。
 邪神伊吹彦は八十熊と共に一時は伊吹山に逃れ去り、やつと息継ぐ暇もなく、どこともなく飛びくる白羽征矢に当り、山上より転落して終焉を告げ、伊吹山邪鬼となつた。
(大正一〇・一〇・三〇 旧九・三〇 桜井重雄録)
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