稚桜姫命はやはり、親子の情に流されて、常世姫の言うことを信じる気があった。また、安川彦の陰謀は破れたとは言え、常世姫が背後で操っていたことは明らかにはならなかった。
あるとき常世姫は、言霊別命を常世の国に遣わして、悪心を改めさせてはどうか、と稚桜姫命に提案した。稚桜姫命は喜んで承諾したが、常世姫は言霊別命を害しようと企んでいたのであった。
言霊別命は元照彦の調査によって、常世姫の計画を察知していたが、稚桜姫命の命によってやむを得ず、常世の国に遣わされることになった。そこで、言霊姫、元照彦とはかって危難を避けるべく、種々の秘策を立てた。
出発にのぞんで言霊別命の母神は、さまざまな領巾を授けてくれた。
常世の国の使節には、言霊別命の他に、小島別や竜世姫が加わっていた。竜世姫は稚桜姫命の娘神である。
ロッキー山脈のふもとの常世の都に至る分かれ道で、突然竜世姫は急病を発して苦しみ始めたが、これは竜世姫の策で、偽病であった。他の神々が竜世姫の看病に気を取られるすきに、言霊別命は左の分かれ道に進んで行った。