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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第7篇 天地の大道よみ(新仮名遣い)てんちのだいどう
文献名3第50章 鋼鉄の鉾〔100〕よみ(新仮名遣い)まがねのほこ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ神国別命らは、八王大神が変心したことは夢にも知らず、常世城の神々に、国治立命の教えを説いていた。すると城内騒々しく足音が近づき、八王大神が以前にも増して暴悪な顔で現れ、大刀の柄に手をかけて、盤古大神に帰順するよう、神国別命らを脅迫した。神国別命は神理を説き諭したが、聞き入れられなかった。八王大神は神国別命に斬ってかかった。一切武器を持っていなかった神国別命らは、天に向かって合掌し、神言を奏上しようとすると、八王大神はどっと仰向けに倒れた。この光景を目にした常世城の神々は、あわてて常世姫に報告した。常世姫はただちに焼けた鉄棒を手に引っさげてその場に来ると、神国別命に打ってかかった。すると東北の空から暴風が吹き、常世姫はあおられてどっと地上に転落した。神国別命らはかろうじてその場を逃れ、竜宮城に帰還すると、八王大神の心変わりを国直姫命に報告した。国直姫命は、いかなる暴悪無道の敵が竜宮城に押し寄せても、律法に従って対処するように、と厳命した。やがて八王大神率いる常世軍が竜宮城に押し寄せ、ヨルダン河を押し渡って城内に入ると、国治立命と面会させよ、と大音声に呼ばわった。大八洲彦命は自ら八王大神を迎え、来意を尋問した。八王大神は国治立命に面会させろ、と仁王立ちで怒号した。するとそこへ国治立命は悠然と姿を現した。八王大神は、汝は偽者の国治立命であろう、本物は大自在天の神策によって顕現するはずである、と詰め寄った。八王大神の従者・鬼雲彦も尻馬に乗って暴言を吐いた。国治立命以下の諸神は、律法に従ってあくまで柔和の態度でこれを迎えていたが、ついに八王大神が刀を抜いて斬りかかろうとしたとき、花森彦は「われはただ今戒律を破らむ」と言うやいなや、鬼雲彦に斬りつけ、さらに八王大神にも斬ってかかろうとした。大足彦は花森彦を制止したが、八王大神以下は花森彦の勢いにのまれて、やや躊躇の色が見えた。大足彦は国の真澄の鏡を取り出すと、魔軍を照らし出した。八王大神以下は魔神の正体を表し、身動きができなくなってしまった。国治立命は再び現れて、八王大神以下に天地の律法を説き諭し、万一聞き入れられないのであれば、常世城を明け渡して根底の国へ隠退するか、さもなければ竜宮城軍が常世城を滅ぼすであろう、と厳格に神示を言い渡した。八王大神はその意を了解し、神国別命に送られて、部下たちとともに常世城に引き揚げた。しかし常世姫は国治立命にあくまで反抗の意を表し、八王大神のふがいなさを嘆いた。八王大神はまたもや常世姫の魔言に動かされ、竜宮城占領の決議をこらし始めた。そのとき、天上から鋼鉄の鉾が棟を破って落ち降り、鬼雲彦の頭上に落ちて即死してしまった。これは、大自在天が神国別命を狙ったものが、はずれて鬼雲彦に当たったのである。八王大神は驚いて奥殿に逃げ、息をこらして震えていた。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月09日(旧10月10日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版253頁 八幡書店版第1輯 249頁 修補版 校定版257頁 普及版120頁 初版 ページ備考
OBC rm0250
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本文  神国別命、神国彦以下の神司は、八王大神の変心せしことは夢にも知らず、数多の神司に囲繞されながら、諄々として国治立命の教示を説き示しつつあつた。
 折しもにはかに城内は騒々しく数多の足音は近く迫つてきた。室内の戸を開くやいなや、八王大神は以前にかはる暴悪なる顔色をなし、大刀の柄に手をかけ、神国別命の前に詰めより、
『汝はすみやかに盤古大神に帰順せよ。混乱紛糾をきはめたる現下の世界の情勢は、汝らの主神国治立命の唱ふるごとき、迂遠きはまる教をもつて、いかでか天下を至治太平ならしむることを得む。汝らの唱ふる経綸策は、天下泰平に治まれる世にたいしての遊戯的神策にして、言ふべくして行ふべからざる迂愚の策なり。汝すみやかにその非を悟り常世城の従臣となるか、ただしは兜をぬいで降伏するか、二つとも否認するにおいては、気の毒ながら汝らを門出の血祭り、一刀両断の処置を執らむ』
と打つて変つた狂態を演ずるのである。
 神国別命は、じゆんじゆんとしてその非を説き、天下は圧力武力をもつて到底治むべからざるの神理を、言葉をつくして弁明した。されど貪、瞋、痴の三毒をふくめる悪神の主将八王大神には、あたかも馬耳東風のごとく、もはや毫末の効果もなかつた。
 八王大神は立ちあがり、
『いらざる繰言耳を汚すも面倒なり』
と真向上段に斬つてかかつた。神国別命以下は身に寸鉄を帯びず、ただ一心に神明を祈るよりほかに道はなかつた。神国別命は天に向つて合掌し、神言を奏上せむとするや、八王大神は一刀を頭上高く振りかざしたるままどつと仰向に倒れた。この光景を目撃したる常世城の神司は、右往左往に周章ふためき、急ぎ常世姫にこの実状を報告した。常世姫は直ちに鉄棒の火に焼けて白熱化したるを提げ来り、あはや神国別命は、焼鉄に打たれてすでに焼き滅ぼされむとするをりしも、東北の空より俄然暴風吹ききたり、常世姫は暴風にあふられて、たちまち地上に転倒した。城内の神司もまた一度にどつと吹き倒された。神国別命は神国彦以下の神司とともに、からうじてその場を逃れ、やうやくにして竜宮城に帰還し、高尾別の変心し、かつ何時魔軍を引率してここに攻め来るやもはかられざることを、国直姫命に奏上した。
 ここに地の高天原においては、国直姫命、大八洲彦命、言霊別命以下の神将竜宮城に会し、八王大神の反逆にたいし防戦の議をこらした。このとき国直姫命は、
『いかなる暴悪無道の強敵たりとも、神明の力を信じ、天地の律法を遵守し、悪にたいするに至善をもつてせよ』
との命令を発せられた。神司は神国別命の詳細なる報告に接し、切歯扼腕悲憤の涙を、顋辺にただよはしながら、天地の律法に違反すべからず、あくまで柔和と懇切と信義をもつてこれに対抗せむと、協議一決した。
 時しも百雷の一時に轟くごとき音響とともに黒雲に乗じ、西南の天をかすめて入来る数多の鳥船がある。彼らは黄金橋のかたはらに落下し、獅子奮迅の勢をもつてヨルダン河を押しわたり、竜宮城に押しよせ門扉を打破り、暴虎馮河の勢をもつて城内に侵入し、国治立命に面会せむと、大音声に呼ばはつた。
 鬼雲彦、清熊を先頭に八王大神その他の魔神が、雲霞のごとく押し寄せているため、城内はにはかに騒ぎたつた。大八洲彦命は周章ふためく神司を制しとどめ、みづから出でて八王大神に面会し、来意を厳かに訊問した。
 八王大神は傍若無神の態度にて、諸神将を眼下に睨めつけ、
『汝らのごときやくざ神にいふべき言葉なし。すみやかに国治立命に見参せむ』
と仁王立になつて怒号した。国治立命はこの声を聞くより、たちまち悠然としてその場に出現したまうた。八王大神は声をふるはしながら、
『われは盤古大神大自在天の大命を伝へむために出場せり。汝はみづから国治立命と称すれども、まつたくの偽神なり。国治立命とは国土を永遠に立て守るべき神明なり。かかる天下混乱の際、下らぬ迂遠なる教をもつて、難きを避け安きにつかむとするは心得がたし。汝が唱ふる天地の律法とはそもそも何ぞ。陳腐固陋の世迷言にして唾棄すべき教理なり。すみやかにこの律法を破壊し、汝はこれより根の国底の国に、一時も早く退却せよ。真の国治立命は、大自在天の権威ある神策によつて、初めて顕現せむ。返答いかに』
と詰めよつた。
 八王大神の従臣、鬼雲彦は尻馬に乗り、
『汝国治立命と称する偽神よ。八王大神の教示を遵奉せずして、万一違背に及ばば、われは竜宮城の諸竜神を寸断し、地の高天原の神司を、一柱も残らず、刀の錆となし、屍の山を築き、竜宮海を血の海と化せしめむ。返答いかに』
と詰めよつた。国治立命以下の諸神司は、天地の律法をみづから破るに忍びず、いかなる悪言暴語にも怒りをしづめ、博く万物を愛するの律法を遵守し、柔和の態度をもつてこれに向はせ給ふた。
 されど八王大神は何の容赦もなく、つひに一刀を抜きはなち、今や狼藉におよばむとするとき、衆神の中より突然現はれたる花森彦は、
『われはただ今戒律を破らむ』
と言ひもはてず、一刀を抜きはなち鬼雲彦の背部に斬りつけた。なほも進んで八王大神に斬つてかかるを、大足彦は、「しばらく待て」とこれを制止した。
 大足彦の一言に花森彦も刀ををさめ、元の座に復し、唇をふるはせ、心臓をはげしく鼓動させ、顔色蒼白となつてひかへてゐた。八王大神はこの勢にのまれて、やや躊躇の色が見えた。鬼雲彦は背部の負傷にその場に打倒れ、哀みを乞ふた。
 ここに大足彦は、国の真澄の鏡を取出し、八王大神以下の魔軍を射照した。たちまち正体をあらはし、悪竜、悪鬼、悪狐の姿と変じ、自在の通力をうしなひ、身動きも自由ならず一斉に救ひを乞ふた。
 この時ふたたび国治立命あらはれ給ひ、
『地の高天原は天地の律法を遵守する、正しき神の神集ひに集ふ聖地である。また広く万物を愛し、禽獣虫魚にいたるまで殺さざるをもつて主旨とす。ゆゑに今回にかぎり汝らの罪を赦し、生命を救ひ、常世城に帰城せしむべし。汝らは一時も早く帰城し、常世姫をはじめ他の神司にわが旨を伝へよ。暴に報いるに暴をもつてせば、何時の日か世界は治平ならむ。憎み憎まれ、恨み恨まれ、殺し殺され、誹り誹られ、世は永遠に暗黒の域を脱せざるべし。常世姫にして、わが教を拒まば是非なし。常世城をすみやかに明け渡し、根の国、底の国に、汝ら先づ退却せよ。しからざればやむを得ず、律法を破り、決死の神司をして、常世姫を屠らしめむ』
との厳格なる神示であつた。
 ここに八王大神は、その意を諒し、厚く感謝して部下一同とともに、神国彦に送られ常世城に立帰り、国治立命の神示を常世姫に伝へた。常世姫は聞くより打笑ひ、鼻先に扱ひつつあくまで国治立命に対抗し、大八洲彦命以下の神司を滅ぼし、ふたたび竜宮城を占領せむと力みかへり、かつ八王大神の不甲斐なきを慨歎した。
 八王大神は常世姫の大胆なる魔言に動かされ、ふたたび反抗の旗を挙げむとし、魔神を集めて決議をこらす折しも、天上より鋼鉄の鉾、棟をついて降り、八王大神の側に侍する鬼雲彦の頭上に落ち、即死をとげたのである。これは自在天より神国彦に向かつて投げたのが、あやまつて鬼雲彦に中つたのである。
 八王大神は驚いて奥殿に逃げ入り、息をこらして鼠のごとく、一隅に身慄ひしつつ蹲踞んでゐた。
 このとき、一天にはかに晴れ、天津日の光り輝き渡るよと見えしとたん、身は高熊山の巌窟に静坐してゐたのである。このとき巌上に坐せるわが足は、にはかに苦痛をうつたへ、寒気は身を切るばかりであつた。
(大正一〇・一一・九 旧一〇・一〇 外山豊二録)
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