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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第3篇 ロツキー山よみ(新仮名遣い)ろっきーざん
文献名3第7章 諷詩の徳〔107〕よみ(新仮名遣い)ふうしのとく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-28 15:13:28
あらすじ
天使長・大八洲彦命は、偽の国直姫命、国治立命によってロッキー山は占領され、貴治彦や靖国別夫婦が追放され、言霊別命が捕虜となったことを知った。神軍を派遣してロッキー山を奪回するのは難事ではないが、捕虜となった言霊別命の身の上が案じられた。

言霊別命の従者に、忠勇義烈の神・言代別という神人があった。言代別は、自らロッキー山に潜入して言霊別命を救出する計画を提案した。大八洲彦命はこれを許可した。

言代別は偽の如意宝珠を用意し、ロッキー山の国直姫命に献上した。そしてこの功績によって、ロッキー山の獄卒の職を得た。言代別は言霊別命のつながれている獄を見つけ出し、ある日酒宴が張られたのを幸い、言霊別命を手引きして、見事に脱出せしめることに成功した。

またその後も自らは敵中にとどまり、ロッキー山奪回のための活動を続けた。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月14日(旧10月15日) 口述場所 筆録者土井靖都 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版42頁 八幡書店版第1輯 274頁 修補版 校定版43頁 普及版18頁 初版 ページ備考
OBC rm0307
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本文  大八洲彦命は、ロツキー山は悪神のために根底より覆へされ、貴治彦、靖国別夫妻のいづこともなく逃亡し、かつ言霊別命は敵のために捕はれ、牢獄につながれ呻吟せることを知り、ここに諸神司を集めて、ロツキー山を回復し、言霊別命を救ひ出さむことを協議したまひぬ。諸神司は鳩首謀議の結果、神軍をおこしてロツキー山を一挙に奪還するは、さまで難事にあらざれども、言霊別命の身辺にかへつて危険の迫らむことを慮り、表面これを攻撃することを躊躇したまひぬ。
 ここに言霊別命の侍者に、忠勇義烈の誉高き言代別といふ者ありき。言代別は恐るおそる諸神将の前に出で、
『我つらつら考ふるに、ロツキー山の攻撃に先だち、言霊別命を救ひださざれば、命は人質同様なれば、魔軍は危急におちいりたる場合、命を殺害したてまつるは必定なり。我は「偽るなかれ」の厳しき律法を破りみづから犠牲となりて、我が主を救ひたてまつらむとす。幸にこの大任を我に許したまへ』
と誠心おもてに表はして嘆願したりければ、大八洲彦命は打ちうなづき、
『汝は主を救はむとして敵を偽らむとする行為は、元来忠良の真情よりいでたるものなれば決して罪とならざるべし。すみやかにロツキー山にいたりて言霊別命を救ひだせよ』
と命じたまひぬ。言代別はおほいに悦び天にも昇る心地して、ただちにロツキー山にむかひける。言代別は円き石に金鍍金をほどこし、如意宝珠の珠を偽造して懐中に深く秘蔵し、ロツキー山の南門に現はれ、
『国直姫命に奉るべき珍宝あり。拝謁を乞ひたし。願はくば貴下らの斡旋によりこの由を奏上されむことを』
と、言葉たくみに頼みこみけるを、番卒はいふ。
『果して貴下が如意宝珠の珠を所持さるるならば、我らに一目拝観せしめよ。珠の有無をたしかめざるにおいては、軽々しく奏上することを得ず』
とてやや難色ありければ言代別は、
『貴下の仰せ実に尤もなり』
とて懐をひらき、金色燦然たる珠の一部を現はし見せたるに、番卒はこれを上級の神司に伝へ、漸次国直姫命にこの次第を奏上したりける。国直姫命は、
『ロツキー山には未だ如意宝珠の珠なきを憾みとす。しかるに天運循環してここに珍宝の手に入るは、いよいよ願望成就の時期到来せしならむ。すみやかに言代別を我が前によびきたれ』
といそいそとして命令したり。かくて言代別はしばらくして城内の神司にみちびかれ、国直姫命の前に現はれ一礼の後、懐中より珠を取出し八足の机上にうやうやしく安置し、
『吾こそは高白山の麓に住む言代別といふ者なり。いまや当山に国治立大神現はれたまふと聞きて歓喜にたへず。吾は往古より家に伝はる如意宝珠の珠を持参し、これを大神に奉り、もつて神業に参加せむと欲し、遠き山河を越えてここに参のぼりたり』
と言葉をつくして奏上したるに、国直姫命はおほいに悦び、その珠を手にとり熟視して満面笑を含み、
『実に稀代の珍宝なり。汝はこの珠を奉りし功により、いかなる望みなりとも叶へつかはさむ』
と宣言せり。言代別は頓首再拝、喜色満面にあふれ、
『実に有難き大神の御仰せ、御恩は海山に代へがたし。願はくば卑しき吾をして牢獄の番卒たらしめたまへ、これに過ぎたるよろこびはなし』
と願ひけるに、国直姫命は少しく首をかたむけ、
『心得ぬ汝が望み、かかる麗しき世界の珍宝を奉りたる功労者でありながら、何を苦しみてかかる卑しき職を求むるや』
と反問するを、言代別はただちに言葉を反していふ。
『諺にも喬木よく風にあたり、出る杭は打たれ、高きに昇る者は、地に落つることありと聞きおよぶ。吾は役目の高下を望まず、ただ誠心誠意大神に仕へ、神業の一端に加へたまはばこれに過ぎたる幸なし。それとも吾が技倆を大神において認めたまはば、其のとき相当の地位を与へたまふべし。急に上職をたまはるより漸次に重く用ゐさせたまはば、吾が一身にとりてもつとも安全ならむ』
との言に、国直姫命は言代別の名利を求めず、寡欲恬淡なるに感激し、ただちにその乞ひを容れて牢獄の番卒仲間に加へけり。言代別は日夜番卒として忠実に奉務し、心ひそかに言霊別命の繋がれたる牢獄を探りゐたりける。言霊別命は頭髪長く背後に伸び、髯は胸先に垂れ、顔色憔悴して、ほとんど見擬ふばかりの姿と変じゐたまへば、言代別は命の御姿を認めること容易ならざりける。
 あるとき国治立命出現の祝ひとして、ロツキー山の城内に祝宴を張られ、また獄卒一般は獄前において祝意を表するため、酒宴を催しける。獄卒は珍しき酒肴に酔ひ、あるひは舞ひ、あるひはうたひ、踊りて立騒ぎけり。中に言代別は立ちて歌をうたひ、踊りはじめたり。その歌は、
 昔の昔のさる昔 猿が三疋飛ンできて
 鬼に遂はれて二疋は逃げた。 残りの一疋捕まへられて
 いまは鬼らの玩弄とせられ 暗い穴へとほりこまれ
 消息せうにも言伝しよにも いまは詮なしただ一言の
 言霊別の神代と 現はれいでし言代別の
 わけて苦しき暗の夜半 高天原より降りきて
 お猿の命を助けむと 思ふ手段は有明の
 十五の月のまンまるい 光をあてに飛ンで出よ。
 猿が餅搗きや、兎がまぜる。 まぜる兎が言代別よ。
 今年や豊年満作ぢや。 心持よき望月の
 光とともに飛ンで出よ。 光とともに飛ンで出よ。
 よいとさのよいとさ さつさとぬけ出て東へ走れ。
 東に羊が千疋をつて 猿をかかへて飛ンでゆく。
 よいとさのよいとさ。
と節面白くみづから謡ひみづから踊り狂ふにぞ、あまたの番卒は何の意味なるやを知らず、ただ面白き歌とのみ思ひて笑ふばかりなりける。言霊別命はこの歌を聞きて言代別の我を救ひ出さむために番卒となり、合図の歌をうたひしものと大いによろこび、十五夜の月を待ちゐたまひぬ。昼きたり夜去りて、つひには仲秋の月の夜となりぬ。国直姫命以下の曲人は、高台に昇り月見の宴を催しゐたれば、番卒もまた一所に集まりて月見の宴を開き、酒に酔ひくるひ面白き歌をうたひて余念なくたわむれゐたりけり。このとき言代別は、ふたたび以前の歌をうたひ牢獄を見廻りぬ。ある牢獄の中より小声にて、
『言代別』
と呼ぶ声あり。疑ひもなく聞きおぼえたる主の声なるに、言代別は大いによろこび、ただちに戸をひらき縛を解き、やつれたる言霊別命を背に負ひ、東門指して逃げ出したり。
 外には言霊別命の部下の神卒あまた現はれきたり、命を天磐船に乗せ、天空高くロツキー山を後に、地の高天原へ無事帰還したりける。言代別は何喰はぬ顔にて牢獄の戸を閉ぢ、もとのごとく酒宴の場に現はれ、あまたの番卒とともに酒に酔ひ踊り狂ひゐたり。後に残りし言代別は後日いかなる活動をなすか、趣味ある問題と云ふべし。
(大正一〇・一一・一四 旧一〇・一五 土井靖都録)
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