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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第4篇 鬼城山よみ(新仮名遣い)きじょうざん
文献名3第14章 霊系の抜擢〔114〕よみ(新仮名遣い)れいけいのばってき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
長白山では磐長彦が独身となってしまったため、後妻として忠実な侍女・玉姫を迎えようとしたが、有国彦は竜宮城の判断を仰いだため、天使会議が開かれた。

実情に沿って賛成する言霊別命と、律法の厳密な解釈に立って反対する大足彦が議論を戦わせた。実際の霊系にしたがった配慮をすべきである、という言霊別命の意見が多数に容れられ、玉姫は磐長彦の妻となり、長白山は無事泰平に治まった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月16日(旧10月17日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版85頁 八幡書店版第1輯 290頁 修補版 校定版87頁 普及版38頁 初版 ページ備考
OBC rm0314
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本文  磐長彦は独身となり、神務を管掌しゐたり。しかるに内助者たるべき妻に死別後は内政上すべての事につき不便を感じ、ここに忠実無比なる侍女玉姫を挙用して正妻となさむとし、諸神司をあつめてその意見を聴取したりしが、諸神司は磐長彦の孤独不遇の生活を見ておほいに同情の意を表し、玉姫を正妻となすべきことを満場一致をもつて賛成したりける。磐長彦は満足の体にてただちに八王神の御殿に参候し、玉姫を正妻とすべきことの許可を奏請したるに、有国彦は一身上の一大事なれば、自分単独にては決しかねしより、この旨を書面に認め使者を地の高天原につかはし、天使長大八洲彦命の裁決を請ひたまひけり。
 大八洲彦命はただちに言霊別命、神国別命、大足彦を大広前に集め、磐長彦の婚儀につきその可否を討議せむとし、ここに天使会議を開かれたりける。
 いよいよ天使会議は開かれぬ。大八洲彦命は立つて磐長姫の平素の行跡より変死の際にいたるまでの種々の経緯を詳細に説明し、かつ……侍女の玉姫を入れてその正妻となすべきことの可否を審議されたしと、長白山の八王神有国彦より奏請し来れり。願はくは諸天使の慎重なる審議を望む……と、宣言して座に着きたまひぬ。ここに言霊別命は、
『磐長彦の妻帯はやむを得ざる次第なれば、ただちに承認を与ふべきものと思意す。一時も早くこれを正妻となし、長白山の安全を計りたし』
と述べ立てたり。
 大足彦は座を立つて顔色を変へ、言霊別命の説を極力反駁していふ。
『天地の律法は一夫一婦の道をきびしく戒めあり。しかるに後妻を迎ふるは律法に違反するものにして、悪例を後日に遺すものなれば、断乎として許すべからず。体主霊従の行動は上に長たるものの最も慎むべきことならずや、上のなすところ下これに従ふ、上流濁れば必ず下流濁るは自然の道理なり』
と言葉はげしく反対の意を表示したりけるに、言霊別命はただちに起立し、
『実に心得ぬ貴下のお言葉かな。ただ今体主霊従の行為と言はれしが、吾は第二の正妻を迎ふるをもつて律法違反となし、または体主霊従の行為とみなすを得ず。如何となれば磐長姫は夫にたいし根本的にその霊系を異にしをれば、常に円満を欠き、風波の絶えざるは当然なり。この夫妻はもとより恰好の縁に非ずして、霊系を無視し体系を重ンじたるに起因するものなり。霊系の合致せざる者と者とを夫婦となし、外観の体裁に重きをおくは実に霊系を無視したるものなり。今やこの過ちを去り、霊系の等しき玉姫を入れて正妻たらしめむとするは、体を軽ンじ霊を重ンずる天地の法則に適ひ、霊主体従の本義に帰りたるものなり。ゆゑに我は断じて体主霊従の行為と断ずること能はず』
と述べたて席に着きたまへば、大足彦は再び立ちあがり、
『言霊別命の仰せは一理あるに似たれども、いま一応熟考を乞ひたし。いかに霊主体従をもつて天地の法則なりとはいへ、現在卑しき侍女を挙用して、一国を司る八頭神の正妻たらしめむとするは、神界の秩序を紊すものにして、あたかも提灯に釣鐘、均衡の取れざること最もはなはだし、かくのごとき不均衡の結婚を許すといへども、たちまち軽重の度を失し、早晩顛覆破鏡の悲を見るは必然なり、かかる一大事を軽々しく聴許せむとするは、あへて天地の律法を軽んじ神意を冒涜する無法の行為なり』
と極言したり。言霊別命は三度立つて口を開き、
『心得ぬ大足彦のお言葉かな。卑しき侍女をして八頭神の妻となすは不均衡なりとか、神界の秩序を紊すものなりとか、仰せられたれども、そのお言葉こそ体主霊従のはなはだしきものなり。いかに卑しき侍女なりとて、その霊性において美しく高貴ならば、たとへ形体の上において卑しき職にありとも、その精神にして立派ならば、霊主体従の本義よりみて之を否定すべきものに非ず。いたづらに門閥的旧思想を墨守し、いらざる体面論を主張さるるはかへつて神慮に背き、律法の精神をわきまへざる頑冥固陋の旧思想なり。かかる所論はほとんど歯牙にかくるに足らず』
と気色ばみて陳弁したり。
 ここに、大足彦は三度立つてこの説を駁し、たがひに熱火のごとく論難攻撃いつ果つべしとも見へざりしを、このとき神国別命は立つて、
『両神司の所説いづれを聞くも一理あり。しかるに霊主体従および体主霊従の本義については、われは言霊別命に賛成す。諸天使すみやかに玉姫を正妻に入るることの許可を与へられむ事を希望す』
と主張したまひける。
 ここに大八洲彦命は多数の意見を容れ、磐長彦の妻に玉姫を入れるることの決定を与へ、目出度く天使会議は終了を告げたり。元来玉姫は忠実なる女性にして磐長姫の寵児なりける。いよいよ玉姫は玉代姫と改名し、磐長彦の妻となり内助の功もつとも多く、長白山は無事泰平に治まりにける。
(大正一〇・一一・一六 旧一〇・一七 加藤明子録)
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