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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第8篇 神界の変動よみ(新仮名遣い)しんかいのへんどう
文献名3第31章 竜神の瀑布〔131〕よみ(新仮名遣い)りゅうじんのばくふ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-09-01 16:54:55
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月29日(旧11月01日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版182頁 八幡書店版第1輯 325頁 修補版 校定版186頁 普及版81頁 初版 ページ備考
OBC rm0331
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本文  長らくローマに足を留めたる八王神道貫彦は、ローマの没落とともに、モスコーを気づかひ、あまたの敵軍を突破してやうやく帰城し、道貫姫とともに長物語りに夜を徹したりける。
 しかるに道貫彦はわが不在中、春日姫の鷹住別と夫婦となりしことを大いに怒り、かかる一身上の大問題を父にも母にも計らず、決行したる春日姫も不都合なれども、第一母たる道貫姫の行き届かざる行為を怒り、道貫姫には別殿を造りてこれに蟄居せしめ、鷹住別と春日姫のあひだを生木を割くごとく、無残にも夜半の嵐の物凄く、常世国にむかつて鷹住別を神退ひに退はれにける。
 春日姫は、海洋万里の孤島にただ一柱とりのこされし心地して、連日連夜泣き暮したる。その結果、つひに心魂に異状を呈し、狂乱となり、行きあふ人ごとに形相を変じ眼を見はりて、
『鷹住別、々々々』
と叫び狂ふ。ここに竹友別、畠照彦は、いかにもして春日姫の病を癒さむとし、遠近の高山に分け入り瀑布に身を浸し、あるひは断食をなして祈願を籠めたれども、病気はおひおひ重くなるばかりなりける。
 あるとき畠照彦、竹友別はゆくりなくも天道山に分け入りしが、ここには「竜神の滝」といふがありて、山頂より落下する水勢は百雷の一度に轟くがごとく、水煙濛々として立ち上り、実にすさまじき深山幽谷なりける。
 ここに二人は、七日七夜精神をこめて祈願したりしが、その時馬の蹄の音嘎々と山上より聞えて、六面八臂の鬼神あらはれ二人にむかひ、
『春日姫の病気は、この瀑布に一ケ月打たれなば全快せむ』
と告げ、そのまま姿は煙雲のごとく消え失せけり。二人は天にも上る心地して急ぎモスコーに帰り、平玉彦とはかり春日姫をひそかに誘ひ、天道山の瀑布に連れ行かむとしたるに、大道別はこれを探知し、直ちにこれを厳禁したるに、畠照彦、竹友別は顔色をかへ大道別にむかつて、
『心得ぬ貴下の仰せなるかな。貴下は八王神に仕へまつる侍従長の顕職にありながら、毫末も忠良の志なし。われは身命を捨て、八王神夫婦の心痛を助けまつらむ忠義の心より出でたるなり。数月のあひだ、食を断ち、あるひは深山に分け入り、瀑布に投じあらゆる艱難辛苦を嘗め、その報いによつて神の命を受け、春日姫を救ひまつらむとす。しかるに厳禁すとは何事ぞ。いかに長上の言なればとて、かかる不忠不義の言に服従すること能はず』
と云ひ放ち、ひそかに春日姫を鶴舞姫と仮名し、ここに主従三人は天道山の大瀑布の下に進み入りにける。
 道貫彦は、平玉彦以下二人の赤誠を非常に感謝されたりといふ。ここに大道別は守高彦を瀑布に遣はし、すみやかに春日姫をともなひ帰るべく命令を伝へしめたれば、守高彦は、天道山の瀑布にいたり窺ひみれば、平玉彦以下の人々は春日姫の鶴舞姫を傍の石の上に横臥せしめ、代るがはる瀑布に打たれ、真裸のまま春日姫の身体にむかつて指を組み、鎮魂の姿勢をとり汗を滝水と流して、ウーウーと呻りゐたり。守高彦はこの体を見てあきれ果て、つひには抱腹絶倒のあまり、自分も気が変になりきたりぬ。そのとき鶴舞姫は、
『竹友別、々々々』
と連呼しけるが、竹友別は唯々諾々として滝壺より這ひあがり、鶴舞姫の前に畏るおそる跪坐しける。鶴舞姫はいやらしき笑をうかべて、
『貴下は恋しき鷹住別に非ずや』
と力のかぎり手首を握りたり。強力の鶴舞姫に手首を握られたる竹友別はみるみる顔色青褪め、その場に打ち倒れたり。畠照彦は驚きて滝壺より這ひあがり滝水を口に含み、竹友別の面上を目がけて息吹き放ちけるに、竹友別やうやくして正気づきぬ。されど鶴舞姫は堅く手を握りて放さねば、竹友別は耳菟のごとき円き目を白黒とむき出し、一言も発しえず悶え苦しみにけり。時しもあれ守高彦は、やにはに鶴舞姫の横面目がけて拳固を加へたるが、そのはずみに鶴舞姫は滝壺へ落ち込みたり。三人は驚きて鶴舞姫を滝壺より救ひあげ、守高彦の手足に搦みつき、
『汝は不忠不義の悪人よ。主にたいして無礼の段その罪もつとも重し、目に物見せてくれむ』
と、三人一度に有りあふ岩を手に持ち、守高彦の身体を処かまはず打ち据ゑける。守高彦は四つ這となり、笑ひながら、
『もう、それでよいか』
と嘲笑したるに、三人はますます怒り、岩を持つて打てども擲れども、不死身の守高彦は平然たり。何はともあれ、一時もはやくこの様子を大道別に報告し、あまたの神司を引き連れきたりて三人をしばり、春日姫を連れ帰らむと心を定め、守高彦は一目散にモスコーに走り帰り、この次第を大道別に奏上したりける。
 大道別は大石別を守高彦にそへ、あまたの神司をひきゐて天道山の瀑布にむかひ、
『鶴舞姫以下諸神司を残らず打ち殺し帰るべし』
と命令したり。大石別、守高彦は案に相違の顔色にて、
『畏れおほくも主の御娘を、従臣の分際として、打ち殺し帰れとはその意を得ず。貴下もまた常世国の邪神に憑依されて、かくのごとき暴言を吐かるるならむ。決して決して貴下の本心より出し言には非ざるべし』
と言ひつつ、大石別、守高彦は前後より手を組み合せ、ウーウーと一生懸命に霊力をこめ鎮魂の姿勢を取りける。大道別は吹きだし、腹をかかへてその場に打ち伏し、
『大石別腰を揉め、守高彦足を撫でよ。あまりのをかしさに腹も腰もだるくて置き処なし』
とて哄笑せり。二人は烈火のごとく憤り、
『不忠不義の悪魔の張本、天にかはりて誅戮せむ。思ひ知れよ』
と力自慢の守高彦は、蠑螺のごとき拳固をかためて大道別を打たんとしたるその刹那、守高彦の腕は銅像のごとく手を振り上げしまま少しも動かずなりにける。大道別は二人にむかひ、
『吾は臣下の分際として忠義の道をわきまへざるに非ず。春日姫はすでに鷹住別と手をたづさへて常世国にあり。しかるに二人の春日姫の在すは合点ゆかずと、毎夜ひそかに烏羽玉の宮に詣で、神勅を請ひゐるをりしも大神現はれたまひ、かれ春日姫は銀毛八尾の悪狐の変身なり。その証拠はかれの足の裏に狐の形したる斑紋ありとの神示なりしかば、吾は常に注意しつつありしに、ある機会にその斑紋を見届けたり。ゆゑに偽りもなき悪狐の変化なれば、汝はすみやかに天道山の瀑布にいたり、姫もろともに一度に打ちとるか、さなくばこれを生擒りにして帰りきたるべし』
と初めて心中を打ち明けたりしに、守高彦はいづれが真の狐なるや合点ゆかず、ともかくも春日姫の足の裏を見とどけての上決せむと、大石別もろとも急ぎ竜神の瀑布に進み入りにける。
(大正一〇・一一・二九 旧一一・一 加藤明子録)
(第二九章~第三一章 昭和一〇・一・一七 於延岡市吉野屋旅館 王仁校正)
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