文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第8篇 神界の変動よみ(新仮名遣い)しんかいのへんどう
文献名3第32章 破軍の剣〔132〕よみ(新仮名遣い)はぐんのつるぎ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ
データ凡例
データ最終更新日----
あらすじ
主な人物
舞台
口述日1921(大正10)年11月29日(旧11月01日)
口述場所
筆録者外山豊二
校正日
校正場所
初版発行日1922(大正11)年3月3日
愛善世界社版189頁
八幡書店版第1輯 328頁
修補版
校定版193頁
普及版85頁
初版
ページ備考
OBC rm0332
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本文の文字数1596
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本文
大石別、守高彦は、大道別の言葉の実否を試さむと、急ぎ天道山の大瀑布に諸神卒とともに駆つけ見れば、春日姫は容姿がらりと変じ、にこやかに微笑しながら二人にむかひ遠路のところ御迎ひ大儀と、実にすましゐたりける。平玉彦は得意らしく鼻をぴこつかせ、右の手の甲にて上下の唇を左から右へ斜にこすりながら、
『大石別、守高彦』
と言葉鋭く呼びかければ、二人はその態度に憤然として面をふくらせ、
『銀毛八尾の悪狐にしたがふ平玉彦の盲目どもよ、平玉蜘蛛となりて、吾が前に正体をあらはせ』
と叫ぶや、平玉彦は怒りて、汝無礼ものと言ひながら大石別に打つてかからむとしたり。されど、仁王のごとき強力無双の守高彦の両手に拳骨を握りをるその形相のすさまじさに、やや躊躇の色ありき。
春日姫は言葉優しく、
『大石別、守高彦、妾はすでに病気全快なしたれば、最早ここに長居するの必要なし。わが本復の祝ひにかへ、平玉彦を許せよ』
と言葉を添へけるを、大石別は守高彦と目と目に何事か物言はせながら、この場を無事に引返すこととなり、春日姫は神司らに送られて賑々しく帰城したりける。
道貫彦は、春日姫の無事帰城せることをよろこび、春日姫の頼みを容れて烏羽玉の宮の宮司に任じける。平玉彦、大石別以下の神司は、これを見て欣喜のあまり落涙しながら、大道別の前にすすみいで、
『貴下は、畏れおほくも八王神の御娘春日姫を、銀毛八尾の悪狐といひ、かつ御足の裏に狐の斑紋ありといはれたり。されどかくのごとく病気全快したまひ、神聖なる烏羽玉の宮の司とならせたまひ、精神ここに一変して至善至美なる神司とならせたまひしに非ずや。貴下は八王神にたいし速やかに切腹せらるべし。卑怯未練に躊躇せば、われ天にかはつて貴下を誅戮せむ』
と息まきながら詰めよりにける。
時しも道貫彦の御召なりとて、春姫は言葉おごそかに大道別を差招きければ、大道別は春姫とともに奥殿に進み入りしに、奥殿には道貫彦、春日姫が正座にひかへ、言葉も荒く、
『汝は春日姫にたいする無礼の罪により、天地の律法に照らし自殺を申しつくる』
と厳かに言渡しける。大道別は驚くかと思ひのほか、大口あけて打笑ひその場に倒れ伏しぬ。しばしの後、
『あゝ暗い、暗い』
と呟きながら、腰の一刀を抜くより早く電光石火春日姫の首は、胴を離れける。
このとき道貫彦は、大声に大道別を引捕へよと怒号すれば、この声に驚いて平玉彦、大石別、畠照彦、竹友別その他の神司は奥殿目がけて走りいり、前後左右より大道別を取り押さへ、高手小手にしばり上げたり。大道別は心中に天の破軍星を祈り、国治立命の救助を祈りければ、たちまち百雷の一時にとどろく如き音響とともに、破軍星の精魂たる武満彦命降りきたり、破軍の剣をもつて空中を切り捲りたまふにぞ、今まで春日姫と思ひし女性は、銀毛八尾の悪狐と化し、そこに斃死しゐたりける。ここに全く大道別の無辜は晴れ、かつ道貫彦は非常に口をきはめて大道別の天眼力を感賞したり。しかるに大道別は春日姫の悪狐の首を斬り捨てたるさい、そのほとばしる血の一滴を口に呑み、その血は身体一面にひろがり、さしも明察にして勇猛なりし大道別も精神に異状をきたし、発狂者となりにける。
これよりモスコーの城は、常世姫の駆使せる金毛九尾の悪狐のために蹂躙され、道貫彦、夕日別の夫妻は、つひに城を捨てて万寿山に難を避くることとはなりぬ。
大道別はそれより世界の各地を漂浪し、ある不可思議の出来事より、病気まつたく癒えたれども、命は依然として発狂者をよそほひ、かつ聾者となり、馬鹿者となりて敵状を視察し、最後に神政成就の神業にたいして偉勲を立てたるなり。神機発揚の神司として五六七神政の基礎となり、国祖再出現にさいし、とつぜん地の高天原に顕現する神人なり。大道別の正体ははたして如何。ただ今後に徴せむのみ。
(大正一〇・一一・二九 旧一一・一 外山豊二録)