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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第9篇 隠神の活動よみ(新仮名遣い)いんしんのかつどう
文献名3第34章 旭日昇天〔134〕よみ(新仮名遣い)きょくじつしょうてん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月06日(旧11月08日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版202頁 八幡書店版第1輯 332頁 修補版 校定版206頁 普及版90頁 初版 ページ備考
OBC rm0334
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本文  ここに大道別は、大島別の奥殿に導かれ、山野海河の珍味の饗応をふたたび受け、終日終夜うるはしき女性の舞曲を見せられ、絲竹管絃の音に精神恍惚として、鼻唄気分になりゐたりしが、不思議や八島姫の巴形の斑紋は拭ふがごとく消え去り、大道別の斑紋はおひおひ濃厚となりきたりぬ。
 ここに大島別は威儀を正し、大道別にむかひ、八島姫のこの度の大難より、大道別の渓間に顛倒しほとンど絶息しゐたるを助けゐたるに、あにはからむや、その面上に巴形の斑紋あらはれ、八島姫の額の斑紋はしだいに薄らぎ消え失せたる次第を物語り、
『汝は吾が娘八島姫の身代りとなりて、荒河の宮の犠牲たるべき運命のもとにおかれたるものなり』
と吐息をつきながら涙を流して物語りけるにぞ、大道別は少しも驚く色なく、涼風面を吹くごとき平気な態度にていふ。
『そは実に面白きことを承るものかな。我はかかる犠牲的行為を心底より喜ぶ。そもそも神たるもの犠牲をたてまつらざれば、怒りて神人を苦しますべき理由あるべからず。これまつたく邪神の所為ならむ。我かつて竜神の滝において悪魔を見届けたることあり、よき研究材料なり。謹ンで貴意に応ぜむ』
と、こともなげにいひ放ち平然として酒をのみゐたりけり。大島別以下の神司らは、おほいに喜び感謝の意を表し、ただちにその準備に着手したりぬ。
 いよいよ期日は迫り来れり。神司らは種々の供へ物とともに、大道別を柩に入れ納め、山深く分けいりて、黄昏ごろやうやく荒河の宮に到着し、社前に柩ならびに供へ物を安置し、一目散に逃げ帰りける。
 夜は森々と更けわたり、四辺しづかにして、水さへ音なく、静かにねむる深更の丑満時となりぬ。たちまち社殿は鳴動しはじめ、数万の虎狼が一度に咆哮するごとき、凄じき音響聞え来りぬ。
 大道別は何の恐るる色もなく、柩の中に安坐して、天津祝詞を幾回ともなく繰返し奏上しゐたるに、たちまち神前の扉はぎいぎいぎいと響きわたりて、眼は鏡の如く、口は耳まで引裂け、不恰好に曲める鼻は菊目石を括りつけしごとく、牙は剣のごとく、白髪背後に垂れ薄蝋色の角、額の左右に突出たる異様の怪物、金棒をひつさげて柩の前に現はれ、どんと一突き地上を突けば、その響きに柩は二三尺も地上をはなれ飛び上りける。さすがの大道別も、すこしは案に相違の面持なりける。
 大道別は天津祝詞を一生懸命に、汗みどろになり声をかぎりに奏上したるに、その言霊の響きによりて、柩は自然に四方に解体したれば、大道別はスツクと立ち上りたり。怪物はその勢に辟易して二三歩後方に退きし、その隙間を見すまし、怪物の胸部を目がけて長刀を突き刺しけるに、怪物はキヤツと一声、大地にだうと倒れ伏し、もろくも息は絶にける。大道別はそのままそこに端坐して、神前の神酒神饌その他の供へ物を仁王のごとき手をもつて之をつかみ、むしやむしやと片つ端から残らず平げにける。
 しばらくあつて天上より微妙の音楽聞え来たりぬ。大道別はその音楽を酒の肴のごとく思ひつつ、神前の冷酒の残りをがぶがぶと呑みはじめたる時もあれ、たちまち容色端麗にして荘厳無比なる女神は数多の侍神とともに現はれたまひ、言葉しづかに、
『妾は天の高砂の宮に鎮まる国直姫命なり。汝はこれより吾が命を遵奉し、神界経綸の大業を完成するまで、地上の各地をめぐり悪神の陰謀をさぐり、逐一これを国治立命に奏上すべし。それまでは汝は仮に道彦と名乗り、かつ聾唖となり、痴呆と変じて神業に従事せよ。汝には、高倉、旭二柱の白狐をもつてこれを保護せしめむ。使命を遂行したる上は、汝は琴平別命と名を賜ひ、竜宮の乙米姫命を娶はし、神政成就の殊勲者として四魂の神の中に加へむ。夢疑ふなかれ』
と言葉終るとともに、国直姫命以下の神司らの姿は消え失せ、東方の山の谷間よりは紫の雲を分けて天津日の神豊栄昇りに昇りたまひぬ。かたはらを見れば象のごとき怪物、血にまみれて横たはりゐたり。これぞ六面八臂の邪鬼の眷族なる大狸なりける。
 それ以後荒河の宮は焼きすてられ、南高山一帯の地方の禍は、跡を絶つに至りける。玉純彦以下の神司らは、大島別の命により数多の神司を引率し、荒河の宮にいたり見れば、大道別は平然として大狸の横に安坐し、天津祝詞を奏上しゐたるにぞ、神司らはかつ驚きかつ喜び、大道別とともに南高山の城内に意気揚々として帰り来りける。大道別は神司らより親のごとく尊敬され、優待されて若干の月日をここに過したりける。
(大正一〇・一二・六 旧一一・八 加藤明子録)
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