文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第1篇 八洲の川浪よみ(新仮名遣い)やすのかわなみ
文献名3第4章 乱暴な提案〔154〕よみ(新仮名遣い)らんぼうなていあん
著者出口王仁三郎
概要
備考
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データ凡例
データ最終更新日----
あらすじ常世城の大広間に、世界中の勢力の代表者を集めた常世会議が開会した。常世彦は美山彦を従えて壇上に現れ、根本的な世界の改造がこの会議の目的であると宣言し、また唯一不参加の万寿山の非を責め立てた。
大国彦の重臣・大鷹彦は、神界の争乱を根絶するためにはまず、八王・八頭を廃止するべし、と述べ立てた。あまりの提案に一同はしんとなったが、場外には八王大神配下の猛獣の声や鳥船の音がやかましく鳴り響き、強圧的な雰囲気があった。
八王大神の威勢を恐れて誰も発言しない中、聖地の使者・行成彦が悠々と登壇した。
主な人物
舞台
口述日1921(大正10)年12月16日(旧11月18日)
口述場所
筆録者
校正日
校正場所
初版発行日1922(大正11)年3月30日
愛善世界社版26頁
八幡書店版第1輯 381頁
修補版
校定版28頁
普及版14頁
初版
ページ備考
OBC rm0404
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本文
常世の国の首府たる常世城内の大広間には、世界における八王、八頭の神司をはじめ、数多の使者を集めたる大会議は開催されたり。大広間の中央に高座が設けられて八王八頭をはじめ諸神司は立つて議題を演述するの装置なりける。
常世彦は美山彦をしたがへ、この高座に現はれ、
『世界の平和を永遠に、無窮に保持して、神人をして国治立命の神政に随喜し天地の律法を厳守し、各山各地の神政を統一して根本的世界の大改造を断行すべく、そのため、諸神司の来集を求めたるに、神界および万有の平和安息を望まるる至誠至仁の諸神司は漏れなく、空前絶後のこの大会議に先を争ふて出席されたるは、主催者として実に感謝のいたりに耐へず。願はくば、諸神司は協心戮力もつて慎重に世界のため、天下神人のために最善をつくして審議されむことを懇請す。ただ恨むらくは万寿山における八王八頭の反抗的態度を固持して出席を拒絶せる頑迷不霊の行動を遺憾とするのみ。万々一この会議をして、不結果に終らしむる様のことあらば、本会議にたいする責任は万寿山の八王神司に帰すべきものと確信する。諸神司それ克く吾が誠意の存するところを洞察して、我が主催の大目的を達成せしめられむことを希望す』
と宣明せり。
諸神司は一度に拍手喝采し八王大神の宣示を大神の慈言のごとく、救世主の福音として口を極めて讃美したり。その声は常世の国の天地も崩るるばかりの勢なりける。ついで万寿山の不参加を口々に悪罵嘲笑して世界の大敵、平和の破壊者とまで極言するにいたりける。
諸神司の会するもの八王、八頭をはじめとし、諸山諸地の守護なる国魂および使臣を合して八百八十八柱の多数が綺羅星のごとく、中央の高座を円形に取まきたりしが、その光景は、大宇宙の中心にわが宇宙球ありて、無数の小宇宙球が包囲し居るごとく見えにけり。
ここに大国彦の重臣なる大鷹彦は八王大神の退場とともに中央の高座に現はれ、議席を一瞥し厭らしき笑をもらし、眉毛を上下に転動させながら百雷の一時にとどろくごとき大音声を発して、諸神司の荒胆を奪はむとしたりしより、諸神司はその声にのまれて摺伏せむばかりなりける。
因にいふ、この時代はいまだ神人の区別なく、現代のごとき厳格なる国境も定まらず、神人は単に高山を中心として、国魂神を祭り神政を行ひゐたりしなり。神人らは竜蛇、虎、狼、獅子、悪狐、鬼、白狐、鰐、熊、鷲、鷹、烏、鵄なぞを眷属として使役し、これらの眷属によつて各自に守らしめゐたりしなり。ちやうど現代の国防に任ずるところの陸海軍、空軍が各自に武装をこらしゐて敵にあたるごとく、角や、牙や、羽根や、甲のごときは太古の時代における神人の大切なる武器とせられける。
ここに大鷹彦、美山彦二人は立つて、
『神界の争乱を根絶し、真個平和の神政を布き、道義的に世界を統一せむとせば、各神の率ゆる眷属の有するその武器を脱却せしめざるべからず。かつ各山の主権者なる八王を廃し、上中下の神人の区別を撤回し、四海平等の神政を行ふをもつて第一の要件と思ふ。諸神司は如何、御意見あらば、遠慮なくこの高座に登りて、その正否を陳弁論議されたし』
と述べ立てたりしより、十一柱の八王は寝耳に水の驚きに打たれ、鳩が豆鉄砲を喰つたるごとく、唖然として互ひに顔を見合すばかりなり。ここに蛸間山の八頭なる国玉別はただちに登壇し、大鷹彦、美山彦二人の提出せる議案について口を極めて讃歎し、八王の廃止をもつて平和第一の要点なりと述べ、且つ、
『武備の全廃は平和のために欠くべからざる大名案なれば、一同の賛成を乞ふ』
と謂ひつつ壇をしづかに降り、自分の定席につきぬ。満場水を打ちたるごとく暫時のあひだは寂寥の気に充たされ、神人らは呆然として口を開いたまま閉づるものなかりける。大広間の外部には数万の猛虎嘯き、獅子吼え猛り、狼唸り、竜蛇荒れくるひ、鷲の羽ばたき凄まじく、大空には天の磐船幾百千ともかぎりなく飛びまはりて巨音をたて、一大示威運動が開始されつつありき。いづれも常世彦の指揮によるものなりけり。
八王、八頭の神司をはじめ諸神人は、いまに何事かの一大惨事の勃発せむやも計り難しと、煩悶の結果は、たちまち顔色土のごとく、蒼ざめたる唇を慄はせて、上下の歯に音をたてつつ一言も発せずして、扣へてゐたりける。示威的運動は時々刻々に激烈の度を加ふるのみ。八百八十八柱の神司らは、この光景に胆をうばはれ畏縮して、何の意見をも述べむとする者なかりけり。
この腑甲斐なき場面をながめて、聖地よりの使者行成彦は、恐るる色もなく立上り壇上目がけて悠々と登りゆく。神司らの視線はのこらず行成彦の一身に集注されたりける。アヽ行成彦は果していかなる意見を吐くならむか。
(大正一〇・一二・一六 旧一一・一八 出口瑞月)