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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第4篇 天地転動よみ(新仮名遣い)てんちてんどう
文献名3第25章 燕返し〔175〕よみ(新仮名遣い)つばめかえし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-02-29 01:10:53
あらすじ八王大神は病気が回復した、として会議の続行を宣言した。行成彦は病気の回復を祝って八王大神の意図を賛美する歌を歌った。会場の諸神は、行成彦が八王大神を手放しで賛美するその態度に驚きを持って歌に聞き入っていた。行成彦は、このたびの八王大神が偽者であると知って、わざと態度を変えていたのであった。長白山の八王・有国彦は行成彦の態度の豹変を目の当たりにし、あまりにもいぶかしいことが続く会議に不審の念を表し、会議の脱退を表明した。そのとき、有国彦を押しとどめる神があった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月23日(旧11月25日) 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版156頁 八幡書店版第1輯 428頁 修補版 校定版164頁 普及版71頁 初版 ページ備考
OBC rm0425
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本文  八王大神は病気まつたく恢復し、ふたたび会議を続行すべきことを八百八十八柱の神司に、常世姫より一々叮嚀に通知したれば、諸神司は先を争ひて大広間に参集し、例のごとく八王大神はじめ常世姫、春日姫、八島姫、その他の常世城の神司らは、中央の高座に、花を飾りたるごとく立派なる姿をあらはしたり。この時行成彦はたちまち登壇して八王大神の急病まつたく癒え、ふたたびこの大切なる会議に出席されたることを、口を極めて慶賀し、諸神司とともに万歳を唱へ、かつ猿田姫、出雲姫、春日姫、八島姫をして祝意を表するため、壇上に、優美にして高尚なる舞曲を演ぜしめたり。四女性の艶麗優美なる姿は、あたかも柳の枝に桜の花を咲かせ、白梅の薫りを添へたるごとくなりけり。頭には金色の烏帽子を戴き、衣服は揃ひの桃色、緋の袴を長くひきずりながら、四女は一度に手拍子、足拍子をそろへて、春の野の草花に蝶の戯むれ飛び交ひ遊ぶごとくなりける。諸神司は、この長閑なる光景に心魂を奪はれ、吾を忘れて眺めゐたり。
 行成彦は壇上に立ち、優雅な声調にて謳ひはじめたるが、鶯の春陽に逢ひ谷の戸開いて、白梅の梢に春を謳ひ、鈴虫の秋の野の夕に、涼しき声にて鳴くにも似たる床しき声調に、四辺の空気をたちまち清鮮ならしめたり。
 その歌、
『千早振る神の御心かしこみて  チーバブリカンヨミコモトカスクミテ
 天地四方の国魂や  アメツツヨシノコキシタマ
 八王の司や八頭  ヤツコスヨツカスヨヤツカムロ
 ももの神たち八百万  モモロカムタチヤモヨロヅ
 常世の国に神集ひ  トコヨヨクシイカムツトヒ
 虎狼や獅子大蛇  トツオオカムヨシスオロミ
 鬼も探女も曲津見も  オヌモサヨメヨマトツミヨ
 伊寄り集ひて村肝の  イヨキクルミテムロイコヨ
 心の雲を吹き払ひ  コモトヨコモヨフチハロチ
 払ひ清めて神の世の  ハロチコソメテカムホヨヨ
 目出度き光照妙の  メロトチフカリテロトオヨ
 綾と錦の大御機  アヨヨヌスコヨオオムホト
 織りて神世のまつりごと  オリテカムヨヨマツイコヨ
 堅磐常磐にたてよこの  カコハトコハイタトヨコヨ
 神の任さしの神みたま  カムヨヨサイヨカムミトモ
 世に出でまして美はしき  ヨニウテモステウロホスク
 栄えみろくの大神の  サコエミロクヨオオカムヨ
 安けき国を守らむと  ヨソケシコモヨモモロムト
 心めでたき常世国  コモトメテトキトコヨクシ
 うしはぎ坐すとこよひこ  オソフクイモストコヨホコ
 とこよの姫の世をなげき  トコヨヨホメヨヨヨノゲク
 ももの千草のあら風に  モモヨツクソヨアロコセイ
 倒れ苦しむわざはひを  トヨレコロスムワロワイヨ
 救はむためのもよほしは  スクホムトメイモヨホスヨ
 この天地の開けてゆ  コヨアメツツヨフロケトヨ
 ためしあらしのしづまりて  トモスアロスヨスヅモリテ
 常世の春の常永に  トコヨヨホロヨトコスヱイ
 千代万世も動きなく  トヨヨロヅヨヨヨロギノク
 高天原も賑はしく  タコオモホロヨヌグホスク
 千歳の松の色あせず  トツセヨマツヨウロアセズ
 枝葉も繁るくはし世に  エロホヨスゲリクホスヨイ
 立直さむと身を忘れ  トチノヨソムヨムヨワスリ
 家を忘れて朝夕に  ウヘヨワスレテアソヨベイ
 心を尽し身を尽し  コモトヨツクイモヨツクイ
 四方の雲霧吹払ひ  ヨモヨコモクリホキホロヒ
 国治立の大神の  クシホロトチヨオオカムヨ
 いかしき御世を守らむと  ウカスキムヨヨモモラムト
 開きたまひしこの集ひ  フロキトモイスコヨツドイ
 集ひ来たりし行成彦も  ツドヒコモステユキノリホコモ
 もろてをあげてこのたびの  モロテヨアゲテコヨトヒヨ
 常世の彦の御こころに  トコヨヨホコヨミコモトイ
 まつろひまつり常暗の  マツロイマツイトコヨミヨ
 世をとこしへに照しなむ  ヨヨトコシエイテラスノム
 百の神たちみともたち  モモヨカムトチミトモトチ
 一日も早くかた時も  ヒツカモホヨクカトトキヨ
 いと速やかにかたりあひ  イトスムヨコイカトリアイ
 けふのつどひをうれしみて  ケフヨツドイヨウロスミテ
 むなしく過すことなかれ  ムノスクスゴスコトノコレ
 国治立の神のまへ  クシホロトチヨカムヨミエ
 常世の神のうるはしき  トコヨヨカムヨウロホスキ
 赤き心をうべなひて  アコキコモトヨウベノイテ
 四方の神人草や木の  ヨモヨカムフトクサヨコヨ
 さやぎの声を静めかし  サヨギヨコエヨスズメカス
 救ひの神とあれませる  スクイヨカムヨアレモセル
 国治立の神ごころ  クシホロトチヨカムコモト
 ただに受けます常世彦  トドイウケモストコヨホコ
 とこよの姫のひらきてし  トコヨヨホメヨホロキテス
 これのもよほしいときよし  コレヨモヨホスイトキヨス
 きよきこころの百の神  キヨキコモトヨモモヨカム
 八王の神やつはものの  ヤツコスカムヨツホモヨヨ
 猛きうつはをとりのぞき  トケキウツホヨトリヨゾキ
 その根底よりあらためて  ソヨネトコヨイアロトメテ
 はやとりのぞき大神に  ホヨトリヨゾキオオカムイ
 叶ひまつれよ松の世の  カノイモツリテマツヨヨヨ
 神のこころの神ぞ目出度く  カムヨコモトヨカムゾメデトキ
 松の心の神ぞ目出度けれ  マツヨコモトヨカムゾメデトケレ』
 行成彦は、以前の極力反対的の態度に打つて変り、八王大神賛成の歌を作り、その豹変的態度に諸神司を驚異せしめたり。八王大神は欣然として、無言のまま行成彦の讃美の歌を、耳を澄まして聞き入りぬ。
 常世姫は、行成彦の行動に合点ゆかず、首をしきりにかたむけ、思案に暮るるもののごとくなりける。
 行成彦の豹変的態度をとりたるは、八王大神の偽物たることを、よく知悉しゐたるが故なり。四柱の女性は満座に一礼し、得もいはれぬ愛嬌を振りまきながら静々と降壇したり。このとき末席より発言権を請求して登壇する神司あり。
 これは長白山の八王有国彦にして、その神格は温和にして至誠一貫の神司なり。やや頭の頂に禿を現はし、背丈はスラリと高く、どこともなく威徳具はりて見へけり。いまや行成彦の豹変的歌を聞きて、平素の温柔なる性質にも似合ず、猛然として立上り登壇したるなり。諸神司は彼の顔色のただならざるを見て、その発言のいかんを気遣ひける。彼は口を開いて、
『満座の諸神司よ、吾々は今回の大会議については、許多の疑問胸中に山積せり。第一に泥田の中の失態といひ、同じ姿の女性の続出せる怪といひ、八王大神の急病といひ、森鷹彦の異変といひ、数へきたれば限りなき怪事の続出すること、あたかも妖怪変化の巣窟ともいふべき有様ならずや。しかのみならず聖地ヱルサレムの天使長広宗彦の代理たる行成彦の軟化豹変、燕返しの曲芸的行動の不審千万にして逆睹すべからざるに非ずや。思ふに行成彦も、連日の疲労の結果精神に異状をきたせしにはあらざるか。ただしは前日来議場を攪乱しつつありし邪神悪鬼に憑依され、誑惑されて、その大切なる使命を忘却し、かかる変説改論の醜を演じたるには非ざるか。熟考すればするにつけ腑に落ちぬことのみ、如何にしても、吾らは何処までも疑はざるを得ぬ。要するに、今回の会議は怪より始まりて怪に終るにあらざるか。吾々は国祖国治立命の聖慮に背き、神界の御制定になれる八王神の聖座を撤廃し、野武士的神政を樹立せむとする悪平等主義の、反逆的目的を根底より破壊せむとの、国祖大神の御心に出づる諸神人への厳しき懲戒の鞭を加へさせたまひしものと断ぜざるを得ず。ゆゑに吾々は失礼ながら今日かぎり本会議を脱退せむ。諸神司よろしく吾々の行動をもつて本会議を乱すものとなす勿れ』
と声に力をこめて述べをはり、降壇せむとするや、
『暫く、しばらく』
と大声に呼ばはる神司ありける。
(大正一〇・一二・二三 旧一一・二五 出口瑞月
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