岩から落ちた常治彦は、額の角が根元から抜けてしまった。常治彦は血まみれになりながら、宴席に向かって石を投げつけようとしたが、体がその場に硬直してしまった。
そして、そこに現れた鬼武彦によって、エデンの大河に投げ込まれてしまった。
酒宴に顕恩郷の人々は酔いつぶれて、蟹の姿になってしまった。また、巨大な大亀が現れて酒を飲んで酔い、立ち上がって踊り出した。南天王の鷹住別は、この光景を見ておかしさに笑ったとたんに腰が抜けてしまった。
鬼武彦は驚いて神言を奏上すると、人々は蟹から元の姿に戻り、亀はばったりと伏して四つんばいになった。
鬼武彦は亀の背にまたがって棒岩に向かい、岩に登ると石像と化してしまった。顕恩郷の神々は、喜んで像を祀り祈願した。大亀は、また姿を消してしまった。
顕恩郷ではそれ以来、この石像を神と崇拝し、南天王夫妻も日を定めて参拝し、神勅を乞うて政を決するようになった。顕恩郷は天地の大変動による洪水まで、安全な場所であった。
鬼武彦の本体は、顕恩郷を去って常治彦を追っていた。常治彦はエデンの大河から這い上がり、命からがらエルサレムに帰郷した。しかし、聖地にはすでに常治彦が塩治姫とともに政務を補佐していたのであった。