大宇宙の元の始めは、湯気とも煙ともなんとも形容のしがたい一種異様の微妙なものが漂っていた。これがほぼ十億年の歳月を経て、無形・無声・無色の霊物となった。これを宇宙の大元霊という。
日本の神典ではこの大元霊を天御中主神、天之峯火夫神という。仏典では阿弥陀如来、キリスト教ではゴッド、易では対極、中国では天帝、等々と呼ばれている。
天御中主神の霊徳は、次第に宇宙に広がって行き、ついには霊、力、体を完成した。無始無終、無限絶対の大宇宙の森羅万象を完成させた神であるので、これを称して大国治立尊、天常立命、ミロクの大神とも言う。
宇宙の大原因である一種微妙の霊物は、天御中主神の純霊として、霊力を産出するにいたった。これを霊系の祖神・高皇産霊神という。
次に元子(または水素)を醸成した。これを体系の祖神・神皇産霊神という。この二神の霊と体から、一種の力徳が生じた。ほとんど三十億年を要して、霊・力・体がやや完成にいたった(造化三神)。
水素は次第に集合して清水となった。高皇産霊神は、清水に火霊を宿したので、清水には流動する力が備わった。水の流体を葦芽彦遅神という。水は一切動物の根源をなし、これに火を宿すことで動物の本質である力徳が発生する。生魂(いくむすび)とはこのことを言う。
次に火と水が抱合して固形物体が発生した。宇宙一切を修理固成する根源の力となる。これが常立神であり、剛体素という。玉留魂(たまつめむすび)である。玉留魂によって、宇宙は固体を備えるに至った。ここまで太初から五十億年かかっている。
水を胞衣として創造された宇宙の中で、一切の円形のものは、水の微粒子の円形に基づいている。
剛体は玉留魂の神威発動による。日地月星がようやく形成された。宇宙の大地は、ほうらくを伏せたような山と、剛流の混淆した泥海から成っている。
玉留魂の神の神徳が発揮されて大地・海陸の区別がなった。軽くて清いものは大空となり、重くて濁ったものが下に留まって大地を形成した。
流と剛、すなわち生魂と玉留魂の水火が合して不完全な呼吸を営み、その中から植物の本質である柔体・足魂(たるむすび)が完成した。これを神典では豊雲野命という。
ここまできて、宇宙には剛(玉留魂)、柔(足魂)、流(生魂)の本質が完成された。
これらの原子と原因は、互いに生成化育して発達し、動(大戸地神)、静(大戸辺神)、解(宇比地根神)、凝(須比地根神)、引(生杙神)、弛(角杙神)、合(面足神)、分(惶根神)という八力を産出した。
この八力によって宇宙の組織が成就し、大地星辰はその位置を保つことができるようになった。こうして、大宇宙が完成するまでに、ほとんど五十六億万年を費やした。
こうして大宇宙の大原因霊である天御中主神は五十六億万年かけて宇宙の一切を創造し、大国治立命と顕現した。そしてその霊魂を分派して我が宇宙に下したもうた。これが、国治立命である。国治立命は、豊雲野命と剛柔相対して地上に動植物を生成化育し、諾冊二尊を生み、日月を作ってその主宰神とした。
しかしながら国治立命の神政も、年が経るにつれて邪気が宇宙に行き渡ったために、ご退隠を余儀なくされたことは、すでに述べたとおりである。