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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第2篇 常世の波よみ(新仮名遣い)とこよのなみ
文献名3第12章 起死回生〔262〕よみ(新仮名遣い)きしかいせい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-11 17:46:09
あらすじ日の出神は薬草を探し出して、春日姫の毒を治した。そして、天恩郷で南天王の妃として君臨しているはずの春日姫が、なぜこのような山奥で宣伝使として旅をしているのか、問いただした。春日姫は天恩郷を逐電してから今までの経緯を日の出神に語った。日の出神は春日姫の身の上を聞くと、両親に孝養を尽くし、夫の帰還を待つためには、モスコーに帰って家を守るのも努めである、と諭した。春姫もまた、日の出神の助言に従い、モスコーに春日姫を送っていこう、と諭した。しかし春日姫は、いったん神の道に宣伝使として思い定めたからは、たとえ山野に屍をさらすとも、初心を枉げることはできない、と決心のほどを明らかにした。日の出神・春姫ともに、春日姫の決心の強さに感嘆し、それ以上は何も言わずに長白山を降り、また三人三方へと宣伝の旅に散っていった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月17日(旧12月20日) 口述場所 筆録者嵯峨根民蔵 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版75頁 八幡書店版第1輯 657頁 修補版 校定版77頁 普及版31頁 初版 ページ備考
OBC rm0612
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本文  久方の天と地との大道を、解き分け進む宣伝使、世は烏羽玉の闇の世を、洽ねく照らす日の出の守、深山の奥に分け入りて、神の御旨を伝へ来る、月日も長き長白の、山分け進む神司の、雄々しき姿今ここに、三つの身魂のめぐり逢ひ、深き縁の谷の底、底ひも知らぬ皇神の、恵みの舟に棹さして、大海原や川の瀬を、渡る浮世の神柱。
 ゆくりなくも、ここに一男二女の宣伝使は邂逅したりける。春日姫は苦しき息の下よりも幽な声をふり絞り、
『貴下は大恩深き南天王の日の出の守にましますか。みじめなところを御目にかけ、御耻かしく存じます』
と言葉終ると共に、息も絶え絶えに又もや打伏しにける。日の出の守は両眼に涙をたたへ、黙然として春日姫を打ち眺めつつありしが、ツと立ち上り、傍の叢を彼方こなたと逍遥しながら、二種の草の葉を求めきたり、両手の掌に揉み潰し、雫のしたたる葉薬を春日姫の疵所にあて介抱したりける。
 これは各地の高山によく発生する山薊と、山芹にして、起死回生の神薬は、これを以て作らるるといふ。日本では伊吹山に今に発生し居るものなり。
 見るみる春日姫は、熱さめ痛みとまり腫れは退き、たちまちにして元の身体に復し、さも愉快気に笑顔の扉開きける。ここに三人は歓喜極まつて、神恩の厚きに落涙したり。
 日の出の守はおもむろに春日姫に向ひ、
『貴女は顕恩郷の南天王として夫婦睦じく住まはせ給ふならむと思ひきや、思ひがけなき宣伝使のこの姿。変り易きは浮世の習ひとは言ひながら、何ンとして斯かる深山にさまよひ給ふぞ。また鷹住別は如何はしけむ、その消息を聞かまほし』
と訝かしげに問ひけるに、春日姫は一別以来の身の消息を、こまごまと物語り、かつ世の終末に近づけるを坐視するに忍びず、身命を神に捧げて、歩みも馴れぬ宣伝使の苦しき旅路の詳細を物語りけるに、日の出の守は言葉を改めて、
『至仁至愛の神心を奉戴し、世を救ふべく都を出でての艱難辛苦お察し申す。さりながら、女たるものは家を治むるをもつて第一の務めとなす。汝が夫鷹住別の宣伝使として浪路はるかに出でませし後のモスコーは、年老いたる両親の御心のほども察しやらねばなりますまい。貴女はすみやかにモスコーに帰り、父母に孝養を尽し、神を祈りて、夫の帰省を心静かに待たせたまへ』
と勧むるにぞ、春姫はその語に次いで、
『隙間の風にもあてられぬ貴き女性の御身の上として、案内も知らぬ海山越えて、神のためとは言ひながら、御いたはしき姫の御姿、一日も早くモスコーに帰らせたまへ。妾は今よりモスコーに汝が命を送り届け参らせむ』
と真心面に表はして、涙と共に諫めけるにぞ、春日姫は首を左右に振り、
『二司の妾をかばひたまふその御心は、何時の世にかは忘れ申さむ。されど一旦思ひ定めた宣伝使、たとへ屍を山野に曝し、虎狼の餌食となるとも、初心を枉ぐる事のいとぞ苦しければ』
と二司の諫めを拒みて動く色見えざりければ、日の出の守も春姫も、巌を射抜く春日姫の固き決心に感歎し、三人の司は相携へて長白山を下り、東、西、南の三方に宣伝歌を謡ひつつ袂を別ちたりける。
(大正一一・一・一七 旧大正一〇・一二・二〇 嵯峨根民蔵録)
(第一一章~一二章 昭和一〇・一・二八 於筑紫別院 王仁校正)
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