諾冊二尊は撞の大御神を豊葦原の瑞穂国の大御柱となし、自らは左守・右守の神となって、漂える大海原を修理固成し、各国魂を任命して完全な神国を一時は樹立した。
しかし天の益人は次第に生まれ増して、ついに優勝劣敗、弱肉強食の暗黒世界となり、その混乱は国祖ご退隠の前に比べて何十倍にも達した。
人間というものがここに生まれて、土地を独占するようになった。そして互いに争奪を試み、強いものが弱いものを倒し、武器を製造し金銀を掘り出し、貧富の差は激しく、さながら修羅の世界を現出した。
神々も人々も、救世主の出現を待ち望む世になった。人間の中でももっとも虐げられた者の中から、埴安彦神・埴安姫神の二神が現れ、吾久産霊(わくむすび)なる仁慈の神々を多く率いて、救いの道を宣伝した。そして水波廼女(みずはのめ)すなわち正しい人間を救うことになる。
また、諾冊二尊がこの混乱に際して、各地の国魂に命じて曲津神を武力で掃討しようとした御神業を、「御子迦具槌の神の御首を斬り給う」というのである。