ウラル山の麓アーメニヤに勢力を振るったウラル彦は、大洪水に大神の大慈大悲に救われ、アルタイ山で蟻の責め苦を受けて一時は改心した。しかし年月を経るにしたがって再び、ウラル彦夫婦は色食の道に耽溺し、大蛇の霊魂に憑依された。
大洪水によって活動を抑えられていた悪霊たちも、世が泰平となり人の心が馴れるにしたがって、再び跋扈跳梁するようになってしまった。
盤古神王を偽称したウラル彦は、大中教という教えを興した。これは極端な個人主義、利己主義の教えである。
自分ひとりを中心とする、というもともとの意義は、ウラル彦のみを世界の最大主権者と認める、というものであった。しかしこれもまた大中教の宣伝使たち自身によって誤解され、自分ひとりを中心とする、利己主義の教えとなってしまった。
大中教は葦原の瑞穂国(地球上)に広く行き渡った。
アーメニヤの都の南にカイン河という広い河が流れている。そのほとりで、乞食たちが盤古神王(=ウラル彦)と大中教の利己主義のやり方に不平を語らいあっていた。
そこへ盤古神王の手下の目付がやってきて、乞食たちの話の内容を問いただした。目付たちは、盤古神王の悪口を言うものを捕らえて危害迫害を加えていたのである。
乞食の一人が耳が聞こえない振りをして滑稽な応答で返し、その場をごまかして目付を退散させた。