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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第8篇 五伴緒神よみ(新仮名遣い)いつとものおのかみ
文献名3第45章 大歳神〔295〕よみ(新仮名遣い)おおとしのかみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-26 18:02:17
あらすじ
田植えの最中に喧嘩をしていた男・虎公は、中でも図抜けた大男で大食らいであった。早苗饗祭でも酒を飲んでウラル教の歌を歌い、他愛ない口争いをしていたが、雲路別はウラル教の替え歌を節面白く歌ってたしなめた。

この歌の節に一同は踊り狂って喜び、祝宴は無事に終わった。

宣伝使たちがこの村に三五教と農業の改善を伝えたため、以降村では年々豊作が続くことになった。雲路別は百姓の神と尊敬され、ついには大歳神となった。

虎公は力が強く、醜悪な面相であったが、至って正直な男であった。広道別の弟子となり、宣伝使にしたがってローマをはじめ、世界の宣伝に努めた。ついに立派な宣伝使となり、天岩戸開きの際には岩戸を押し開いた手力男神となった。
主な人物 舞台御年村 口述日1922(大正11)年01月24日(旧12月27日) 口述場所 筆録者藤原勇造 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版273頁 八幡書店版第1輯 724頁 修補版 校定版274頁 普及版113頁 初版 ページ備考
OBC rm0645
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本文  二人の宣伝使の、骨身を惜しまぬ昼夜の勤労にて、思ひの外田植も楽に片付いた。ここに村内を取締る最も広き熊公の家を開放し、早苗饗祭の祝宴が開かれた。さうして村中の百姓は、命の洗濯ぢや、睾丸の皺伸ばしぢやと云つて、神酒を頂き、餅や団子に舌鼓を打つて歌ふ。
 このとき丑寅と自称した虎公は、一座の中でも図抜けた大きい男である。酒を二升や三升呑ンだつて、顔の色ひとつ変へぬ豪のものである。獅子舞の様な大きな口を開けて、餅や団子を三つ四つ一度につまんでは口の中へ投りこみ、唇を締めるとたんに、ぐうと音をさせて平げる。実に健啖家である。飲ンでは食ひ、飲ンでは食ひ、さすがの酒豪もそろそろ酔がまはり、気が浮いたとみえて唸り始めた。牛飲馬食といふは、自称丑寅の金神から始まつたのだらう。丑寅の自称金神は大口を開けて、砂糖屋の十能の様な平たい大なる掌をピシヤピシヤ叩きながら、牛や虎の吼える様な声を出して、
虎公『飲めよ騒げよ一寸先や闇よ、闇の後には月が出る』
と歌ひはじめた。数多の百姓どもは、眼を円くし、口を尖らし、
『貴様は怪しからぬ事をいふ、言ひ直せ歌ひ直せ』
と口々に云つた。虎公は一切かまはず又も、
『飲めよ騒げよ一寸先や闇よ』
と歌ひ出した。田吾作は躍起となり、
『コラ、オイ、虎、こんな目出度い処で、ウラル彦の宣伝歌を歌ふちう事があるものか。云ひ直せ、云ひ直せ、諾かぬと此村を除ねられてしまふぞ』
虎公『除ねるなら除ねるがえー、俺もまた飛ねる……這うて出てはねる蚯蚓や雲の峰……もうこの土臭い村を這ひ出る覚悟だ』
杢兵衛『虎、貴様は蚯蚓見たやうな奴だ。そんな誤託を並べると蛙飛ばしの蚯蚓切りさまの御集まりの座だぞ。手斧鍬でちよん切つてしまつてやらうか』
 泥酔者の他愛なき、この酒の上の問答を聞いてゐた宣伝使の雲路別は、一座の機嫌を直すべく手を拍つて歌ひ始めける。
『飲めよ騒げよ一寸先や神よ  神の恵みを喜びて
 汗を流せよ脂を搾れ  汗や脂は酒となる
 稼ぎに追ひつく貧乏なし  稼げば闇の夜はない
 何時も月夜に米の飯  飲めよ騒げよ心地よく
 飲ンで働け汗をかけ  汗と脂は酒となる
 神に供へたこの神酒は  命を延ばす御薬よ
 毒も薬となる世の中に  あまり薬を飲み過ぎて
 毒とならない程度で止めよ  善と悪とを立別ける
 神が表に現はれて  働く吾らの保護をする
 働く吾らの保護をする』
と節面白く、口から出任せの歌を歌つて、舞うて見せた。一同はこの歌を聞いて非常に喜び、又もや立つて踊り狂うた。虎公も、田吾作も、杢兵衛も、熊公も、一同は酒の上の争論も、サラリと醒めてしまつて、互に手を取り合つて勇ましくこの祝宴を閉ぢにける。
 二人の宣伝使はこの御年村の百姓に、大神の宣示を伝へ、かつ農業の改善を教へた。それより年々収穫おほく豊年が続くことになつた。村人は喜んで雲路別天使を、百姓の神様と尊敬したり。遂に雲路別は農業の道を奨励し、三五教の教理を説き、茲に大歳神となりにける。
 虎公は膂力衆に勝れ醜悪なる面相に似ず、いたつて正直な男であつた。これより広道別の弟子となり、宣伝使の後に従ひローマの都をはじめ、その他世界の宣伝に努めた。この虎公はおひおひ宣伝使に感化されて心魂ますます清まり、つひに立派なる宣伝使となりたり。天の岩戸の変に際し、岩戸を押し開けたる手力男神はこの男の後身なりける。
(大正一一・一・二四 旧大正一〇・一二・二七 藤原勇造録)
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