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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第8篇 五伴緒神よみ(新仮名遣い)いつとものおのかみ
文献名3第50章 大戸惑〔300〕よみ(新仮名遣い)おおとまどい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-07-04 13:21:35
あらすじ
元照別は宣伝使たちを城の高殿に招き、豪華なご馳走でもてなした。

出雲姫は、強者に搾取されている民衆の様子を思うと、もったいなくてこのようなご馳走を食べるわけにはいかない、と高殿から膳を城の堀に投げ込んでしまった。

広道別もまた同様に、元照別に戒めの言葉をかけながら、膳を投げ捨ててしまった。

元照別はただ、己の身を恥じて、うつむいて涙を流すのみであった。

岩彦と熊彦は広道別、出雲姫に遠慮しながらも、出された膳をすっかり平らげてしまった。

出雲姫は、元照別の誕生を祝す、といって歌い舞い始めた。その歌には、元照別の戒めと、神の道への立ち返りが歌い込められていた。

宣伝使たちの実地的訓戒により、心ならずもウラル彦の強圧に服していた元照別夫婦は改心し、伊弉諾大神の神政に参加することとなった。

元照別、元照姫は、誰言うとなく、大戸惑子神、大戸惑女神といわれることになった。

出雲姫の歌舞曲に広道別は知らず立ち上がり、高殿の欄干に身を預けて見とれていたが、たちまち手すりは音を立てて崩れ、眼下の堀に落下してしまった。その寒さに震えて気がつけば、王仁は高熊山の方形の岩の上に、寒風にさらされていた。

道の栞り

天帝は、瑞の霊に限りなき直日魂を与え給うた。

そして、暗い世を照らし、垢を去り、泥を清め、鬼を亡ぼさしめるために、瑞の魂を深い御心によって降し給うたのである。

天国に救われようと欲する者は救われる。

瑞霊に叛く者は、自ら亡びを招くことになるのである。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月24日(旧12月27日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版302頁 八幡書店版第1輯 734頁 修補版 校定版303頁 普及版126頁 初版 ページ備考
OBC rm0650
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本文  宣伝使の一行は役人の案内につれ、悠々として奥殿に導かれた。元照別は愴惶として出迎へ、畳に頭を擦りつけながら、
『曇り果てたる汚らはしい身魂の、吾々の願ひをよくも聞き届け下さいました。サアサアこれへ』
と自ら先に立つて見晴しのよい高楼に導きけり。宣伝使は二人の大男を伴ひ高楼に登りて見れば、山野河海の珍肴美酒は所狭きまでに並べられありき。而して元照別は二人の宣伝使を正座に導き、
『清き御教示は後刻ゆるゆる拝聴仕ります。まづ御食事を取らせられよ』
と誠実面に現はれて着坐を勧める。広道別天使は、
『然らば御免』
と設けの席につき、二人の大男も末座に着席したり。出雲姫はなまなまに設けの席につき、
『コレハコレハ、元照別殿、随分贅沢な御馳走でござる。妾は世界の青人草の憂瀬に沈み、木葉を喰ひ木の根を嘗めて、わづかにその日の生活を続けてゐる悲惨の状態を目撃いたして居りますれば、妾は斯くの如き珍味を長の年月見たこともありませぬ。大宜津姫神の世とは申しながら、実に呆れ果てた次第であります。しかし折角の思召なれば喜ンで頂戴いたします。かくのごとき御馳走は、吾々の口には勿体なくて頂くことが出来ませぬから、鳥獣にも魚にも分配をいたします』
といふより早く、高楼より眼下の深堀に向つて、自分に与へられたる膳部一切を、バラバラと投げ込んで了つた。元照別は顔赧らめ、物をも言はず、差俯き涙をホロホロと流すのみ。広道別天使はこの珍味を食ひもならず、又もや、吾も衆生に分配せむといひながら、眼下の堀を目がけて惜気もなく投げ捨てて、元照別にむかひ、
『かかる珍味を吾々が頂くよりも、一切の衆生に分配いたした方が、何ほど心地がよいか分りませぬ。甘い、美味い、味ないは、喉三寸通る間のこと、幸今日は貴下の御誕生日と承る。一国一城の城主の御身分として、一切の衆生に恩恵を施したまふは、民に主たるものの勤めらるべき大切なる御所行と察し参らす。吾々もお芽出度く、衆生も貴下の誕生を喜び祝する事でありませう』
と言ひ終つて元の座に復した。岩彦や熊彦はこの珍味を前に据ゑられて、喰ふには喰はれず、負けぬ気を出して自分も眼下の堀を目がけて投げ捨てむかと、とつ、おいつ思案はしたが、どうしても喉がゴロゴロ言ふて仕方がない、そこで岩彦は一同に向ひ、
『私も一切の衆生になりかはり、有難く頂戴いたします』
といふより早く、大口を開いて食ひ始めた。熊彦も、
『拙者も、ちよぼちよぼ』
と言ひながら、沢山の飲食をケロリと平げてしまつた。出雲姫は立つて歌を歌ひ、誕生を祝するためと舞ひ始めたり。
『世は常闇となり果てて  御空をかける磐船や
 天の鳥船舞ひ狂ひ  月日は空に照妙の
 美々しき衣に身を纏ひ  山野海河隈もなく
 漁り散らしてうましもの  横山のごとく掻き集め
 驕も深き大宜津の  姫の命の世となりて
 手繰になります金山の  彦の命や金山の
 姫の命の現はれて  世人害なふ剣太刀
 大砲小銃や簇まで  造り足らはし遠近に
 鎬を削る浅ましさ  怪しき教はびこりて
 世人の心迷はせつ  元照別の司まで
 大戸惑子の神となり  この世はますます曇り行く
 曇る浮世を照らさむと  雲路を出でて出雲姫
 ここに現はれ神の道  広く伝ふる広道別の
 貴の命と諸共に  縦と横との十字街
 現はれ来る時もあれ  群がりおこる叫び声
 耳を澄して聞きをれば  ウローウローの声ならで
 ほろふほろふと聞えけり  滅びゆく世を悲しみて
 九山八海の山に現れませる  天の御柱大神は
 世を平けく安らけく  治めまさむと埴安彦の
 貴の命や埴安姫の  貴の命に事依さし
 三五教を開かせて  神の教の宣伝使を
 四方の国々間配りつ  大御心を痛めます
 神の御恵み白雲の  外に見做して大宜津姫の
 神の捕虜となりおほせ  下民草の苦しみも
 知らぬが仏か鬼か蛇か  あゝ元照別の城主どの
 あゝ元照姫のおかみさま  今日の生日の足日より
 身魂を立替へ立直し  神を敬ひ民草を
 妻子のごとく慈しみ  天と地との大恩を
 悟りて道を守れかし  人を審判くは人の身の
 なすべき業に非ざらめ  下を審判くな慈しめ
 下がありての上もあり  上がありての下もある
 上と下とは打ち揃ひ  力を合せ村肝の
 心を一つに固めつつ  世の曲事は宣直し
 直日の御霊に省みて  神の心に叶へかし
 清き心を望の夜の  月に誓ひていと円く
 治めて茲にミロクの世  神伊弉諾の大神の
 御楯となりて真心を  尽せよ尽せ二柱
 尽せよ尽せ二柱』
と厳粛に荘重に謡つて舞ひ納め座につきぬ。
 ここに元照別夫婦は、今までウラル彦の圧迫によりて、心ならずも体主霊従の行動を続けつつありしが、今この二柱の宣伝使の実地的訓戒によつて、自分の薄志弱行を恥ぢ、一大勇猛心を振興して神政を根本的に改革し、大御神の神示を遵奉し、伊弉諾の大神の神政に奉仕する事となりぬ。この二神の名は遠近誰いふとなく、大戸惑子神、大戸惑女神と称へられゐたりける。
 広道別は出雲姫の涼しき声とその優美な舞曲に心を奪はれ、知らず識らず吾席を立ちて高楼の欄干に手をかけ見惚れゐたり。たちまち欄干はメキメキと音するよと見る間に、広道別天使の身体は眼下の深き堀の中にザンブと陥ち込みた。その寒さに震うて気がつけば、豈図らむや、王仁の身は高熊山の方形の岩の上に寒風に曝されゐたりけり。
(大正一一・一・二四 旧大正一〇・一二・二七 加藤明子録)
(第四〇章~第五〇章 昭和一〇・二・一七 於奈良菊水旅館 王仁校正)


道の栞

天帝は瑞の霊に限り無き直霊魂を賚ひて、暗き世を照らし、垢を去り、泥を清め、鬼を亡ぼさしめむ為に、深き御心ありて降し玉へり。天国に救はれむと欲する者は救はれ、瑞霊に叛く者は自ら亡びを招くべし。
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