日の出神を乗せた大船は、熊野の浦を出て東に進んでいた。東海には天教の山を望む、のどかな船旅であった。
たちまち高波に船は木の葉のように漂う危うさ。天教の山もいつしか雲に包まれてしまった。船は難を避けようと、三保の松原目当てに岸に着いた。
人々は岸に上ったが、波はたけり狂って、羽衣の松もほとんど水に没しようという勢いであった。みな小高い丘にかけのぼり、海が凪ぐのを待っていた。そこへ、微妙の音楽が天上より聞こえて、かぐわしい色々の花が降ってきた。
男女の二神が雲に乗って降ってきた。日の出神に会釈をすると、声を張り上げて歌い、天女の舞を舞い始めた。
二神は三保津彦・三保津姫の分霊である、沫那岐神・沫那美神であった。邪神は大台ケ原を出て常世の国に巣食っており、日の出神が常世の国に渡るべきことを告げ、その旅路の守護を申し出た。
二神は舞い終わると、天教山に向かって姿を隠した。これより、日の出神は艱難辛苦の末に、再び常世の国にわたることになった。