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文献名1霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
文献名2第5篇 亜弗利加よみ(新仮名遣い)あふりか
文献名3第25章 建日別〔325〕よみ(新仮名遣い)たけひわけ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-06 18:49:40
あらすじ
三人の宣伝使は、阿弗利加の絶景に足を止めて景色を眺めていた。面那芸は谷底になにやら唸り声を聞いて、日の出神に注意を呼びかけた。

日の出神は奇妙な声を目当てに進んでいく。面那芸と祝姫は後からついていく。やや歩いていくと、大岩石が谷間に屹立し、巨大な岩窟があちこちにうがたれた場所があった。

そこには顔の黒い男たちが、一人の青白い眼の悪い男(小島別)を取り巻いて、しきりに脅しをかけている。黒い男たちは、ここは大自在天・常世神王の家来・荒熊別の領分であるとし、三五教の宣伝をした廉で、青白い男を罪に問うていた。

青白い男は負けずに宣伝歌を歌いだす。その声に周りを取り巻いていた黒い男たちはたまらず、大地にかぶりつく。そこへまた、森林の中から宣伝歌が聞こえてきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月01日(旧01月05日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月31日 愛善世界社版154頁 八幡書店版第2輯 89頁 修補版 校定版160頁 普及版65頁 初版 ページ備考
OBC rm0725
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本文  大海原を撫で渡る  科戸の風の吹き廻し
 常世の波の重波の  寄せ来る儘に思ひきや
 筑紫島なる亜弗利加の  広き陸地に着きにけり
 暗世を照らす天津日の  光を浴びて照妙の
 衣を捨てて蓑笠の  身装も脚もいと軽く
 崎嶇たる山を登り来る  ここに一条の急潭は
 怪しき巌と相打ちて  激怒突喊飛ぶ沫の
 万斛の咳咤を注いで  怪岩の面を打てば
 巌はその奇しき醜き  面を背けて水は狂奔する
 奇絶壮絶勝景の  谷間の小径に差懸る
 春とはいへど蒸暑き  日に亜弗利加の山の奥
 暫時木蔭に佇みて  この光景を三柱の
 名さへ芽出度き宣伝使  飛瀑の声と相俟つて
 壮快極まる宣伝歌  天地の塵を払拭し
 山野を清むる如くなり。
 三柱の宣伝使は、この谷川の奇勝を眺め、日の出神は、
『あゝ実に天下の絶景だ。吾々も宣伝使となつて、天下を横行濶歩して来たが、未だ嘗て見ざる壮快な景色である。山といひ、谷川といひ、実に吾々の心境を洗ふやうな心持がするね』
祝姫『左様でござります。長い間波の上の生活を続けて、少々勿体ないこと乍ら飽き気味になつてゐましたが、世界はよくしたものですな。かう云ふやうな天下の奇勝を見ることの出来るのも、全く神様の御引合はせ。旅は憂いもの、辛いものと申せども、宣伝使でなくては到底かう云ふ絶景を見ることは出来ない。吾々は神様に感謝を捧げねばなりますまい』
面那芸『あゝ時に何だか谷底に流れの音か、猛獣の呻き声か、人の叫び声か、はつきり分りませぬが妙な響がするではありませぬか』
 日の出神は、衝と立つて耳を澄しながら、
『はー、如何にも何だか合点のゆかぬ唸鳴り声ですな。何は兎もあれ、私はその声を目標に調べて来ませう。貴使は此処に暫く待つてゐて下さい』
 二柱は口を揃へて、
『いや、吾々も御伴いたしませう』
日出神『然らば私が一歩先に参ります。貴下は見え隠れに跟いて来て下さい。万一の事があれば合図を致しますから、こちらが合図をするまで、出て来てはなりませぬぞ』
と云ひながら、日の出神は谷深く声を捜ねて進み行く。
 行くこと二三町斗り、此処には見上ぐるばかりの大岩石が谷間に屹立し、五六尺もある大なる巌窟が、彼方にも此方にも、天然に穿たれあり。髪の毛の赤い、顔の炭ほど黒いやや赤銅色を帯びた数多の男が、幅の分厚い唇を鳥の嘴のやうに突出した奴数十人安座をかいて、一人の色の蒼白い少しく眼の悪い男を中に置いて何か頻に揶揄つてゐる。日の出神は、木蔭に身を忍ばせこの様子を聞き入つた。
『やい、貴様は三五教の宣伝使とか、何とか吐かしよつて、この島に案内も無く肩の凝るやうな歌を歌つて参り、俺らの一族を滅茶々々にしよるのか。此処を何と心得てをる。勿体なくも常世の国の常世神王様の御領分だぞ。それに貴様は大きな面を提よつて、この世が変るの、善と悪とを立別けるのと、大きな喇叭を吹きよつて何のことだい。もうこれ限り宣伝使を止めて、俺らの奴隷になればよし。ならなならぬで是から成敗をしてやる。返答せい』
 一人の男は、少しも屈せず四辺に響く声を張上げて、
『神が表に現はれて 善と悪とを立別る』
『こら、しぶとい奴だ。未だ吐かすのか。おい、皆の奴、石塊を持つて来い。此奴の口を塞いでやらうぢやないか』
『おい、宣伝使、此処は畏れ多くも常世国に現はれました伊弉冊命様が、常世神王といふ偉い神様を御使ひになつて、その御家来の荒熊別といふ力の強い御威勢の高い神様が、御守り遊ばす結構な国だぞ。此処の人間は毎日々々、神様の御蔭で、一つも働かず無花果の実を食つたり、橘や、橙その他の結構なものを頂いて、梨の実の酒を醸つて「呑めよ騒げよ一寸先や暗よ、暗の後には月が出る」と日々勇ンで暮す天国だ。それに何ぞや、七六ケ敷い劫託を列べよつて、立替るも立別るもあつたものかい。さあ、これから皆寄つて此奴を荒料理して食つて了つてやらうかい』
『やい、そんな無茶をするない。此奴は剛情我慢の奴だが、併しあの細い目から恐ろしい光を出して居るぞ。何でも天から降つて来た神さまの化物かも知れやしない。うつかり手出をしたら、罰が当るぞよ』
『気の弱いことを言ふな。吾々は伊弉諾神様の立派な氏子だ。天から降つたか、地から湧いたか知らぬが、こンなものの一疋位にびくびくするない』
 一人の男、声を張上げて、
『神がこの世に現はれて  善と悪とを立別ける
 天地四方の国々や  島の八十島八洲国
 教を開く宣伝使  神の恵みも大島や
 小島の別の神司  眼は少し悪けれど
 汝の眼に映らない  心の眼は日月の
 光に擬ふ小島別  わけも知らずに言さやぐ
 醜の曲津の集まれる  虎狼や鬼大蛇
 熊襲の国の山の奥  山路を別けて進み来る
 われは汝の助け神  世は常暗の熊襲国
 残る隈なく照らさむと  綾の高天を立出でて
 心のたけの建日別  神の命と現はれて
 この国魂と天津日の  神の命のよさしなり
 神の命のよさしなり  荒ぶる神よ醜人よ
 善と悪とを立別る  誠の神の神勅』
と歌ひ始むるや、一同は耳を塞ぎ、目を閉ぢ、
『やあ、こいつは堪らぬ』
と大地にかぶりつく。この時またもや、森林の中より宣伝歌が聞えきたりぬ。
(大正一一・二・一 旧一・五 外山豊二録)
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