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文献名1霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
文献名2第5篇 亜弗利加よみ(新仮名遣い)あふりか
文献名3第26章 アオウエイ〔326〕よみ(新仮名遣い)あおうえい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-07 19:20:46
あらすじ黒い男たちに責められていた青白い男は、元竜宮城の司であった小島別であった。今は三五教の宣伝使となっていたのである。小島別は宣伝歌に苦しむ男たちに、大喝一声『赦す』とかけると、男たちの頭痛はぴたりと止まった。黒い男たちは大地に両手を突いて謝罪の意を表した。小島別は諄々として三五教の教理を説きはじめた。男たちは感に打たれて小島別の説教を聞いている。すると、岩窟の奥から何ともいえぬうめき声が聞こえてきた。岩窟の中から白い怪しげな影がぼんやりと現れ、不思議な声で、ここは八頭八尾の大蛇の隠れ家であるぞ、と怒鳴りたてた。小島別は単身、言霊でこの声に立ち向かった。岩窟の声は、八岐大蛇の大棟梁・蛇々雲彦と名乗った。小島別は一歩もひかず、勇ましく邪神の声に切り返す。しかし邪神の声は案に相違して、小島別が竜宮城時代に四天使の邪魔をして、国祖の神業を妨害した行いをあげつらい、非難を始めた。小島別ははっと胸を打たれて思案に暮れてしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月01日(旧01月05日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月31日 愛善世界社版161頁 八幡書店版第2輯 92頁 修補版 校定版167頁 普及版68頁 初版 ページ備考
OBC rm0726
本文のヒット件数全 2 件/身魂=2
本文の文字数1978
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本文  小島別は尚も進むで宣伝歌を歌ふ。数多の人々は息を凝し一言一句その歌に胸を刺さるる如く、苦しみ呻き冷汗淋漓として雨の如く、滝の如くに流し、焦暑さと宣伝歌に責められて、頭はますますガンガンと痛み出したり。小島別は大喝一声、
『赦す』
と声をかくれば、諸人はその声を聞くと共に頭痛はぴたりと止まり、忽ち各自は大地に両手を突き、犬突這となりて謝罪の意を表したりける。
 小島別は眼を擦りながら、諄々として三五教の教理を説きければ、いづれの人々も感に打たれて恐れ入り、宣伝使の顔を穴のあくほど眺め入りぬ。このとき巌窟の奥より何とも云へぬ呻き声聞こえきたる。人々は耳を聳立て眼を見張り、期せずして巌窟の方に向き直れば、奥深き暗き巌窟の中より茫然として白き怪しき影が、蚊帳を透して見るが如くぼんやりと現はれ、不思議な声にて、
『アハヽヽハー。オホヽヽホー。ウフヽヽフー。エヘヽヽヘー。イヒヽヽヒー。腰ぬけ野郎、屁古垂野郎、ばばたれ野郎、ひよつとこ野郎、弱虫、糞虫、雪隠虫、吃驚虫ども、とつくりと聞け。ここは何と心得てゐるか。勿体なくも常世国に現はれ玉へる、国の御柱大御神伊弉冊命のその家来、常世神王の隠れ場所と造られし、一大秘密の天仙郷、この八つの巌窟は、八頭八尾の大蛇の隠れ場所ぞ。その眷属の貴様たちは、たつた一人の宣伝使小島別の盲どもの舌の先にちよろまかされ、木の葉に風の当りしごとく、びりびり致す腰抜け野郎、馬鹿ツ、馬鹿々々々々ツ』
と呶鳴り立てたれば、数多の黒坊はこの声に二度吃驚、
『ヒヤツ! こいつは耐らぬ』
と亦もや大地にべたりと倒れる。小島別は巌窟に向ひ両手を組み「惟神霊幸倍坐世」と唱へながら、
『我々は、畏れ多くも天教山に現はれ給へる撞御柱大御神、天御柱大御神、木花姫の神教を開かせたまふ黄金山下の三五教の守神、埴安彦神の宣伝使小島別なるぞ。何者ならば断りもなく筑紫の島に打ち渡り、この巌窟に巣を構へ、悪逆無道の限りを尽し、天命つひに免れ難く、この巌窟に忍び入るこそ汝悪神の運の尽き。早く汝が素性を名乗り、悪を悔ひ善に立ちかへり、撞御柱大神に心の底より謝罪せよ。否むに於ては我に天授の宝剣あり。サア如何ぢや。抜いて見せうか抜かずに置かうか。醜の曲津見返答致せ』
 巌窟の中より亦もや、
『アハヽヽハー阿呆につける薬はないワイ、オホヽヽホー臆病者の空威張り奴、ウフヽヽフー迂濶者の世迷ひ言、エヘヽヽヘー得体の知れぬ宣伝使、イヒヽヽヒー行きつきばつたりの流浪人、吾は熊襲の大曲津神、曲つた事は大の好物、汝が頭のど天辺から塩でもつけて噛ぶつて喰はうか、股から引き裂いて炙つて喰はうか、八岐の大蛇の大棟梁、蛇々雲彦とは吾事なるぞ。返答聴かう、小島別の宣伝使』
と四辺に響く大音声に呶鳴りつけたれども、小島別は莞爾として、
『アハヽヽアー熊襲の国の枉津神、味をやり居るワイ。正義に刃向ふ刃は無いぞ。善と悪とを立別る神の使の宣伝使だ。真澄の鏡に照されて、赤耻掻き頭を掻いて吠面かわくな。かく申す某は、天教山に名も高き神伊弉諾大神の遣はせ玉へる、心も膽も天下無雙の太柱、太い奴とは俺の事、喰ふなら見事喰つて見よ。古手な事をして泡を喰ふな』
 巌窟の中より、
『アハヽハー仇阿呆らしいワイ。オホヽホー脅喝文句のお目出度さ。ウフヽフー迂濶者の迂濶事、熱に浮かされてうさ事を吐くな。エヘヽヘー豪い元気だのう、閻魔も裸足で逃げやうかい。イヒヽヒー勢ばかり強うても心の弱味は見え透いた。イヒヽー憐愍いものだ。いま俺の手にかかつて寂滅為楽頓生菩提、一寸先の見えぬ盲ども、これを思へば憐愍うて涙が溢れる。アハヽハー悪の身魂の年の明きとは貴様の事、悪の栄える例はないぞ。イヒヽヒーいつまで身魂が磨けぬか。オホヽホー己の事は棚に上げ、人を悪い悪いと慢心いたして其権幕は何の事だい。ウフヽフー動きの取れぬ今日の首尾、迂濶出て来た偽宣伝使。エヘヽヘー枝の、末の、貧乏神、腰抜け野郎の分際で、常世の国に使ひして、言霊別に騙されて、竜宮城に帰つて何の態。イヒヽヒー何時まで経ても改心せぬか、心の岩戸は何時開く、一度に開く梅の花、善に見えても悪がある。悪に見えても善がある。善と慈悲との仮面を被り、吾物顔に天下を横行濶歩する小島別の偽宣伝使。この世の中の穀潰し、生て益なき娑婆塞ぎ、地獄の釜のどン底に落してやらうか小島別、常世姫に玉抜かれ、言霊別に力の限り根限り、邪魔をひろいだ盲者の張本、何の面提げて臆面もなく三五教の宣伝使。アハヽハー、ほンに世界は広いものだなあ、オホヽホー、ウフヽフー、エヘヽヘー、イヒヽヒー、』
と又も笑ひ出したり。
 小島別は胸に鎹打たるる心地、ハツと胸を衝いて思案に暮れゐたりける。
(大正一一・二・一 旧一・五 加藤明子録)
(第一九章~第二六章 昭和一〇・二・二三 於徳山市松政旅館 王仁校正)
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