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文献名1霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
文献名2第5篇 亜弗利加よみ(新仮名遣い)あふりか
文献名3第28章 不思議の窟〔328〕よみ(新仮名遣い)ふしぎのいわや
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-06 19:06:02
あらすじ
強烈になる岩窟の唸り声に、小島別はほとんど失神状態で、大地に仰向けに倒れて震えていた。

日の出神は合図すると、祝姫と面那芸が現れた。三柱の宣伝使は岩窟の前に現れると、面那芸は石を持って拍子をとり、祝姫は白扇を手に広げて舞い始めた。

祝姫が岩窟の神を鎮める歌を歌うと、大音響はぴたりと止まった。すると小島別はむっくと起き上がり、三柱の宣伝使の姿を見て驚いた様子であった。

日の出神は小島別に、さいぜんの岩窟の唸り声はどうしたことかと問いかけた。

小島別は語って曰く、一ケ月ほど前に阿弗利加に渡り、立派な岩窟の噂を聞いて参拝に来たが、常世神王を奉じる人間ばかりなので、三五教の宣伝歌を始めたところ、参拝者たちに迫害を受けた。そうしたところ、岩窟の奥から不思議の姿が現れて自分の弱点を並べ立てられてきつく油を絞られたのだ、と概略を語った。

日の出神は厳然として、ここは尊い神様の隠れ家で、建日別という仮の御神名をお持ちだが、本当の御神名は時が来れば明らかになるであろう、と述べた。

そして小島別に、この岩窟の前に純世姫命の御魂を祭って熊襲の国の人民を守るように任命した。小島別はこれより、岩窟の神の名を取って建日別と名乗り、日の出神の任を受けることになった。

日の出神は満足の色を表し、三柱の宣伝使は谷間を登って進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月01日(旧01月05日) 口述場所 筆録者高木鉄男 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月31日 愛善世界社版175頁 八幡書店版第2輯 97頁 修補版 校定版181頁 普及版75頁 初版 ページ備考
OBC rm0728
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本文  巌窟内の唸り声は刻々強烈となり、百千万の虎狼の一時に吼え猛るが如く、四辺の山々も木草も凡て一切のものを戦慄せしめたり。小島別は殆ど失神の状態にて、大地に仰向けに倒れたるまま、手足をビクビク慄はせ居たりける。日の出神は、
『オーイ、オーイ』
と合図をすれば、この声に応じて何処よりともなく祝姫の宣使と面那芸の宣使は現はれきたり、ここに三柱は小島別の倒れたる巌窟の前に立ち現はれ、日の出神は歌を歌ひ、面那芸の宣使は石と石とを両手に持ち拍子を取り、祝姫は日蔭葛を襷に掛け、常磐の松を左手に携へ右の手に白扇を広げ舞ひ始めたり。
 祝姫の歌、
『天と地との火と水の  呼吸を合せて国治立の
 神の命の造らしし  心筑紫の神の島
 大海原を取囲み  浦安国は豊の国
 熊襲の国は神の園  常磐堅磐に築立てし
 天の岩戸は是なるか  国治立の大神は
 心の汚き八十神の  曲神の企みの舌の根に
 懸らせ玉ひて天津神  日の大神の戒めを
 受けさせ玉ひて根の国に  退はれませど皇神は
 何も岩戸の奥深く  隠れ玉ひて世を忍び
 天地四方の神人の  身魂を永遠に守ります
 その勲功は千代八千代  常磐の巌の弥堅く
 穿ちの巌の弥深く  忍ばせ玉ふこれの巌
 忍ばせ玉ふこれの巌  岩戸を開く久方の
 天津日の出の神言を  堅磐常磐に宣る神は
 日の出神と祝姫  面那芸彦の三柱ぞ
 浮船伏せて雄々しくも  踏み轟かす巌の前
 神の小島の宣伝使  建日の別と現はれて
 天の三柱大神の  任のまにまに上り来る
 されど心は常暗の  未だ晴れやらぬ胸の闇
 心の岩戸は締め切りて  開かむよしも無きふしに
 恵も深き国治立の  神の命の分け魂
 建日の別の大神は  天の岩戸を開かむと
 導きたまふ親心  神の心を不知火の
 小島の別の宣伝使  千々の神言蒙りて
 心に懸る千万の  雲霧払ひ晴れ渡る
 御空に清く茜さす  日の大神の御恵みに
 常世の暗も晴れぬべし  赦させ玉へ建日別
 熊襲の国の守り神  人の心も清々と
 誠の道に服従ひて  心安らけく純世姫の
 神の命の御魂をば  これの巌窟に三柱
 千木高知りて斎かひつ  天津祝詞の太祝詞
 宣るも尊き巌の前  日の出神の言霊を
 建日の別も諾なひて  御心和め玉へかし』
と涼しき声を張上げ調子よく歌ひながら、汗を流し帰神して舞ひ狂ひける。面那芸神は石と石とを打ち合せて面白く拍子をとりしが、さしも猛烈なりし巌窟の大音響は夢のごとくに止まりにける。小島別はムツクと立上がり細き目を開きながら三柱の神を眺めて驚き、夢か現か幻か、合点の行かぬこの場の光景と、自ら頬を抓めり指を噛み、
『アヽ矢張り夢では無かつたかナア』
 日の出神は、
『オー貴下は小島別の宣伝使、最前よりの貴下の様子、如何にも怪しく何事ならむと、木蔭に佇み聞きをれば此巌窟の唸り声、如何なせしやその顛末を詳細に語られよ』
と尋ねられ、小島別は三柱の宣伝使に黙礼しながら、
『イヤモウ、大変でしたよ。私は神界に仕へてより、何一つ功名もいたさず、智慧暗き身の悲しさ、大慈大悲の大神の御心を誤解し普く天下を宣伝して、やうやうこの亜弗利加の嶋に参りましたのは一月以前のことであります。国人の話に依れば、此処には立派な巌窟ありて、時々唸りを立てるといふ事。私も一つ修業の為と思ひ、嶮しき山坂を越へ谷を渡りて、漸くこの巌窟に辿り着きし間もなく、色々の国人がこれこの通り参拝いたして、頻りに何事か祈つてをる。耳を澄して聞けば、常世神王の教を奉ずる人間計り、これでは成らぬと背水の陣を張りて、命を的に三五教の宣伝歌を歌ひ始めました。数多の人々は私の宣伝歌を非常に嫌つて四方八方より迫害せむとする。なに、吾々は天地の教を説く神の使の宣伝使だ。たとへ火の中水の底も、潜りて助けるは吾々の天職と、有らゆる勇気を出して漸く彼らを改心させ、ホツト一息吐く間もなく此巌窟の奥の方より異様の姿朦朧と現はれ、「アハヽヽハー、オホヽヽホー」と嘲弄はれ、あらむかぎりの吾々の弱点を並べ立てられ、イヤハヤモウ埒もなくきつく油を搾られました。吾々は未だ身魂が磨けて居りませぬ。いよいよ一つ決心をして、今までの取違を改めねばなりませぬ』
と大略を物語りける。日の出神は厳然として宣るやう、
『ここは尊き神様の御隠家、建日別とは仮りの御神名、やがて御本名を名乗り玉ふ時も来たるべし。貴下は此処へ永らく鎮まりて、この巌窟の前に宮を建て、純世姫命の御魂を祭り、熊襲の国の人民を守つて下さい、吾々はこの山を越えて肥の国に行かねばなりませぬから』
 これを聞くより小島別は、
『如何なる神の御引合せか、思ひ掛なき尊き日の出神様に御目に掛り、こンな嬉しきことはありませぬ。仰せに従ひ大神様の岩戸の神の御名を戴き、これより建日別と改め永遠に守護をいたします。どうぞ御安心下さいませ』
と答へける。日の出神は満足の色を現はし、この場を後に三柱の宣伝使を伴ひ、又もや宣伝歌を歌ひながら、この谷間をドンドン登り行く。
(大正一一・二・一 旧一・五 高木鉄男録)
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