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文献名1霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
文献名2第1篇 智利の都よみ(新仮名遣い)てるのみやこ
文献名3第6章 火の玉〔356〕よみ(新仮名遣い)ひのたま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
清彦は猿世彦と駒山彦を谷間に置き去りにして、自分は谷を降って街道を闊歩していた。黄昏が近づいたところで腰を下ろし、ほっと一息ついていると、猿世彦と駒山彦が、大声で清彦を罵りながら追ってくる。

清彦は、猿世彦と駒山彦が自分が鬼城山で悪事を働いていた過去を暴き立てて宣伝が上手くいかないことを心配し、思わず大声で嘆いた。

猿世彦は清彦の声を聞き取り、辺りを探し始めた。

すると前方から闇を照らして火の玉が飛んできて、清彦の前に墜落した。すると清彦は光を発して、日の出神と少しも違わない姿となって現れた。

猿世彦と駒山彦はあっと言って口をあけたままその場に倒れてしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月06日(旧01月10日) 口述場所 筆録者土井靖都 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年6月15日 愛善世界社版39頁 八幡書店版第2輯 165頁 修補版 校定版41頁 普及版18頁 初版 ページ備考
OBC rm0806
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本文  清彦は猿世彦、駒山彦の二人を、闇の谷間に置き去りにして、自分はコソコソと谷を降り、夜昼大道を濶歩しつつ、智利の都に肩臂怒らし脚を速めけるが、日も黄昏に近づき、疲労れ果てて、路傍の芝生に腰打ち掛けて独語。
『あゝあゝ、とうとう厄介者を撒いてやつた。この広い高砂島だ。滅多に出会すこともあるまい。彼奴ら二人が踵いて居ると、気がひけて仕方がない。日の出神になりすまして居る此方を、清彦と云ひよるものだから、せつかく信仰をした信者までが、愛想をつかす様な事があつては、百日の説法屁一つになつてしまふ。まあまあ、是で一と安心だ』
 夜の帳は下されて、塒に帰る烏の声さへも、聞えなくなりて来たりぬ。このとき闇を縫うて怪しき声聞え来たる。清彦は耳を澄まして聞き入りぬ。
『偽の日の出神の宣伝使。俺ら二人を深山の奥へ、連れて行きよつて、闇に紛れて駆出したる、心の暗い、身魂の悪い、闇雲の宣伝使、もう是からは俺らは声の続く限り、仮令清彦が天を翔り、地を潜らうとも、一人と二人ぢや。二人が力を協して、清彦の欠点を剥いてやらう。オーイ智利の都の人たちよ、日の出神と云ふ奴が現はれて来ても相手にするなよ。彼奴は山師だ。偽物だ』
と呶鳴りながら、闇を破つて行き過ぎる。清彦は吐息を漏らし、
『あーあー、悪い虫がひつ着きよつたものだナア。鳥黐桶に足を突込んだとは、此事だな。今までの清彦なら、彼奴の声を目標に、後から往つて、あの禿頭を目がけ、ポカンとやつてやるのだが、三五教の教理は何処までも、忍ばねばならぬ。腹を立てて神慮に背き、大事を過る様な事があつては、それこそ日の出神様に申訳はない。俺がいま日の出神と云つて、この島へ渡つたのも、決して私の為ではない。日の出神様が、俺の霊魂が守護するから、俺の代りになつて往け、と仰有つたからだ。それだから自分が日の出神といつた所が何が悪からう。清彦といふ名は世界中に、悪い奴だと響いて居る。何んぼ神の道は、正直にしなくてはならなくつても、一つは方便を使はなくては、鬼の様に云はれた鬼城山の清彦では、相手になつて呉れる者もありやしない。それでは人を改心さすことも、神徳を拡むることも、絶対に不可能だ。俺の名を聞くと泣いた児も、泣き止むといふ位、世界に恐怖がられて居るのだから、何処までも日の出神で行かねばならぬ。それにつけても二人の奴、吾々の行く先々を、今の様なこと云つて、歩かれては耐つたものぢやない。アヽ思へば昔の傷が今に報うて来たのか。エヽ残念なことだ』
と思はず大声に叫びゐる。猿世彦は小声で、
『おい駒山彦、的様の声だぜ。何処か此処らに、闇に紛れて潜伏しとるらしいぞ、野郎だいぶ弱りよつたと見えるな。おいもう一つ大きな声で呶鳴つてやろかい』
 このとき前方より闇を照して唸を立てながら、此方に向つて飛び来る火の玉あり、清彦の前に墜落するよと見るまに、清彦は闇中に光を現はして、立派なる日の出神と少しも違はぬ容貌と化したり。二人はあつと云つて口を開けたまま其場に倒れける。
(大正一一・二・六 旧一・一〇 土井靖都録)
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