淤縢山津見は谷底に落ち込んで重傷を負った荒熊を助け出し、鎮魂を施すと、荒熊の負傷はたちまち癒えて元の体に回復した。
荒熊は淤縢山津見の前に両手をつき、命を助けてくれた恩を涙ながらに感謝し、これまでの無礼を謝した。
蚊々虎は自分の威力で荒熊が谷底へ落ちたと得意になってまたおかしな説教を荒熊に垂れている。淤縢山津見がそれをたしなめた。
荒熊は淤縢山津見が醜国別であると認めた。荒熊はかつての醜国別の部下・高彦の後身であった。高彦は、醜国別が帰幽して以来、讒言によって常世神王の元を追い出されて流人となっていたという。
巴留の国は今、鷹取別が厳しく支配し、他国者を寄せ付けないという。鷹取別は、大自在天の部下で、かつては高彦や蚊々虎の同僚であった。荒熊は、自分が高彦であると鷹取別に正体を知られると、また迫害を受ける、と心配している。
蚊々虎は、鷹取別なんか恐くない、吹き飛ばしてやる、俺が貴様を巴留の国の王にするのだ、とまた法螺を吹いて息巻いている。淤縢山津見がそれをたしなめる。