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文献名1霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
文献名2第1篇 長途の旅よみ(新仮名遣い)ちょうとのたび
文献名3第1章 都落〔394〕よみ(新仮名遣い)みやこおち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-16 08:21:30
あらすじ
エルサレムの都で、かつての天使長・桃上彦の三人の娘・松代姫、竹野姫、梅ケ香姫は暮らしていた。ある日梅ケ香姫は、父は珍の国にいると霊夢に感じた。姉妹は密かに屋敷を出て、父の行方を尋ねる旅に出た。

姫たちが屋敷を出たことに気づいた従者の照彦は、急いで後を追って出た。

エデンの渡し場にやってくると、船着場の男たちは遠目に姫たちを見て、その美しさをネタに雑談している。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月12日(旧01月16日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月5日 愛善世界社版5頁 八幡書店版第2輯 277頁 修補版 校定版7頁 普及版2頁 初版 ページ備考
OBC rm0901
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本文  春霞靉靆き初めて山々の  花は匂へど百鳥の
 声は長閑に歌へども  父と母とに別れたる
 その悲しさに掻雲る  心の空も烏羽玉の
 闇夜を辿る思ひなり  世は紫陽花の七変り
 昨日や今日と飛鳥川  淵瀬とかはる人の身の
 誰にかよらむヨルダンの  水永久に流るれど
 長き憂ひに沈みつつ  此世の憂をみはしらの
 姫の心ぞいぢらしき  父と母との懐を
 浮世の風に煽られて  いたいけ盛りの女子が
 淋しき冬の心地して  父に会ふ日を松代姫
 松の緑のすくすくと  栄えて春も呉竹の
 直ぐなる心の竹野姫  露に綻ぶ梅ケ香の
 姫の命の唇を  開いて語る言の葉は
 降る春雨の湿り声  恵も深き垂乳根の
 母は此世を後にして  黄泉路の旅に出でましぬ
 娘心の淋しさに  色も香もある桃上彦の
 父の命の只一人  国の八十国八十島の
 何処の果てにいますとも  恋しき父に廻り会ひ
 探ねむものと三柱の  皇大神を祀りたる
 名残も惜しきヱルサレム  都を後に旅衣
 草鞋に足をくはれつつ  山野を越えて遥々と
 目あてもなつの空かけて  進み行くこそ哀れなり
 主人の君によく仕へ  忠実なりし下男
 心も清き照彦は  姫の姿の何時となく
 珍の館に消えしより  心も騒ぎ吹く風に
 桜の花の散る如く  右や左や北南
 探ね廻れど音沙汰も  なくなく通ふ松風の
 雨戸を叩くばかりなり  月にも紛ふ顔の
 常磐の松に宿りたる  心も清き松代姫
 雪に撓みしなよ竹の  繊弱き姿の竹野姫
 何処をあてとゆきの肌  出でましぬるか照彦の
 心の空も掻曇る  浮世の暗に芳ばしき
 只一輪の梅ケ香姫の  行方を探し求めむと
 ホーホケキヨーの鶯の  声に送られ山河を
 徒歩々々渡る手弱女の  杖や柱と頼みてし
 頼みの綱も夢の間の  夢か現か五月空
 暗に紛れてわが父の  行方は何処か白浪の
 大海原を乗り越えて  常世の国に出でますか
 嗚呼いかにせむ雛鳥の  尋ぬる由もなくばかり
 昔はときめく天使長  高天原の守護神
 勢並ぶものもなく  空行く雲もはばかりし
 神の命の貴の子の  蝶よ花よと育くまれ
 隙間の風にもあてられぬ  繊弱き娘の三人連れ
 黄金山を後にして  踏みも慣はぬ旅の空
 何処の果てか白雲の  靉靆き渡るウヅの国
 父の命のましますと  夢に夢みし梅ケ香姫
 花をたづぬる鶯の  ほう法華経のくちびるを
 初めて開く白梅の  二八の春のやさ姿
 二九十八の竹野姫  よはたち昇る月影の
 梢に澄める松代姫  松のミロクの御代までも
 恋しき父に淡路島  つたひつたひて三柱の
 姫の命の後を追ふ  心の空ぞ哀れなり
 心の色ぞ麗しき。
 松、竹、梅の三人の娘は、やうやうエデンの渡場に辿りつきぬ。此処に五人の里人は、月雪花にも勝る手弱女の、此方に向つて徐々と歩み来る姿を眺めて囁き合へり。
甲『オイ、来たぞ来たぞ、お出でたぞ』
乙『何がお出でたのだ』
甲『此エデンの河は本当に妙な河だよ。昔は南天王様が、此河上から大きな亀に乗つてお出でになつたのだ。此河をどんどん上つて行くと天の川に連絡して居るのだ。南天王様は其後は日の出神さまとかになつて、吾々共を捨てて鬼武彦さまを後に置いて天に帰られたと云ふ事は貴様も聞いて居るだらう。その時にも八島姫、春日姫と云ふ、それはそれは綺麗な天女が降つて来たよ。世界の洪水があつてから、この顕恩郷のものは方舟に乗つて、誰も彼も地教の山に救はれた。其時だつて地教の山には高照姫、言霊姫、竜世姫、真澄姫、其他沢山の、それはそれは美しい雨後の海棠のやうな艶つぽい女神たちに会うた事がある。あれを見い、今其処へお出でになる三人の姫神様は、地教の山から、天の河原に棹さしてお降り遊ばした天女だらうよ。早く船の用意をして顕恩郷へ寄つて貰つたらどうだ』
丙『五人の男に三人の姫様とは、ちと勘定が合はぬじやないか。もう二人あると恰度都合がよいのだがなあ』
乙『また貴様デレて居よるなあ。貴様の顔は何だ。すつくり紐が解けて仕舞つて居るよ。嫌らしい目遣ひをしよつて、貴様のやうな蟹面に、アンナ立派な女神がどうして見かへつて呉れるものか。あまり高望みをするな。とぼけない、貴様、春の日永に夢でも見て居よるのだな』
丙『夢ぢやなからうかい。開闢以来アンナ美しい女神は見た事がないからなあ』
甲『決つた事だ。お前達には分らぬが、あの御方は棚機姫の神様だ。一年に一度夫に御面会をなさると云ふ事だが、其お婿さまの日の出神様が、あまりお気が多いので、此頃また、天の川を下つて世界中を宣伝歌とやらを歌つて廻られたと云ふ噂だから、大方この辺を探したら会へるかも知れないと思つてお出でになつたのだよ』
乙『日の出神さまも余程の、目カ一ゝゝの十(助平)だな。欲の深い、三人もあのやうな奥さまを持つてゐらつしやるのか。俺だつたら一人でも辛抱するがなあ』
 かく雑談に耽る折しも、眉目清秀なる二十四五歳と覚しき男、浅黄の被布を纏ひ、襷を十字に綾取り、息急ききつて此方に向つて「オーイ、オーイ」と呼ばはりながら進み来る。
(大正一一・二・一二 旧一・一六 加藤明子録)
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