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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第1篇 千軍万馬よみ(新仮名遣い)せんぐんばんば
文献名3第10章 注目国〔440〕よみ(新仮名遣い)めげしこくに
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-07-15 22:00:30
あらすじ
牛雲別と蟹雲別は、群集をかきわけてこそこそと逃げてしまった。

宣伝使は蚊々虎(珍山彦)であった。蚊々虎は声を張り上げて、常世城内の失態を暴露し、群集に目を覚まして三五教に改心せよ、と説教を続けている。

淤縢山津見が宣伝歌を歌うと、群集の中の牛雲別の手下どもは縮み上がってしまった。蚊々虎は淤縢山津見に気づいて声をかけた。そして、五人の宣伝使は合わせて宣伝歌を歌い始めた。

群集たちはその言霊に打たれてつられて宣伝歌を歌い始めた。縮み上がっていた者らも立ち上がり、嬉し涙に歌い舞い踊る。

これより、この国の神人は三五教に改心することとなった。この国には、今に至るまで珍山彦の血縁が伝わると聞く。
主な人物 舞台目の国の川田の町 口述日1922(大正11)年02月21日(旧01月25日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版86頁 八幡書店版第2輯 421頁 修補版 校定版90頁 普及版39頁 初版 ページ備考
OBC rm1010
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本文  神力無双の宣伝使に打つてかかつた牛雲別は、さしもに高き巌上より地に抛げ落され、鋭利なる頭上の角をへし折り、ギウ牛云ふ目に遇はされて、牛叶はぬとも何とも云はず、雲を霞と群衆を別けてのたのたと姿を隠しぬ。蟹雲別は横腹を、倒れた拍子に岩に打ちつけ、蟹のやうに平たくなりて、カニして呉れとも何とも云はず横這になり、雲を霞と群衆を別けて、ガサリガサリと逃げ出しける。
 宣伝使は声張り上げて、
『ロッキーの山より高き、天狗の鼻の鷹取別は、火玉に打たれて鼻をめしやがれ、中依別は、常世の狐に魅まれて、大事の役目を仕損じた。鬼の様なる角の出た牛雲別は、力の強い麻柱の、神の教の宣伝使、蚊々虎に、大事の大事の角折られ、牛々言はされ牛叶はぬと、群衆に紛れて逃げ帰り、たうとう姿を牛なうた。蟹雲別は、鋏のやうな鋭い腕を振り上げて、蚊々虎に飛びかかり、胆を摧がれ腰痛め、蟹面をして、暗にまぎれてガサガサと、雲を霞と逃げ失せたり。サアこれからは次の番、百人千人一時に、かかれかかれ、欲に目のない目の国の、心の聾の曲津神、これから此方が鷲掴み、鷲にはあらで鷹取別の、烏の様な黒い面、鳩の奴めが豆鉄砲、喰つたやうな面をして、ずらりと並んだ皆の奴、蚊々虎の目の前に、阿呆面さらした可笑しさよ。つらつら思ひ廻らせば、常世の国は盲目国、盲が垣を覗くよな、恰好致してこの方を、十重や二十重に取囲み、アフンと致して空むいて、もろくも白くも目の玉を、白黒々と剥きながら、未だ目が醒めぬか盲ども、こんな苦しい目に遇うて、かち目もないのにちよん猪口才な、盲千人目の開いた、奴は一人もないとは情ない、ホンにお目出度い奴ばかり。コンナ結構な麻柱の、教が滅多に聞けるかい、目無堅間の救ひの船だ、摧げる恐れは一つもないぞ、今に眩暈が出て来るぞ、面目なげにめそめそと、吠面かわくも目の前ぢや、吾はこれから目の国を、めげ醜国と云うてやる。醜の曲津の遠近に、荒ぶる罪穢の深い国、何を目あてにウラル教、一寸先は暗の夜と、曲の教に目が眩み、心の眼は真の暗、何と哀れなことぢやらう。声を烏の蚊々虎が、鳶のやうにかけて来て、つる鶴述べる言霊を、首を長うして聞くがよい。聞く耳もたぬ木耳の、松茸、椎茸、湿地茸、毒茸、滑茸を食はされて、黒血を吐いて目を廻し、終にや冥土の旅枕、首も廻らぬ真暗がり、なまくら者の寄り合うた、この目の国をよつく見よ。四方の山々禿だらけ、大野ケ原は草だらけ、茨の中を潜るよな、この国態は何事ぞ、蚊々虎の申すこと、馬鹿にするならするがよい、天の冥罰立所、神の恵にあひたくば、今目を醒ませ目をさませ、前途の見えぬ目の国の、人こそ実に憐れなれ、人こそ実に憐れなれ』
と巌上に突立ち、群衆に眼を配りながら呶鳴り立てて居る。
 この時、男女の声を交へし宣伝歌が、暗の帳を破つて音楽の如く聞え来る。折しも東の海面を照して、まん円き月は下界を覗き給ふ。今まで百舌鳥か、燕か、雀か、雲雀か、山雀のやうに囀つて居た牛、蟹の手下の者共は、蛇に狙はれた蛙の如く、蟇蛙に魅られた鼬の如く、なめくじりに追ひかけられた蛇の如く、縮かまりて大地に喰ひつきしがみつき、地震の孫か、ぶるぶると慄ひ戦き居たりける。
『月は照る照る目の国曇る、荒れた目の国暗となる』
と涼しき声またもや聞え来る。蚊々虎は巌上より声する方に向つて、
『ホー、その声は淤縢山津見か、よい処でお目にかかつた。マアマア、緩り話さうかい』
 珍山彦の化けの蚊々虎は、涼しき声を張り上げて宣伝歌を歌ひ始めたるに、四人の宣伝使は声に応じて共に歌ふ。月は海よりいづの御霊のすみきり渡る、心も赤き言霊に打たれて、一同は思はず宣伝歌につられて歌ひ始むる。歌の調子に乗せられて、今まで足腰立たぬ憂目に遇ひし悪神等も、嬉し涙を流しながら立ち上つて舞ひ踊る不思議さ。これよりこの国の神人は三五教の教を固く守り、今までの悪心を残る隅なく払拭し、霊主体従の身魂となり変りたるぞ畏けれ。この国は今に珍山彦の血縁伝はり居るといふ。
(大正一一・二・二一 旧一・二五 加藤明子録)
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