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文献名1霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
文献名2第4篇 満目荒寥よみ(新仮名遣い)まんもくこうりょう
文献名3第21章 俄改心〔488〕よみ(新仮名遣い)にわかかいしん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
時公が問い詰めると、四人の大工たちは、ウラル教の目付けであったことを白状した。牛公は牛雲別であることを見破られ、大気津姫は実はウラル姫であることを明かした。

コーカス山は、アーメニヤが陥落したときの避難場所として建築しているのだという。また、於縢山津見、竹野姫のほかにも、北光宣伝使も岩窟に捕まえて監禁してしまったと白状した。

おりしも、岩窟の外に雪を踏んでざくざくと進んでくる足音が聞こえた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月03日(旧02月05日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月10日 愛善世界社版205頁 八幡書店版第2輯 587頁 修補版 校定版209頁 普及版90頁 初版 ページ備考
OBC rm1121
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本文  岩窟の外には大勢の跫音、雪をクウクウと踏み鳴らし乍ら風の如くに通り越した。油断ならじと時公は中より岩戸をシツカと閉め、牛公の息を吹き返させ四人を前に据ゑて、
時公『愈貴様達は怪しい奴だ。真実に猫を被つて居るな。我々を計略を以てコーカス山に誘ひ岩窟の中へでも投げ込む積りだらうが、さうは往かぬぞ。古手な事を致して後悔するな。サア有態に白状せよ。貴様は牛公とは詐り、牛雲別と謂ふ曲神であらうがな。その他の三人の者共、何れも皆その方の手下の者共だ。汐干丸の船中に於てワケも無い喧嘩を致して我等を欺き、この岩窟に誘ふ工夫であらうがな。そんな事の分らずして天下の宣伝使が出来ると思ふか。サア斯うなる上はもう量見はならぬ。有態に包まず隠さず白状せよ。その外三人の者共、一々実状を述べ立てよ』
牛公『アヽア、仕方がありませぬ。生命を助けて下さるならば申し上げませう。当山の大気津姫と言ふのはその実はウラル姫命、昔は常世姫命と謂つた神であります。夫のウラル彦は今はアーメニヤに居りますが、夫婦手分けをして万々一、日の出神とやらがやつて来てアーメニヤが保てなくなつた時は、このコーカス山の隠処へ逃れる積りで数多の家来衆を引寄せ、各自に立派な屋敷を造り、第二のアーメニヤの都を開かして居るのです。それ故この山は大秘密郷であつてウラル姫命の系統の者でなければ、一人も登られないと厳しく見張つて居る山です』
時公『さうだらう、さうすると貴様は大工に化けて、我々の所在を探して居たのだな』
牛公『マア、そんなものです。然し貴方等を夫れと知つたら、ウツカリ船の中で喋るのではなかつた。何分にも酩酊して居たものだから、ツイ喋り過ぎて看破されて仕舞つたのです。この間も淤縢山津見と言ふ強相な神がやつて来て、大気津姫を三五の道に帰順させると云つて居ましたが、その時此処に居る馬公、鹿公、虎公が今日の様に巧く計略を以て岩屋へ引つ張込み、逸早く三人は抜け出して外から岩戸をピシヤリと閉め、鉄の錠を卸して置きました。その隣の穴には竹野姫さんがお這入りになつて居らつしやいます。ヘイ』
馬公『コレコレ牛公、自分の事を棚へ上げて、何だ、馬鹿々々しい。それや貴様がしたのぢやないか』
牛公『ウン、貴様だつたかいの』
馬公『定つた事だ、貴様だ。貴様は真実に仕方の無い奴だ』
時公『その淤縢山津見は其後如何なつたのだ。サア牛公、白状せい』
牛公『如何なつたか、斯うなつたか、岩の戸を閉めたぎり、覗いた事は無いものだから、開けて見な分つたものぢやない。然し外を通る度に岩に耳あてて聞いてみると中でコツンコツンと音がして居る』
時公『もう、穴へ放り込まれたと言ふのは二人丈けか、まだ外にあるだらう』
馬公『ありますとも、ツイこの間、独眼の北光とか、曇りとか言ふ宣伝使が其次の穴に、あな恐ろしや、放り込まれよつた』
時公『それは誰が押し込むだのだ』
馬公『ヘイ、それは、マアマアマア、ヘイ……何でも夫れは………』
時公『何だ、頭計り掻きやがつて、貴様が計略で押し込んだのだらう』
虎公『お察しの通り馬公の仕事です』
時公『貴様等四人は同じ穴の狐だ。サア之から俺が行つて岩戸を叩き割つて、三人の宣伝使を救ひ出し、その後釜に貴様等四人を一つ穴に一つ宛、祭り込んでやらう。マア、楽しんで夜を明かすが宜からう』
牛公『今日は何とした運の悪い日だらう。オイオイ皆の奴、改心すると言はんかい。モシモシ時さん、私は第一番に只今限り、実に、誠に、真から改心を致します。何卒見直し聞直して助けて下さい』
時公『赦し難い奴なれど、今迄の悪を改めて真実に善に復帰るならば赦してやらう。その代りにお前等の仲間で岩窟の外まで案内するのだ』
馬公『案内は致しますが、其お代りは困ります』
八公『ハヽヽヽ、到頭尻尾を出しよつたな。只の狸ぢやないと思つて居つた。田納喜助、乃木常介などの矢張り連中だ』
鴨公『それだから悪は出来ぬと言ふのだ。オイオイ四人の連中、三五教はウラル教の様に惨酷な事はせぬ教だ。みんな言向和すのだから、改心すればその時から善と認めて待遇ふのだから、安心して休むが良からう』
時公『ヤア、マア、これで一と切りにして神言を奏上し、宣伝歌を歌つて休まして貰はう。サア松代姫様、梅ケ香姫様、貴女から導師をやつて下さい』
 松代姫、梅ケ香姫は岩窟の中央に端坐して神言を宣り始めた。折しも岩窟の外に雪をザクザクと踏み分け来る跫音がして岩窟の前にピタリと止まりける。
(大正一一・三・三 旧二・五 北村隆光録)
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