乗り合わせていた高光彦の宣伝使は、石凝姥宣伝使、時置師宣伝使に丁重に挨拶すると、宣伝歌を歌い始めた。
宣伝歌は橘姫の神徳を称え、四柱の牛、馬、鹿、虎に対して、神の道に誠を尽くすように諭していた。
舟は立花嶋に安着した。無事に上陸した牛、馬、鹿、虎ははしゃいで馬鹿話をしている。時置師は、ここは橘姫の鎮まる聖地なので、慎むようにと一同に注意した。
この島は、世界一切の草木が繁茂し、穀物や果物が自然になる楽園の島であった。邪神の邪気によって地上は涸れて生気を失っていたが、この島の植物だけは繁茂していた。
玉光彦、国光彦は島を賛美する宣伝歌を歌った。行平別は、世界が凶作にあえいでいるのに、この島だけは反映している、橘姫よこの恵みを一人占めせずに人々の悩みを癒せよ、と歌った。
橘姫は姿を表し、右手に稲穂、左手に橙を携え、天の数歌を歌い、稲穂を天空高く放り上げた。稲穂は四方に散乱して、豊葦原の瑞穂の国を実現した。
左手の木の実を高く投げ上げると、豊葦原の瑞穂の国は、食物果物よく実る神代となった。これは、天の岩戸開きのご神業の一部である。
橘姫は、国光彦と夫婦となってこの島に鎮まり、国土鎮護の神となった。天の真奈井における誓約の際に現れた三女神の多岐都比売命は、橘姫の後身である。