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文献名1霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
文献名2第1篇 勝利光栄よみ(新仮名遣い)しょうりこうえい
文献名3第5章 同志打〔531〕よみ(新仮名遣い)どうしうち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-26 16:50:25
あらすじ
どうも奇妙なことが続くので、岩彦を中心にウラル教の宣伝使たちは会議を開いた。そして、すぐ側に寝ている日の出別宣伝使をチャンスとばかりに襲おうとする。

しかし鷹彦は反対し、三五教に降参するべきだ、と異論を唱える。一同は、先ほどみなが同じ夢を見て、その中に三五教の回し者が一人潜伏していると出ていた、と口々に怪しみ出す。

鷹彦は自ら、自分がその宣伝使だとほのめかす。一同は鷹彦に詰め寄るが、鷹彦は今まで気がつかなかった仲間たちを笑っている。

ウラル教の宣伝使たちは鷹彦に殴りかかるが、鷹彦はひらりと身をかわし、同士討ちになってしまう。いきり立ったウラル教徒たちは、暗闇の中でますます同士討ちをしたり、木にぶつかったりしている。

鷹彦は姿を現して、自分の背中に羽が生えているのを見せ、羽ばたきして見せた。ウラル教の宣伝使たちは恐れおののいて、ついに三五教への降伏と改心を誓うに至った。

このとき闇の中より、傍らの茂みのなかから涼しい声で宣伝歌が聞こえてくる。
主な人物 舞台シヅの森 口述日1922(大正11)年03月16日(旧02月18日) 口述場所 筆録者谷村真友 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年10月30日 愛善世界社版66頁 八幡書店版第3輯 56頁 修補版 校定版67頁 普及版28頁 初版 ページ備考
OBC rm1305
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本文  天の戸押し開いて半円の月は稍西天にかすかに輝き初めた。一同の顔は誰彼の区別のつくまで判明して来た。
岩彦『オー、久し振りでお月様のお顔を拝観することが出来た。是れだから時節は待たねばならぬものだと何時も云ふのだよ』
梅彦『今日は妙な日だ、鶴山丸で日の出別の宣伝使に逢ふ。今晩はまた月の顔を久しぶりで見る。竜宮の一つ島に渡つてから、日月揃うて見たのは珍らしいことだ』
岩彦『オイ、何だか俺は胸騒ぎがする様だ。皆起きて坐らぬかい。一つ臨時議会を開会するから』
音彦『ナニ、岩彦議長の提案は一体何だい。吾々はあまり長い間海に浮んで居た揚句、大陸を強行的にテクツて来たものだから、足は棒の如になつてしまつた。横になつたまま開会をしてもらへないかな』
岩彦『横でもかまはないが、然し是れには一寸曰く因縁があるのだ。まさかの時になつたら、貴様の不利益だらう。只今より愈月の出たのを幸い、マラソン競走の選手となつて、フサの都まで速力倍加で突貫するのだよ』
亀彦『ソラ何だ、余りの緊急動議ぢやないか』
岩彦『大きな声で云ふない、その向ふの木の株をそつと覗いて見よ。居るぞ居るぞ。大きな声で咆哮すると覚醒状態になられては大変だ。それ今そこに居る奴は船の中で見た日の出別の宣伝使だ。此奴が目を覚まさぬ間に尻に帆をかけて、急速力で進行するか、但しは停船のまま四方八方より包囲攻撃をやるか、二つに一つの議案だ。サア即決だ』
鷹彦『マア、ソンナ事は即時否決だ。否決の序に本当の敵に対する秘訣を吾輩が提出するから、汝等夫れ審議を鄭重にするのだ。とても吾々半ダースの人間が一斉射撃をやつた処で、クルップ砲に火縄銃を以て対ふ様なものだ。勝敗の数既に決す、寧ろ白旗を掲げて降伏と出掛ける方が安全で好からう。くだらぬ事に貴重な生命を落すのは馬鹿の骨頂だ。誰も夫れ丈け戦つた所で彼奴は職務に忠実な奴感心だと云うて共鳴するものは、この暗がりの時節に一人も半人もあるものぢやない。共鳴するのは墓の団子でも泥棒しようと思つて烏が鳴く位だ。それも哀悼の意味でなくて自分の食料を得た嬉し鳴きだから、ホントウにつまらないぢやないか』
岩彦『不相変弱音を吹く奴だなア。人間と云ふものは神様の模型ぢやないか、神様はソンナ決して弱音を吹くものぢやないよ』
鷹彦『又もや月が隠れたぢやないか。遁ようと言つたつて此曇天に足許の泥溝もはつきりと判らず、丁度灰色の茅の中を道中するやうな有様だから、何時足をさらはれるか分つたものぢやない。思ひ切りの悪い奴だナア。アーメニヤヘ一体帰つた所で、盤古神王のウラル彦が居られるか居られぬか心許ないではないか』
亀彦『ウン、俺もソンナ夢を見たよ、心配だ。然し岩彦の宣伝使長は、お化物の舌の上に乗せられて居つて、噛んだり、吐いたり、イヤもう目茶苦茶な目に逢はされて居よつた。夢にも色々あつて神夢、霊夢、正夢、凶夢、雑夢と云ふ事があるから当にはならないが、どうせ頑固一片の男だからあの夢が霊夢になるかも知れぬ。気の毒なものだワイ』
一同『ウン俺達もその夢を見たのだ。斯うして四人が同じ夢を一度に見ると云ふのは、屹度霊夢だよ。オイオイ愚図々々して居ると内裏に敵が侵入潜伏して居るかも知れないぞ』
岩彦『吾々一行六人の中に三五教の奴が交つて居ると云ふのか。ソンナ馬鹿な事があるものかい』
音彦『ヤー何とも言はれぬよ』
鷹彦『オツト高い声では言はれぬが、ナンデも羽が生えて宙を飛ぶ様な名の男が、三五教の間諜で俺達の仲間に這入つて居ると云ふ事だよ。現に夢の中に「俺はかうして貴様と一緒にウラル教に入つて、その実は三五教だ。一つ島の宣伝が不成功に終つたのも飯依彦と気脈を通じて遣つたからだ」と、夢の中に自白し居つた奴があるのだもの』
三人『俺等も夢でその通り聞いて居る。サア行掛の駄賃に此奴をやつつけておいて、それからマラソン競走だ』
音彦『コラ鷹公、白々しい、貴様は何だ。悪の企の露顕れ口、のつ引ならぬ夢の告、どうぢや白状致して降参するか、逃げようと言つたつて、もう駄目だぞ。吾々五人の閉塞隊が港口を固く封鎖した以上は、潜水隊だつて無事に脱出する事は出来やしないぞ。サア白状せないか』
鷹彦『アハヽヽヽ、オホヽヽヽ、エヘヽヽヽ』
一同『何だ、夢の中の化物の如うな声を出しよつて』
鷹彦『盲の宣伝使、馬鹿と云つても貴様等の様な奴は珍しい。天下一品、秀逸の馬鹿だ。俺は貴様の云ふごとく実は三五教の宣伝使だ。瀬戸の海の一つ島に永らく居つたものだが、手段を以て貴様等の仲間に藻繰込み、総ての計画を熟知し居るこの方、俺位のものが看破出来ぬ様なものではウラル教も駄目だ。アハヽヽヽ、オホヽヽヽ、イヒヽヽヽ、イヽ面の皮だ、いぢらしいものだナア』
岩彦『言はして置けば悪言暴語の乱射、もう此上は不言実行だ。オイ皆の奴、打ちのめせ、大将軍の命令だ』
『ヨシ』
と答へて一同は拳を固め鷹彦の面上目がけて力限りに打下せば、鷹彦はヒラリと体をかはした。
梅彦『アイタタ アイタタ、コラコラ鷹彦、おれをどうするのだ。此奴中々ひどい事をしよるぞ。アイタタ アイタタ』
 暗がりまぎれに鉄拳の雨を降らして居る。鷹彦は二三間はなれた所より、
鷹彦『アハヽヽヽ、盲同志の同志打ち、ドシドシと喧嘩をやれ、この方は高処で見物だ』
梅彦『オイオイ皆の奴、俺の頭を惨い目になぐりよつて、チツト心得ぬかい。味方を打つと云ふ事があるものかい』
音彦『千騎一騎の戦場に向つて鎬を削るに、誰彼の用捨があらうか。当るを幸ひ、なぐり、張倒し、勝鬨あぐるは瞬く間』
鷹彦『アハヽヽヽ、面白い面白い、悪神のする事は皆ソンナものだよ。もつとやれもつとやれ』
音彦『エーかもふない、今に仇を打つてやる。オイ皆の者、何でも後の方に声がしたぞ。突喊々々』
 ワーツと鬨を作つて声する方に進撃する。茂みの森の木の幹に前額部を衝突させパチン、
『アイタタ、イヽヽイータイ、ヤー鷹彦の奴、中々固い体をしてゐよる。何だ此奴は木の幹だ、大木だ』
 鷹彦は体をすくめながら、暗にすかして五人の蠢動するのを見済まし杖を以て頭と思ふ処を目がけてそつと叩く。
音彦『ヤア居る居るオイ、此処だ此処だ』
『ヤアさうか』
と四人は声する方を目あてに鉄拳を乱下した。音公は四人の荒男に身体一面乱打されて、
『アイタタアイタタ、アヤマツタ、待て待て、違ふぞ違ふぞ』
一同『違ふも糞もあつたものか。この期に及んで卑怯未練な逃げ口上、放すな皆の奴、のばせのばせ』
音彦『音ぢや音ぢや』
一同『音がする程叩けとぬかすのか、ヨシ御註文通りなぐつてやらう』
 鉄拳の音は一層激烈となつて来た。鷹彦は二三間傍にヌツと立つて、
鷹彦『アハヽヽ、オホヽヽ、イヒヽヽ、鷹チヤンは此処だよ。同志打ちの先生、盲先生、今の世の中は丁度ソンナものだよ。互に味方同士、兄弟同士、親類同士、同士打ちをやつて居る。貴様等もウラル教の精神を遺憾なく発揮して満足だらう。昔の常世会議で武装制限が行はれて、羽翼を取られて退化した人間が、アベコベに羽翼が無くなつて不自由の身体になつて、それを進化したと云つて喜ぶやうな代物だから不便なものだ。オイこの鷹チヤンはその名の如く羽翼が在つて鷹の通り空中は自由自在だ。一つ飛んで見せて遣らうかい』
と云ひながら、一丈もある翼を拡げてバタバタと羽ばたきをして見せる。
一同『ヤア此奴は天狗の化物だ。モシモシ天狗様、偉い見損ひを致しましたが、天狗様、どうぞ生命計りはお助け下さいませ』
鷹彦『三五教の宣伝歌を歌ふか』
一同『ハイハイ、教へて下されば歌ひます』
鷹彦『ウラル教は止めるか』
一同『やめますやめます』
 この時暗中より何人とも知れず、涼しき宣伝歌が暗を縫うて、傍の木の茂みより聞え来たりけり。
(大正一一・三・一六 旧二・一八 谷村真友録)
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