一行は、立派な石壁で築かれた館の前にやってきた。音彦は大音声に門を開けと呼ばわるが、何も起こらない。ただ門内よりかすかに琵琶の音が聞こえてくるのみである。
弥次彦と音彦が問答をしていると、門内から大声で一同を誰何する者がある。声は、門を開こう開こうと焦って教えを忘れていた宣伝使たちに注意を促した。
音彦は亀彦、駒彦に促して、慌てて神言を奏上する。すると門は易々と開いた。そこに居た巨大な男は、うわばみの野呂公だった。野呂公は臥竜姫に取り次ぐといって奥に入るが、なかなか戻ってこない。
いぶかる亀彦に、弥次彦は、門は開いたが、まだお前たちの心が開いていないのだ、と説教をする。亀彦が口答えすると、弥次彦と与太彦は一同に気をつけると、赤白の玉になって飛んでいってしまった。
一同はしびれを切らし、館の中にどかどかと進み入った。すると突然、上空が開け、日の出別の乗った天の鳥船が航行しているのが見えた。一同はいつの間にか、野天の野原に出ていた。
そこへ、出雲姫と名乗る三五教の女宣伝使が現れ、日の出別一行が、峠で待っていると言って道案内を始めた。