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文献名1霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
文献名2第5篇 膝栗毛よみ(新仮名遣い)ひざくりげ
文献名3第22章 高加索詣〔548〕よみ(新仮名遣い)こーかすまいり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-12-15 18:09:36
あらすじ日の出別の神がコーカス山に現れて以来、コーカス山の御宮には参詣者がたくさん参るようになった。弥次彦と与太彦は、御宮参りの道中、コーカス山に程近い町で、かつて弥次彦の下女であったお竹の家に泊まることになった。お竹の家も、参詣者の宿泊でいっぱいのため、お竹の家の二階の柴屋に泊まることになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所 筆録者岩田久太郎 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年10月30日 愛善世界社版257頁 八幡書店版第3輯 124頁 修補版 校定版257頁 普及版112頁 初版 ページ備考
OBC rm1322
本文のヒット件数全 2 件/高取村=2
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本文  四方の山辺は青々と、若芽の緑春姫の、袖振り栄えて紅の、花咲き匂ふ春の空、コーカス山に現れし、日の出別の活神を、慕うて絡繹と詣づる男女の真中に、秀て黒き二人の大男は、宣伝歌の此処彼処、千切れ千切れに歌ひながら進み来り、路傍の草の上に腰打掛けて、雑談に耽るあり。
『オイ与太彦、どうだ、長らくの間、日月の光もなく、草木の色は枯葉の様になつて春の気分もトント無かつたが、日の出別の活神さまが、コーカス山に現はれてより、金覆輪の日輪様は晃々と輝き玉ひ、草木は若芽を吹き、花は咲き小鳥は歌ひ、陽気は良く、本当に地獄から極楽へ早替りをしたやうだなア』
『本当にさうだ、一時も早くコーカス山の御宮に参拝したいものだ。しかし是だけ大勢の老若男女が、珠数繋ぎになつて参拝するのだから、緩つくりと足を伸ばして休むことも出来やしない。マゴマゴして居れば踏み潰されて仕舞ふわ。ノー弥次公、今晩は何処で宿を取つたらよからうかなア』
『サア春と云つてもまだ夜分はよほど寒いから、まさか野宿する訳にも行かず、是から二里ばかり行くと、田子と云ふ小さい町があつて、そこには俺のとこに長らく奉公をして居つた、お竹と云ふ下女の家がある筈だから、今晩は其処までコンパスを延ばして、泊めて貰つたらどうだらう』
『ウーン、あのお竹ドンの家か、それは良からう。しかし泊めて呉るだらうか、これだけ大勢の人だから、お竹ドンの家も沢山の知り合の人があるだらうから、俺等が行く迄に満員になつて居るやうな事はあるまいかな』
『そこが主人と家来だ、いかに無情なお竹だつて、十年も飼うてやつた主人が頼む事をまさか厭とは云はれよまい。マアともかくもお竹の家を目当に行かうかい。ヤア沢山な参詣者だナア』
と云ひながら、両人は草臥れた足をチガチガと運びはじめた。日は山の端に没せむとする頃、やうやう田子の町に着いた。
『何でもこの町だ。酷う大きな家ぢやないさうなから、貴様は右側を調べて見ろ、俺は左側を調べて行く』
与太彦『何か屋号でもあるのか』
弥次彦『お前お竹の顔知つとるだらう、彼奴の顔を見当に行くのだよ』
与太彦『お竹だつて、さう日当りに看板の様に、朝から晩まで立ち続けにして居る筈は無いから、ソンナ頼り無い標的を的に探しても不可ぢやないか。それよりもいつその事、軒毎にお竹ドンの家はここかここかと、両側の家を尋ねて廻つたら一番的確だよ』
弥次彦『ウン、それがよからう。サア此処が田子の町だ。お前は右側だ、俺は左側だ……モシモシ、お竹ドンのお宅はこなたぢや御座いませぬか』
 屋内より
『違ひます』
弥次彦『こなたはお竹ドンの館では御座いますまいか』
 屋内より
『お竹の家ですが、お竹は十五年前に死にましたよ』
『ナニ、十年前に俺のとこに奉公して居たのだ、十五年前に死んだとはお前サンチツト勘定違ひぢやないかなア。高取村の弥次彦の家に奉公して居つたお竹の事だよ』
 屋内より、
『私処の娘は奉公にやつた事は無い』
『ぢやお竹違ひだ、これはおタゲーに迷惑だ。エー仕方がない、初めからドンを突かれだ。これだけ小さい町だと云つても、随分の家数だ、軒毎に尋ねて居ると乞食と間違へられて気が利かぬ。天秤棒の星当りだ。二軒か三軒づつ間をあけて尋ねて見ようかい』
 二人は町の両側をあちらこちらとお竹の有り家を尋ねて進み行く。
 小さき屑屋葺の軒下から、
『モシモシ、貴方は高取村の旦那様ぢや御座いませぬか』
『イヤーお前はお竹か。ナンとマア偉い婆アになつたなア。俺のとこに居つた時は、ちよつと渋皮のむけた別嬪だつたが、十年経てば一昔、寄つたりな寄つたりな皺三十二になつたらう。皺三十二歳のお前の姿、これを思へば年は取りたくないものだ。しかしながら取りたいものが一つある』
『オホヽヽヽヽ、旦那様、取りたいと仰しやるのは何でございます』
『今晩宿が取りたいのだ。貴様の家に泊めて呉ないか』
『滅相な、旦那様のお泊りなさるやうな家ぢやございませぬ。ホントウに穢苦しうて、お恥かしう御座いますから、どうぞそれ許りは許して下さいませ』
『ソンナラ何処か宿屋へ案内をして呉れないか』
『これだけ沢山なコーカス詣りに、何処の家も彼処の家も、ギツシリ鮓詰めと云ふ有様でございます。私とこの様な小さい家でも、何処の方か知りませぬが、軒下でもよいから泊めて呉れいと仰しやつて、身動きも出来ぬ程のお人でございます』
『何処でもいいが空いた処は無いか。ハンモツクでもあれば、天井裏でも構はぬ。雨露さへ凌げばいいのだから』
『ソンナ気の利いたものが私とこの様な貧乏な家に有りますものか。明いた処と云へば煤だらけの柴屋がある丈です』
『イヤーその柴屋で結構だ。しかし随分燻ぼるだらうなア』
『下で御飯を焚いたりお茶を沸したり致しますから、随分天井は燻ぼりませう。旦那様、ソンナ処でお泊りやしたら狸と間違へられますぜ。オホヽヽヽヽヽ』
『イヤー狸でも狐でも構はぬ、一夜明かせば良いのだ。ヤア今晩の宿舎は是で解決がついた。オイ与太彦、此処だ此処だ、宿屋が極つた。ヤアー何処へ行きよつた、狼狽者だなア。与太公の奴大勢の人に紛れて俺の談判が分らなかつたと見えるワイ。オイお竹、俺の連の与太彦を呼んで来て呉ないか』
『この町は小さい町でございますから、いづれ向ふまで行つて家が無くなつたら、又こちら側を尋ねて帰つて来られませうから、マア渋茶でも飲んでゆつくり待つて居て下さいナ』
『ヤア与太公どうだつた。これがお竹様のお館だ。今晩はここで御宿泊だ』
与太彦『ヨー、ナントお粗末……ぢやない結構なお家だ。ヤアお竹サン、私の顔を知つてますか。十年の昔牛部屋から忍び込んだ時、コーンと臂鉄を食はせましたなア、覚えてますか』
『オホヽヽヽヽ、人が聞いてますよ、ソンナ見つともない事を仰しやいますな。マア裏で緩くりと一服して居つて下さい。柴屋を片付けましてお休み場所を拵へますまで』
『アーお前の云ふ通り小さい家に似合ぬ沢山なお客様だなア。アーこれがお前の母親か、頭の光つたお爺様がござるな。ヤア結構々々、年がよつて達者なのは何よりだ』
『旦那様、どうぞ此方と裏に休んで居て下さいませ』
『ヨシヨシ。オイ与太彦、表は随分穢苦しい穢い家だが、裏へ廻ると立派な家があるぢやないか。マア、ここで緩くりと一服しようかい。ウーン床の間の飾りと云ひ、欄間と云ひ、書院の工合やら何から何まで、到底俺の処の座敷に比べて、幾層倍上等かも知れない。お竹の奴随分持つてけつかるのだらう。表を立派にすると税金がかかるものだから、コンナ陋い見すぼらしい家を建てよつて、裏には立派な亭座敷を建てて居よる、抜かりの無い奴だ。今の人間は表を飾つて裏へ這入れば皆我楽多計りだが、お竹の奴長らく俺の処で修行をしたお蔭で、表は陋く内心はこの通り立派にやつてけつかるのだらう、感心だ感心だ。コンナ結構な座敷になぜ給仕人を置いて置かぬのだらう。オイ手を叩いて御茶でも持て来いと命ずるかなア、与太彦』
『ホントウに感心だ、これだから人の出世は分らぬと云ふのだよ。余り人は零落たと云ふて侮るものぢやないぞ』
 弥次彦はやたらに手を叩き、
『オーイ、お茶だお茶だ』
 白髪の老人一人若い男を伴ひ来り、ギロギロとした目を剥きながら、
『お前たちは何処の方だい、俺の処の離れ座敷に断りもなく侵入して何をして居るのだ。家宅侵入罪で訴へようか』
『ヤアお爺様、能く洒落るなア。俺はお前ん処の娘のお竹の主人だよ』
『私処にお竹と云ふ者は居らぬ。お竹の家はその前の小ぽけな家だぞ』
『ヤアー、さうすると此処の家はお竹の家ぢやないのか、それなら何故垣をして置かないのか、お竹が裏で休めと云ふから、気の利いた座敷だと思つて一寸一服して居つたのだ』
『ハハーお前たちは間違へて這入つたのだなア、仕方がない早う出て下さい。オイ長松、塩を持つて来い。大切な座敷へ裏からノコノコと這入つて来よつて、ここは神様のお座敷だ。俺さへ此処へ来るのには、水をかぶらな這入らぬ座敷をば、泥塗れの足で上りよつて怪しからぬ奴だ』
『ヤアお爺様これは失敬、オイ与太公、長居は恐れだ。退却々々』
お竹は、
『モシモシ旦那さま、何処へ行つてゐらつしやいました、最前から心配をして、そこらを尋ねて居りました。仕度が出来ましたから、どうぞ柴屋へ上つて下さいませ』
『ヤア、それは有難い、案内して呉れ』
『サア、ここに梯子が掛けてございます、ここからトントンとお上り下さいませ。沢山柴が詰めてありますが、お二人様位はどうなつと休めませう』
『アヽ、仕方が無い。ヤア有り難う。与太公二階へ上つて休息しようかなア』
とビヨビヨした危い虫食ひだらけの梯子を恐々上つて行く。
『サア、マー是で一安心だ、煤だらけだな。しかしマア外で寝て居るより優かい。能く燻ぼる家だなア。クシャンクシャン。アー目が痛い』
『ともかく今晩の宿が定まりまして弥次彦さまにもお目痛うございます、ウフヽヽヽ』
『洒落どころか、アタけぶたいのに』
 与太彦は柴を枕にコロリと横になる。弥次彦は下を眺めて、大勢の者の飯を焚き茶を沸かし、右往左往する様をヂツと見下して居た。お竹の母親と見えて、渋紙のやうな顔した頭の禿げた婆々は、真つ黒けの垢だらけの手を出し、黒い杓子で鍋から飯を左の手のひらに載せ、杓子を下におろし、右の手で洟をツンとかみ、手の甲にて洟をこすり、飯をクネクネと握つて居る。一つ握つては笊の中へ放り込み、一つ握つては笊の中に投り込み、見る間に二十許り三角形の握り飯を固めて了ひ、
『モシモシ二階のお客さま、そこに黒い綱があるだらう、綱の先に柴を吊り上る鈎が付いて居るから、それをスルスルと下して下さい、握りマンマをあげます』
『お婆様、是かなア』
と云ひながら鈎の付いた黒い綱をツルツルとおろした。婆々は笊を十文字に縛り、その中央に鈎を引かけ、
『サアサアこれを上へ釣り上げて腹一ぱい上つて下さい。お茶は沸いたらまた知らすから鈎をおろして下され、土瓶を引かけてあげるから、又ツルツルと上へ上げるのだよ』
『オイ与太彦、握り飯だ。腹が減つただらう、シコタマ頂戴せぬか』
『有難いなア、天道は人を殺さず、弁当は人を助ける。今晩は宿屋がなくて飯も頂けまいと思うて居たのに、これはマー結構な事だ。オー沢山な握り飯だなア、偉う黒いのと白いのと有るぢやないか』
『ソラ極つた事だよ、初に握つた奴は黒いに極つて居るわ、白い奴から食うたらよからう』
 与太彦、一つカブツて、
『ヤア弥次彦、塩加減が良いぜ、お前も一つ食つたらどうだ』
『イヤ今日は余り草臥て胸脹れがして飯は厭だ。与太公ヨバレテ仕舞へ』
『ホントウにお前いいのか、それなら済まぬがお前の代理に二人前失敬しようかい。ヤア色は黒いが塩加減が良いわ、ネンバリとして何とも云へぬ味だよ。この辺の米はよつぽど性がよいと見えるナア』
と云ひながら黒いのを二つ残し全部平げて仕舞つた。
『アハヽヽヽ、味かつたか、塩加減が良かつただらう。その筈だ、俺がかうして下を覗いて居ると、渋紙の様な、頭の禿げた、穢い婆々が真つ黒な手を出して、鍋の中ヘグサツと手を突き込んではグツと握り、洟を垂らしては手洟をかみ、握り固めたのだもの、塩加減のよいのは婆々の洟汁が混つて居るからだよ。アハヽヽヽ』
『ペツペツ、エー気分の悪い、何だかムカツイテ来た。オイ弥次彦、茶でも請求して呉れないか、一ペん腹の洗濯でもせないと、喉がニチヤクチヤして気分が悪い』
『オーさうだらう。モシモシお婆サン、鈎を下ろすからお茶を下さいなア』
『その綱を確つかりと持つて居なされや、途中で放して貰うと、下に居る婆々が煮え茶を被るから』
 土瓶に真つ黒の茶を一ぱいもつて鈎にかけた。弥次彦はツルツルと引上げた。
『サア与太彦、ナンボなと飲んだり飲んだり』
『飲まいでかい、腹の洗濯だもの』
と云ひながら土瓶に一ぱいの茶をコロリと空けて仕舞つた。
『オイオイ、お前ばかり飲んで居つて俺にも一杯飲まさぬかい』
『もう仕舞だ、マア一杯請求して呉れないか』
『能う茶を食らふ親仁だなア。モシモシお婆サン、もう一杯お茶を下さらぬか』
 下には禿頭の爺と婆、その他お竹の兄弟五六人、沢山のお客様に握り飯を一生懸命に拵へて居る。
 弥次彦は鈎に土瓶を引つかけ、ツルツルと下した途端に、禿頭の爺の額口にコツンと当つた。弥次彦は吃驚して土瓶の綱を俄に手繰り上げる。
『ヤア怪体な事が有るものぢや、土瓶の奴俺の頭を蹴りよつて逸早く天上して仕舞つた。化物だらうかなア』
『爺さまの薬鑵頭を土瓶が蹴るのは当り前だよ。たとへ土瓶が天上位したつて何も不思議ぢやない。今朝も婆々が見て居れば門前を葱の浄瑠璃語りや、大根の役者が通つた。土瓶の天上位は別に不思議な事は無いわいなア』
 又もや土瓶は柴屋からツルツルと下りて来た。
お竹『ヤア旦那様が大変喉を乾かして御座ると見える、充分入れて上げて下されな』
 婆は、
『ヨシヨシ』
と云ひながら飯のついた手で杓を握り、土瓶に酌み再び鈎に掛けた。土瓶は忽ち天井に姿を隠した。
(大正一一・三・二一 旧二・二三 岩田久太郎録)
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