大海原の宝の島と伝えられる竜宮海の一つ島に、ウラル教を広めようとやってきた六人の宣伝使たちは、島を守る三五教の飯依彦の善言美詞の勢い退散し、フサの海まで帰り来たとき、船上で日の出別宣伝使に出合った。そして上陸したシヅの森で、一同は三五教に改心した。
一行は醜の岩窟を探検したあと、猿山峠で音彦、弥次彦、与太彦は他の宣伝使に遅れをとり、そこをウラル教の捕り手に襲われた。関所を抜けて、泥田で弥次彦・与太彦は服を失った。ついに囲まれて衆寡敵せず、三人はやむなく千尋の谷間に飛び込んだ。
気がつくと三人は青々とした淵の辺にいた。服を失った弥次彦、与太彦は、生まれ赤子の心だなどと呑気なことを言っている。
音彦は、これから旅を続けるのに都合が悪いからと言って、自分の衣服の一部を貸そうとするが、弥次彦・与太彦は聞かない。暗くなってきた路を、三人はそのまま進んで行く。
すると、にわかにあたりが明るくなってきた。そこには大変な大河が南北に流れている。河向こうには金殿玉楼がうっすらと浮かんで見える。三人は川岸に着いた。
与太彦はどうやって河を渡ろうかと案じるが、弥次彦はこのまま泳いでいけばよい、音彦も服を捨てて裸になればよい、と言う。音彦は宣伝使として法服や被面布を捨てるわけにいかない、と行って思案に暮れている。
ふと見ると、傍らにみすぼらしい藁小屋がある。弥次彦は小屋の中で会議をしようと中をうかがうと、婆さんがいる。婆はここは三途の川だと告げ、自分は脱衣婆だと名乗った。
一行はようやく、これは幽界を旅行しているようだと気がついた。脱衣婆は弥次彦の生前の行いをあげつらい、宣伝使としての行いを非難する。弥次彦はそれに対していちいちおかしな理屈を混ぜながら反論している。
弥次彦が脱衣婆をおかしな問答をしていると、ウラル教の大目付源五郎がやってきた。源五郎は、猿山峠で宣伝使たちを追い詰めたが、その後馬から振り落とされて死んだのであった。
弥次彦は敵を討とうと、脱衣婆から職権を一時的に譲り受けると、源五郎の着物をはいで、自分と与太彦のものにしてしまった。また、脱衣婆から釘抜きを借りて、源五郎の舌を抜きにかかった。源五郎はたくさんの罪を抱えて、非常に多くの舌を持っていた。
脱衣婆は、一同にもう河を渡るようにと促した。不思議にも、三途の河の水がなくなって、歩いて渡れるようになっていた。弥次彦は脱衣婆を夫婦気取りで別れを嘆く。それを見て音彦、与太彦、源五郎は吹きだす。