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文献名1霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻
文献名2第3篇 高加索詣
文献名3第15章 丸木橋〔565〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ一行は息を吹き返し、鬼婆と格闘した夢を語り合っている。勝公は、これは数十万年未来に艮の方角に男子・女子が現れてミロクの世の活動をされるときに、邪魔をする悪魔が出てくるのだ、と夢判断をする。
与太彦は、谷川の水で禊ぎをして身を清めよう、と提案する。一同は賛成して川に飛び込むが、六公がおぼれてしまう。
一同は六公の生存を祈りつつ、川を下って六を探しに行く。丸木橋が架かったところで、与太彦に六公の生霊が懸って、自分は死んでいない、と口を切った。
すると、橋のたもとから、以前四人が三五教に改心させた烏勘三郎一行が現れ、六公が流れてきたので、川から引き上げて助けてあった、と言う。
勝彦が天の数歌を唱えると、六公は息を吹き返した。一同は神言を奏上し宣伝歌を歌った。四人は烏勘三郎たちに厚く礼を述べ、二十六番峠に向かって進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月25日(旧02月27日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所
OBC rm1415
本文の文字数6145
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本文  二十五番峠の頂上より強烈なる烈風に吹き払はれ、谷間に陥りし勝公一行は、息吹き返し起き上り、互に顔を見合せて、
勝『ヤア、此処はコシカ峠の谷底だ。一途の川とやら云ふ並木の松の茂つた一つ家に於て、常世姫や木常姫の悪霊と格闘をやつて居た積りだに、これは矢張り夢だつたかいなア』
弥『アヽ宣伝使様、貴方もソンナ夢を見たのですか、私も見ましたよ、エグイ顔をした婆アだつたねー。目の周囲から鼻の辺りと云ふものは紫色に腫上つて、随分見つともよくない常世姫の寝姿、一目見るよりゾツとした。それに又、星の紋のついた水色の羽織を着た中婆の嫌らしい顔つたら、今思つても身体中がゾクゾクするやうですワ。それに与太公の奴、一つ家の窓を覗いて、芝居がかりに手踊をやるをかしさ、可笑しいやら、恐ろしいやら、気分が悪いやら、腹が立つやら、疳が立つやら、イヤもう三五教の精神も何処かへ行つて仕舞うて、見直し聞き直し、宣り直しと云ふ余裕がなかつた。オイ与太公、六公、貴様は如何だつた。夢の中の一人だつたぞ』
与『俺もチヨボチヨボだ、一途の川だとか、欲しい一図だとか、婆が吐いて居たよ。余程よい血迷ひ婆アだワイ』
六『鬼婆が出刄をもつて、突つかかつて来よつた時にや、この方は無手だ、先方は獲物を持つて居るのだから一寸ハラハラした途端、目が醒めたのだ。アヽ嫌らしい夢を見たものだ。夢の浮世と云ふからには、何処かにかう云ふ事実があるかも知れないよ』
弥『夢と云ふものは神聖なものだ。吾々が社会的の総ての羈絆を脱して、他愛もなく本守護神の発動に一任した時だから、夢の中の事実はきつと過去か、現在か、未来のうちには実現するものだよ』
六『さうだらうかなア、過去の事だらうか、未来の事だらうかな』
勝『それは、この夢の実現は数十万年未来の事だ。二十世紀と云ふ悪魔横行の時代が来た時、八尾八頭や金毛九尾の悪霊が再び発動しよつて、常世姫や木常姫の霊魂の憑り易い肉体を使つて、行りよる事だよ。天眼通力によつて調べて見ると、何でもこれから艮の方に当つて、神さまの公園地に、夢の中の男子とか女子とかが現はれて、ミロクの世の活動を開始されるのを、何でも変性男子の系統の肉体に懸り、善の仮面を被つて教への子を食ひ殺し、玉取りをやる事の知らせであらう。アヽ二十世紀と云ふ世の中の人間は実に可憐さうだ。それにつけても、厳霊、瑞霊や金勝要の神、木花姫の呑剣断腸の御苦しみが思ひやられる哩。嗚呼惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
与『吾々は過去現在未来の衆生済度のため、この清らかな川辺に落ち込んだのを幸ひに、御禊を修し、神言を奏上してミロク神政の建設の太柱、男子女子をはじめ、金勝要の神、木花姫の霊の鎮まりたまふ肉の宮の為に、祈りませうか。この世の中が万劫末代維持していけるやうに、善ばかりの花の咲くやうに』
勝『大賛成です、皆サン与太彦サンの提案に従つて即時決行致しませう』
弥、六『吾々も賛成です』
と云ひ乍ら、着衣を川辺に脱ぎ捨て、谷川にザンブとばかり飛込んだ。四人は一度に水に浸り身体を清めて居る際、ブルブルブルと音を立てて、六公は水底に姿を隠して仕舞つた。勝公を初め三人は一生懸命に両手を合せ川上に向つて天津祝詞を奏上し終つてフト傍を見れば六公の姿が見えぬ。
勝『ヤア六サンは何処へ行つた。オーイ六サン何処だ』
と呼べど叫べど何の応へもなく、激潭飛沫の音轟々と聞ゆるのみ。弥次彦は、『ヤア大変だ、六公が何処かへ沈没しよつたな、これや斯うしては居られぬ哩、何とかして捜索をせなくてはならぬ、愚図々々して居ると沢山の水を呑んで縡れては取返しがつかぬ。オイ与太公どうせうかなア』
与『どうせうたつて仕方がないサ、大方六公の奴、潜水艇気取りで何処かの水底に暫時伏艇して居るのだらう。彼奴は水練に妙を得た奴だから、決して溺れるやうな気遣ひはないよ。貴様が松の枝に引つ懸つて居た時も、あの着物のまま谷川を泳ぎ渡つて平気で居る奴だから大丈夫だ。吾々を一寸驚かしてやらうと思うて洒落て居るのだよ』
弥『なにほど水泳の達人だと云つても油断は出来ない、さう楽観する訳にもいかない、諺にも、好く泳ぐものは好く溺る、と云ふ事がある。此奴はどうしても俺の考へでは名替をしよつたに相違ない』
与『名替つて何だい、流れの間違ひだらう』
弥『馬鹿云ふな、川底土左衛門と改名したらうと云ふのだ』
与『土左衛門とは怪しからぬ、真に大変だ。それだから道中に四人連はいかないと云ふのだ。オイ六公、生きて居るのか死んで居るか、ハツキリ返事をせぬかい』
弥『死んで居るものが返事をするかい、気を落着けないか』
与『一息を争ふ水の中だ、愚図々々して居る間に息が切れたらどうするのだ。コンナ時に落着き払つて居る奴は非人道的の骨頂だ。これがどうして周章狼狼せずに居られうかい。オーイ オーイ、六公、六道の辻を通るのは未だ早いぞ、コーカス参りの途中ぢやないか、早く浮かばぬか浮かばぬか、何処に踏み迷ふとるのだ。オーイ オーイ』
勝『エヽ仕方がない、滅多にこの激流を潜つて上る筈もなし、大方渦に巻込まれて流れたのかも知れませぬよ、谷川伝ひに此処を下つて探して見ませうか』
弥『探さうと云つたつて、アレあの通り碧潭激流、何うする事も出来ぬぢやありませぬか。コンナ時に鷹彦サンが居て呉れば捜索隊になつて貰ふのに大変都合が好いけれどなア、追々日も暮れて来る、困つた事だ。愚図々々して居ると吾々迄がドンナ災難に遇ふかも知れぬ、マア六公は六公で仕方がないとして、吾々三人は神様の大事なお使ひ道具だ。あまり足許の暗くならない間に頂上まで、駆けつけませう』
と先に立つて谷辺を駆け登る。二人も後に従ひ辛うじて黄昏頃、二十五番峠の頂上の山道に辿り着いた。
弥『サア宣伝使様、漸く吾々三人は無事に元の地点に凱旋しましたが、六公の奴困つたものですなア。小山村のお婆アサンが聞いたら、嘸歎く事でせう、老爺サンも中風なり、あれ程喜んで居たものを、アヽ世の中と云ふものは残酷なものだ。本当に煩悶苦悩の娑婆世界だ。何とかして万有一切どこ迄も不老不死で悪魔の襲来や不時の過ちの無い完全なる世界を作りたいものですなア』
与『アヽ人間を老少不定とはよく云つたものだ。無常迅速の感益々深しだワイ』
勝『泣いても悔んでもモウ仕方がない、暮れる時が来れば日は暮れる、人間も死ぬ時節が来たら死なねばならない、桜の花は永久に梢に止まらず、頭の髪は何時迄も黒い艶を保つ事が出来ないのは世の中の習はせだ。アーアもう過ぎ越し苦労はサラリと谷川へ流して刹那心を楽しまうかい』
与『実に切ない刹那心だナア。過越し苦労をせまいと思つても、今の今迄ピンピンと噪いで居つた六公の事がどうして忘れる事が出来やうぞ。一昨日も六公と、お前サン等二人の行方を捜した時には六公の美しい心が現はれて居た。見かけによらぬ親切な男だつた。それはそれは宣伝使様、貴方達のお姿が見えなかつた時には、あの男はどれだけ心配をしよつたか知れませぬぜ。二人の友達がもし国替をして居るのなら、私も一緒に川へ身を投げてお伴をしたいと迄云つた位だ。アヽ可憐さうな事をした。僅一日道連になつても十年の知己のやうに親切を尽す六公の心の麗しさ、これを思へば吾々も六公の道連になつてやりたいやうだ。アヽもう此世では彼奴の顔を見る事が出来ぬのか、情ない可憐さうだ』
と涙含み、身の置処なきさまに大地に身を投げた。
弥『コラコラ与太公、しつかりせぬか、失望落胆するのは貴様ばかりぢやない、俺だつて同じ事だよ』
と、又もや涙をハラハラと澪し顔に袖をあて、道の上にべたりと倒れ、身を揺つて遂には両人声をあげて泣き叫ぶ。勝公も涙の目を瞬たたきながら、
勝『コレコレ弥次彦サン、与太彦サン、さう気投げをするものぢやない、チト確りせぬか。男と云ふものは仮りにも涙を澪すものぢやない、あまり女々しいぢやないか』
と自分も亦落つる涙を袖にて拭ふ。
 愁歎の幕は漸く神直日大直日に見直し聞き直し幽かに巻上げられた。短き夜は既に明け離れ足許は仄と明かくなつて来た。一同は六公の身の上が矢張り気に懸ると見え東天に向つて合掌し、天津祝詞を奏上し、次で六公の無事生存せむ事を祈り、終つて又もや急坂を西北さして下り往く。
 足並早き下り坂にもいつしか暇を告げて、又もや茫々たる原野を走り行くこと数百丁、丸木橋のかけられた辺に辿りついた。
弥『宣伝使様。大分足も草臥れました。此処に腰をおろして一休み致しませうか』
勝『オヽこの川だつた、六公はこの水上で見失ひ、残念な事をしたが、今頃はどうなつて居るだらう』
 与太彦は忽ちウンウンと唸り出し、両手を組んで身体を動揺し始めた。
弥『ヤア又しても神憑りになりよつた。モウ悪魔の襲来は懲り懲りだ。オイ与太公の体に憑依つて居る悪霊共、速に退散致さぬか』
与『ロヽヽヽヽクヽヽヽヽ六ぢや六ぢや』
弥『エヽ碌でもない六の奴、貴様土左衛門になりよつて幽世の人間となりながら未だ娑婆が恋しうて迷うて来たか。好い加減に執着心を去つて、一時も早く霊神になれ。貴様はお竹を残して死んだのだから残り惜からう。残念なのは尤もだが、モウ斯うなつては仕方がない、早く神界へとつとと往つてお竹の場所を拵へて待つて居るがよからう。俺だとて三百年か千年の後かは知らぬが、何れ一度は行くのだから、景色のよい場所を取つて置いて呉れ。閻魔さまと相談して俺の場所だけには、契約済の札を立てて置くのだぞ。その代り俺は娑婆に居て、朝晩貴様のため冥福を祈つてやる。三途の川の鬼婆に出遇つたら、俺の云ふ事は何でも聞くのだから、何なら紹介状を書いてやらうか』
与『オヽヽヽレヽヽヽワヽヽシヽヽ、死んで居らぬ』
弥『定つた事よ、死んだものは娑婆に居らぬのは当然だ。居らぬ筈の貴様が何故コンナ処へ踏み迷ふて来るのだ』
与『オヽレヽヽワヽヽマヽダヽイヽ生て居る、決して決して死んで居らぬぞ、今に肉体を引つ張つて来て見せてやらう』
弥『ハア死んで居らぬと云つたのか、よく分つた、さうすると六の生霊だな、今何処に魔胡ついとるのか』
与『イヽ今に判る、此処で半時ばかり三人とも待つて居て呉れ。烏勘三郎に助けられて命は完全に助かつた。安心してくれ』
弥『ヤアそれや本当か、本当なら俺も嬉しい哩。これこれ宣伝使さま、余り甘い話だが、此奴は邪神が誑かして居るのではあるまいか、貴方一つ審神をして見て下さいな』
勝『神に間違ひはありますまい、軈て六サンの肉体に遇はれませう。暫く此処に坐つて神言を奏上し、神様にお礼を申しませう。モシモシ、六サンとやら、モウ判りました、お引き取りを願ひます。一二三四五六七八九十百千万、惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』
 六公の生霊は忽ち肉体を離れた。与太彦は元の如くケロリとしながら、
与『アヽ、矢張り六公は生て居ますなア、とうとう憑依つて来よつて、アンナ事を云ひよつた。余り六公々々と思ひ詰めて居たものだから、此方の一心が届いて六の生霊に感応したと見える、私の口を借つて云つた事が本当なら嬉しいがなア』
 三人が橋の袂に端坐して稍沈黙に耽る折しも一人の男を背負うて川から上り、ノソリノソリと上つて来る大男がある。後よりガヤガヤと囁きながら十数人の荒くれ男がついて来る。三人は怪訝な顔をして此男を凝視て居る。
男『ヤア貴方は三五教の宣伝使様』
三人『ヤアお前は烏勘三郎だないか』
『ハイ左様で御座います、六サンを連れて参りました』
弥『夫は夫は有難い、御苦労だつた。六サンは物言ひますかな、イヤ未だ生て居りますか』
烏『物も言はず動きもしませぬが、身体の一部に温味がありますので、火でも焚いてあたらしたら、此方のものにならうも知れぬと考へて、ブカブカと流れて来るのを吾々一同が命を的に川へ飛び込み拾つて来ました』
勝『それは有難い、唯今の先、六公が此処にやつて来てタツタ今、お目に懸ると云つて居ました』
烏『妙ですなア、先程此処へ来たとは合点が往かぬ。さうすると此奴は六サンぢやないのかなア、大方化物だらう。エヽ偉い苦労をさせよつて、呶狸奴が、打ちつけて蹂躙つてやらうか』
弥『マアマア待つた待つた、ソンナ手荒い事をしてどうなるものか、夫こそ本当に死んで仕舞はア。そつと其辺におろして呉れ、これから霊よびの神業だ』
烏『アヽ何だかテント、訳が分らぬやうになつて来たワイ。マア仕方がない、下さうかい』
と芝生の上にそつと下した。
弥『オヽ六公、貴様は仕合せものだ、待て待て今に魂返しをやつてやらう。サア宣伝使様、天の数歌を始めませうか』
 勝彦は無言つて、首肯きながら拍手を打ち声も細く静に落着き払つて、一二三四五六七八九十百千万と二回繰かへした。六公の体はムクムクと動き出し、直に起上り三人の顔をキヨロキヨロと眺め、
六『アヽお前は弥次公、与太公か、ヤア宣伝使様妙な処で遇ひました。三途の川を渡り損ねてスツテの事で二度目の国替をするところだつたが、烏勘三郎と云ふ男、十数人の弟子と共に身を躍らして川に飛び込み私を救ひ上げ、背に負ふて何処ともなしにトントン走り出したと思つたら丸木橋の袂、お前サンはやはり幽界の旅をして居なさるのか、今度は自分一人だと思つて居たのに何処までも交際のよい御親切なお方だ。持つべきものは朋友なりけりだ。アヽ、惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』
 弥次彦は六公の背を平手で三つ四つ、力を籠めて擲りつけた。
六『アイタヽヽヽ貴様は何をするのだい。驚いたな、娑婆に居る時から乱暴な奴だと思うて居たが、貴様未だ冥途に来ても改心出来ぬか』
弥『此処は冥途ぢやないぞ、二十五番峠を下つて数百丁来たところだ。お前は谷川に溺れて一旦縡れて居つたのだ。それを神様のお引き合せで勘三郎サンの親内の者に助けられ、此処に来たのだ。確りして呉れ』
 六公は目を擦りながら今更のやうな顔をして四辺を念入りに見廻し、
『ヤア、矢張どうやら娑婆らしい、ヤ、皆サン、偉い御心配をかけました、有難う。これはこれは烏勘三郎サン、その他親内の御一同、よう助けて下さいました。命の親だと思ふてこの御恩は生涯忘れませぬ』
烏『ヤア気がついて何より結構でした。神様にお礼を申しませう』
 茲に一同は神言を奏上し、宣伝歌を歌ひ、又もや四人の一行は勘三郎その他に厚く礼を述べ、丸木橋を渡つて二十六番峠を指して進み行く。
(大正一一・三・二五 旧二・二七 加藤明子録)
(昭和一〇・三・一六 於嘉義市嘉義ホテル 王仁校正)
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