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文献名1霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
文献名2第3篇 真奈為ケ原
文献名3第20章 思はぬ歓〔610〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-05-09 03:53:54
あらすじ落下した火団は大小無数の宝玉となると、悦子姫の体に吸収された。悦子姫は得も言われぬ神格と威厳を身につけた。そして、自分は日の出神の神霊を身に浴び、これより一人真名井ケ嶽に向かって進むと宣言して姿が見えなくなってしまった。
悦子姫に行かれてしまった一同は茫然とするが、鬼虎は仲間とおかしな掛け合いをしている。そのうちに夜が明けて、とにかく先へ進もうと一同は岩滝めがけて走り出した。
岩公は地理を知っているため、川から舟で先に回った。岩公の案内で、一行は日暮れ前に比治山の手前についた。
一行は近くの家に一夜の宿を乞いに行く。そこは去年、鬼虎たちが悪を働き、娘をさらっていった平助とお楢の家であった。平助爺は警戒して一行を泊めようとしない。
岩公は、鬼虎、鬼彦らの悪行のせいで断られるのだ、と非難する。そこへ、悦子姫が一人の娘を連れてやってきた。それはこの家のさらわれた娘・お節であった。平助とお楢は孫娘が帰ってきたのを見て喜んだ。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月16日(旧03月20日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所
OBC rm1620
本文の文字数6828
本文のヒット件数全 1 件/豊国姫=1
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本文  竜灯松の麓に落下し爆発したる大火光団は大小無数の玉となり、見る見る容積を減じ遂には小さき、金、銀、水晶、瑠璃、瑪瑙、硨磲、翡翠の如き光玉となり、珠数繋ぎとなつて悦子姫の全身を囲繞し忽ち体内に吸収されし如く残らず浸潤し了りける。其刹那悦子姫は得も云はれぬ神格加はり優しき中に冒すべからざる威厳を備へ、言葉さへ頓に荘重の度を加へて、一見別人の如く思はれ、無限の霊光を全身より発射するに至りぬ。一同は驚異の眼を見張り頭を傾け口を極めて讃嘆する。悦子姫は儼然として立上り、
『ハア一同の方々、妾は日の出神の神霊を身に浴びました。之より真名井ケ嶽に向つて進みませう。前途には大江山の魔神の残党、処々に散在し居れば、何れも十二分の御注意あれ、妾は之より一足先に参ります、左様なら』
と云ふより早く、矢を射る如く見る見る姿を隠したりける。
 後見送つて一同は、アーアーアーと歎息の息を漏すのみなりき。
音彦『折角此処迄同道申して来たのに、悦子姫さまは無限の神徳を身に浴び、吾々を後に残して御出発になつた。随分拍子抜けのしたものだ。万緑叢中紅一点のナイス、花を欺く悦子姫さまに放つとけぼりを喰はされて好い面の皮だ、七尺の男子殆ど顔色なしで御座る哩』
岩公『本当にさうだなア、せめて岩公だけなりともお伴につれて行つて下さりさうなものだのに、余り水臭いなア』
音彦『お前のやうな純朴な人間は間に合はないから、連れて行つて下さらないワ、音彦でさへも、置去りに遇うたのだもの』
岩公『生れ赤子のやうな、貴方の仰の通り純朴な吾々を何故連れて行つて下さらないのだらうなア』
鬼虎『岩公、貴様は余程お目出度い奴だ、音彦さまが純朴と仰有つたのは、間の抜けた人と云ふ事を婉曲に善言美詞に宣り直されたのだよ。約り純朴と云ふのは社会の訓練を経ない、元始的の犬猫同様の人間と云ふ事だよ』
岩公『馬鹿云ふな、音彦さまは蹴爪の生えた宣伝使だ、三五教の骨董品的苔の生えた、洗錬に洗錬を加えた、押も押れもせぬ宣伝使様ぢや。滅多の事を仰有るものか、オイ鬼虎、それはお前の僻み根性と云ふものだよ。この岩公は斯う見えても、何事も善意に解釈するのだ、物事を悪意に取れば何も皆悪になつて仕舞ふワ、貴様は改心の坂が越えられぬと見えるワイ』
鬼虎『それでも岩公、よく考へてみよ、不思議千万の事許りぢやないか、火の玉が幾つとも数限りなく分離して、終の果には容貌の麗しき悦子姫さまに、皆染着して仕舞つたぢやないか、神様の御霊でも矢張吾々のやうな形の汚い、魂の美しい奴よりも、姿の綺麗なナイスがお好だと見える、あゝコンナ事ならなぜ女に生れて来なかつたらう、エヽ天地の神様も聞えませぬ哩、父さま、母さま、何故私を絶世のナイスに生みて下さらなかつたのです、お恨めしう御座います、オンオンオン』
鬼彦『アハヽヽヽ、何を吐すのだい鬼虎の奴、お岩の幽霊の様な面をして、神様は申すに及ばず、大江山のお化だつて貴様の御面相を見たら、二の足も三の足もふむに極つて居るワイ、ソンナ謀反気を出さずに、神妙に、醜面児は醜面児らしくして居るのだよ』
鬼虎『エヽ一つ云うては一つかち込まれ、俺の身になつて見て呉れてもよいぢやないか。隣のお多福には肱鉄砲を喰ひ、お八には尻をふられ、嬶にや逃げられ、何とした因果な生れ付だらう、俺が三五教の信者になつたのもどうぞして美しい男になり、天下のナイスをして、此鬼虎に視線を集注させようと思ふばかりに入信したのだ。アーアー、神さまも顔や姿ばかりは何うする事も出来ぬのかなア、情ない、コンナ事なら死ンだが増だワイ』
一同『アハヽヽヽ』
鬼虎『ヤイヤイ、お前達は何を笑ふのだ、俺はこれでも真剣だぞ、一生懸命になつてるのだ、余り馬鹿にして貰ふまいかい』
鬼彦『憂愁煩悶の権利は貴様の自由だ、俺達は別に圧迫もせなければ干渉もせないよ、力一ぱい愁歎場の幕を開いて吾々一同に、永当々々御観覧に供するのがよからうよ、観覧するのもせぬのも吾々の、これ又自由権利だ、アハヽヽヽ』
音彦『ヤア、からりと夜が明けた、サア日輪様を背に負うて、又テクの継続事業をやらうかなア』
加米彦『サア、竜灯松を基点として岩滝迄、マラソン競争だ。腹帯を確り締めて、草鞋を確り結び、中途に落伍しないやうに、駆歩だ。オイチ二三』
 一同は岩滝目蒐けて膝栗毛に鞭打ち、一目散に走り行く。岩公、後方より、
『オイオイ待つて呉れ、俺一人遺して行くのか、折角神様がお造り遊ばした大切な人間様を、粗末にして道の端に零して置くと云ふ事があるものかい、オイオイ人間一匹袂にでも入れて一緒に走つて呉れい、俺は何うしたものか交通機関の何処かに損傷を来したと見えて、テクれない哩』
『エイ喧しい云ふな、愚図々々して居ると決勝点を人にしてやられる哩』
と一生懸命に後をも見ず雲を霞と駆け出したり。
岩公『アヽ、馬鹿ぢやなア、為いでも好い辛労をしよつて、此処から船に乗つて天の橋立を越え岩滝へお先にご安着だ。一つ皆の奴を威嚇して度肝を抜いてやらうかな』
と云ひつつ岩公は松の下に繋ぎある船の綱を解き、鱸を操りながら岩滝指して悠々と辷り行く。船は漸く岩滝に着きぬ。
岩公『アヽ智慧の足らぬ奴は可憐さうなものだワイ、この岩公は昔船頭をして居つたお蔭で地理に精しい。弓と弦程違ふ道程、何程走つたつて追ひ着きつこがあるものか、マア悠くりと成相山にでも登つて股覗きでもしてやらうかい』
 斯かる所へ音彦一行は息せき切つて走り来り、
音彦『サアサア皆さま、一寸一服致しませう、随分走りましたなア』
鬼彦『随分汗が出ましたよ、それにつけても岩公の奴、今頃は途中で屁古垂れてオイオイ俺を零して行くのかなぞと怨言を並べて居るぢやらう。足弱を連れて居ると却つて迷惑だ、彼奴は性来跛者だから、マラソン競争は不適任だ』
鬼彦『岩公の奴、片方の足が短いものだから、彼奴を走らすと恰で蛸が芋畑から逃げ出すやうなスタイルだ、随分奇妙奇天烈なものだナア、アハヽヽヽ』
 岩公、木の茂みの中より頭ばかり突き出して、
岩公『岩公の足は片方が短いのじやない、片方が長いのじやぞ』
鬼彦『ヤ、怪体な、岩公の声じやないか、何時の間に来よつたのだ、化物見たやうな奴じやなア』
岩公『ヘン、馬鹿にするない、片方の足が長いのだけ、それだけ貴様等とは行進が早いのだ。おまけに悦子姫さまがソツと俺の懐中へ玉を入れて下さつたものだから、宙をたつやうに此処迄無事御安着だよ。アハヽヽヽ』
鬼彦『ヤア岩公、嘘を云ふな、貴様はマラソン競争の規則を破つて窃と船に乗つて来よつたのだらう、竜灯松の下に繋いであつた船が此処に着いて居るぢやないか、条約違反だ、貴様はこれから三五教を除名するからさう心得ろ、ナアもし音彦さま、加米彦の宣伝使さま、吾々の提案は条理整然たるものでせう』
『アハヽヽヽ、オイ岩公司、アヽ結構々々、吾々は智慧の文珠堂に休みながら、其智慧を使ひ忘れた、お前は偉いものだ、アヽこれから、文珠の岩公司と名を呼ぶ事にして遣らう』
 岩公肩を聳やかしながら、
『ハイハイ有難う御座います、オイ鬼彦、鬼虎其他の端武者共、あの言葉を聞いたか、文珠の智慧の文珠の岩公司だ、之から何でも岩公司に智慧を借るのだぞ、オホン』
鬼彦『これだから馬鹿者には困ると云ふのだ、一寸褒めて貰へば直に興奮して、華氏の百二十度以上に逆上よる、一つ逆上の下るやうに海水でも呑ましてやらうか、ア、ドンブリコとやつて遣らうか』
岩公『大きに憚りさま、又今度お世話に預ります、サアサア音彦の宣伝使様、之から先は勝手知つたる道程だ、私が猿田彦の御用を勤めませう』
音彦『ヤアそれは調法だ。先頭は岩公司にお願ひ致さう』
岩公『これはこれは不束な岩公司に対し格外の抜擢をして下さいました。此上は恩命に報ゆるため粉骨砕身と迄は行きますまいが、可成道案内に対して可及的のベストを尽します。何うぞ御安心下さいませ』
鬼虎『岩公司の御先頭か、ねつから葉から安心なものだ。アハヽヽヽ』
 岩公の案内につれ音彦一行は黄昏前、比治山の手前に辿り着きける。
音彦『何うやら今日も之でお終ひらしい、何処かの家へ入つて一夜の宿を願ひ、明日早朝真名井ケ原の豊国姫様の御降臨地を探しませう、悦子姫さまも定めしお待ちかねでせうからねえ』
岩公『少し手前に幽かな火が見えませう、彼処に行けば大きな藁葺きの家が御座います。戸を叩いて一夜の宿を貸して貰ふ事にしませう、サアもう一息です』
と先に立ち潔く駆け出し、一同漸くとある一つ家の前に着きたり。岩公は門口に立ち、
『もしもしお爺さま、お婆アさま、私は比沼の真名井や比治山の神様に参詣する者で御座います、竜灯松から此処迄テクつて来ましたが、日はすつぽりと暮れ、膝坊主は吾々の命令を肯ぜなくなりました。何うぞ庭の隅でも宜敷いから一夜の雨露を凌がせて下さいませ』
爺『これお楢、何だか門口に人声がするやうだ、門を開けて調べてお出で』
お楢『平サン、お前あれだけ酒を呑みてもまだ買うて来いと云ふのかい、かう闇くなつてから私だつて堪らないぢやないか、去年のやうに大江山の鬼雲彦の家来の鬼虎にでも出遇つたら、ドンナ目に遇ふか分つたものぢやない、家の娘もとうとう鬼虎に攫はれて仕舞つたぢやないか、オンオンオン』
平助『アヽ、年が寄つて耳の聞えぬ奴も困つたものだ。アヽ仕方がない、私が行つて開けてやらうかな、ドツコイシヨ、アイタヽヽ、腰の骨が強ばつていやもう庭を歩くのも大抵の事ぢやないワイ』
と傍の杖を取りエチエチと表に出て戸をガラリと開け、
『この闇いのにお前さま達は何用あつて御座つた』
音彦『ハイ、吾々は比治山の神様に参詣を致すもので御座います、御覧の通り日も暮れました、何うぞ庭の隅つこでも宜敷いから一夜だけおとめ下さい、お弁当も持参致して居ります、唯とめてさへ貰へばそれで宜敷い』
平助『見れば随分沢山の同勢だが野中の一つ家だと思つて当て込みて来たのだな、とめる事は金輪際出来ませぬ哩、サアサアとつとと帰つて下さい、爺と婆と二人暮しの家ぢや、不都合だらけ平にお断り申ます』
音彦『左様で御座いませうが、折入つてお頼み申す、吾々は決して怪しいものでは御座いませぬ』
平助『去年の此頃だつた、お前のやうな日が暮れてから家の門口に立ち、庭の隅でもよいからとめてくれと云うて二人の旅人が出てきよつた、其奴が又どえらい悪魔で大江山の鬼雲彦の家来とやらで何でも鬼彦、鬼虎と云ふそれはそれは悪い奴ぢや、其奴めが爺と婆とが爪に火を点して蓄めた沢山のお金を掠奪り、天にも地にも掛け替へのない一人の娘を掻攫うて、今に行方が分らぬのだ、お前さまも大方ソンナ連中だらう、皺の寄つた爺と婆とが細い煙を立て暮して居るのだが、婆は爺が頼り爺は婆が頼りだ、婆とは云ひながら矢張女だ、昔の別嬪だ。もし婆でも夜の間に掻攫へられて仕舞ふものなら、この爺は蟹の手足をもがれたやうなものだ、エヽ気分の悪い、帰りて下され』
とピシヤツと戸を締める。
音彦『アヽ困つたなア、何うしたら宜からうか、今晩は野宿でもして一夜を明かさねば仕方があるまい』
岩公『もしもし音彦さま、千本桜の鮓屋の段ぢやないが、愛想のないが愛想となると云ふ事がありますが、此処の爺さまは一旦此鬼彦、鬼虎に偉い目に遇つたものだから、人さへ見れば怖い怖いと思うて居るのですよ、日の暮に宿を頼む奴は人奪りだと云ふ先入思想に左右されて居るものぢやから、アンナ事を云ふのでせう、誠の力は世を救ふと云ふから、も一つ頼みて見ませう』
と又もや戸を叩き、
岩公『もしもし、お爺さま、吾々は三五教の宣伝使のお伴して来た誠一つの人間で御座います。何卒一晩だけとめて下さいな』
平助『ナニツ、三五教だと、ソンナ教は未だ聞いた事もないワ、穴が無うて彼岸過の蛇のやうに探して歩いとるのか、ソンナ人には尚更宿つて貰ふ事はお断りぢや、一人よりないお楢を掻攫つて去なれては耐らぬからなア、ゴテゴテ云はずにお帰りなさい』
岩公『アヽ、仕方がない、これ程事をわけてお頼みするのに聞いて下さらぬ、世界に鬼はある。鬼と悪魔の世の中だ、慈悲も情も知らぬ奴許りだ。オイ鬼彦、鬼虎の両人、偉う沈黙して居よるな、貴様の古疵が物を云うて今晩の難儀だ、貴様一つ謝罪らぬかい』
鬼彦『もしもし音彦様、一晩位寝なかつたつて好いぢやありませぬか、これも修業だと思つて野宿を致しませうかい』
鬼虎『アヽさうだ、一晩や二晩野宿して斃ばるやうな事では三五教の信仰は出来ない、ねえ宣伝使様、如何で御座いませう』
音彦『ソンナラマアさうするかなア』
岩公『ヘン旨い事を云つて居やがらア、爺婆に会はす顔があるまい、旧悪露見の恐れがあるから、貴様としては無理もないが、綺麗薩張と爺様婆様にお断りを申たら何うだ、何時迄も悪を包みて居ると罪は取れぬぞ、罪と云ふ事は包みと云ふ事だ、何卒改心の証拠に爺さまに一つお詫をして思ふざま十能で頭を打いて貰つたら、ちつとは罪が亡びるだらうよ』
 鬼彦、鬼虎、両手を組み首を傾け、大きな息を漏らし居る。此時前方より二人の女走り来るあり。一同は目を円くし、よくよく見れば、悦子姫と一人の娘なりけり。
娘『これはこれはお姫様、いかいお世話になりました、これが妾のお祖父さま、お祖母さまの家で御座います、サア何卒お入り下さいませ、嘸や祖父や祖母が喜ぶ事で御座いませう』
悦子姫『ヤア妾は此処迄送り届けたならばこれで安心してお暇致しませう』
娘『何卒さう仰有らぬと見苦しい破家なれど、渋茶なりと上げたう御座います、一寸でも宜敷いからお入り下さいませいナ』
 闇の中より、
『ヤア貴女は悦子姫様では御座いませぬか』
悦子姫『さう云ふお声は音彦さま。この闇がりに何をして居らつしやるの』
音彦『余り暗くなりましたので一夜の宿をお強請りして居るのですが、お爺さま仲々許して呉れないのですよ』
悦子姫『ヤア、委細の様子は此娘さまから聞きました、済みた事を云ふぢやないが、随分鬼彦さまも鬼虎さまも罪な事をなさつたものぢやナア、お爺さまが泊めて呉れないのも無理はありませぬ、妾がこれからお爺さまに此娘を渡し、願つて見ませう』
娘『お祖父さま、お祖母さま、節で御座います、神様に助けられ無事に帰つて来ました。何卒開けて下さいませ』
 平助此声に驚き、
『ヤア何、節が帰つた。オイオイお楢、節が帰つたといなア』
お楢『爺さま耳が確り聞えぬが、節が帰つたと云うたのか、ハテ合点の行かぬ事だ、大方大江山の悪神の眷族奴が節の作り声をして此家に入り込み、一つ家を幸ひに吾等夫婦の者を引つ張つて去ぬ計略かも知れぬ、迂闊り開けなさるなや』
 門口より、お節は優さしひ声で、
『お祖父さま、お祖母さま、何卒開けて下さい、節で御座います』
平助『何吐しよるのだ、其手は食はぬぞ、作り声をしよつて、お祖父さま、お祖母さま、節で御座います……ナアーンテ大江山に捕へられて鬼の餌食になつた娘が戻つて来て耐るかい、これやこれや門口の奴共、ソンナ計略に乗る平助ぢやないぞ、入れるなら入つて見よ、陥穽が拵へて釘が一面に植ゑてあるから、命が惜く無ければ無理に入つて来い』
 娘は無理に戸を押し破り飛び込みたるを、爺は、これを見て、
『ヤア紛ふ方なき娘のお節、好うまア帰つて呉れた。オイ、ぢつとしてぢつとして、動くと危ないぞ、一つ踏み外せば陥穽に陥る、大江山の鬼の来た時の用意に陥穽が拵へてあるのぢや、今お祖父が指揮をしてやるから、其外は歩く事はならぬぞや』
と云ひながら杖をもつて庭に線を引張つた。お節は線の上を歩いて、爺の居間に進み入る。
お楢『ヤア、お前はお節、好う帰つて下さつたナア』
と嬉し泣きに泣き伏しぬ。平助もお節の体に獅噛みつき、
『ヤア戻つたか、どうして居つた』
お節『お祖父さま、お祖母さま、会ひたかつた哩な』
と三人一度に声を放つて泣き崩れける。
(大正一一・四・一六 旧三・二〇 加藤明子録)
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