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文献名1霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
文献名2第1篇 雪山幽谷よみ(新仮名遣い)せつざんゆうこく
文献名3第3章 生死不明〔614〕よみ(新仮名遣い)せいしふめい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-02-13 21:18:43
あらすじ本物のお節は、まだ岩窟に閉じ込められたままであった。お節は日の出神の夢のお告げに勇気をつけられて、三五教の宣伝歌を歌いながら岩窟の中で忍んでいた。鬼虎と鬼彦がやってくると、お節は怒って傍らの岩石を取って打ちかかってきた。また、岩室の戸をあけると、日ごろから岩石で作ってあった石槍で、二人に突きかかる。鬼虎と鬼彦は岩窟を元来た道へ逃げていく。お節はつまづいて気を失うが、鬼虎は懸命に祈願して息を吹き返す。お節は鬼虎が自分を介抱してくれたことを不思議に思うが、また突いてかかる。そこへ平助とお楢が現れて、再会を果たす。平助とお楢の話を聞いて、お節は鬼彦と鬼虎が改心したことを知り、一行は真名井ケ原に進んで行く。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月21日(旧03月25日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年1月10日 愛善世界社版39頁 八幡書店版第3輯 538頁 修補版 校定版41頁 普及版17頁 初版 ページ備考
OBC rm1703
本文のヒット件数全 1 件/豊国姫=1
本文の文字数4595
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本文  真名井ケ岳の山奥の、暗き岩窟に閉ぢ籠められし、丹波村の平助が孫娘お節は、色青褪め痩衰へて、手足は針金の如く吹く呼吸も細り勝ち、涙片手に口説き言、他所の見る目も憐れなり。人里はなれ月日の光さへも通はぬ此の岩窟の奥深く、閉じこめられしお節は、初冬の霜に身を啣つ、秋野の虫の断末魔、悲しき声を張り上げて、思ひを歌に任せつつ、悶々の情を慰めつつありける。
『思へば去年の雪の空  春とは言へど未だ寒く
 四方の山々雪積みて  野分烈しき夕暗に
 吾家を尋ね出で来る  怪しの男二人連
 数多の枉人門口に  忍ばせ置きて年老し
 爺サン婆サンや妾まで  言葉巧に誑りつ
 一間の内に鬼彦と  心の猛き鬼虎が
 吾等を計る空寝入り  水も眠れる丑満の
 鐘を合図に起き出でて  何の容赦も荒縄の
 思ひも寄らぬ強盗が  憐れや爺さま婆アさまを
 罪も無いのに無残にも  家の柱に縛り附け
 長い刃物を抜き放ち  宝を渡せ金出せと
 退引ならぬ強談判  爺やも婆アやも驚いて
 生命ばかりはお助けと  声も憐れに頼み入る
 若い時から苦労して  貯めた宝を奪ひ取り
 尚飽き足らぬ鬼共は  何の容赦も情なや
 二人在はする目の前に  思ひも寄らぬ横恋慕
 嫌と申さば老人夫婦  刀の錆にして呉れむ
 お節如何にと詰めかくる  妾は繊弱き乙女子の
 何の応答もなくばかり  鬼や悪魔の瀰漫りて
 威猛り狂ふ世の中を  清め助くる神々は
 此世の中に無きものか  善は衰へ悪栄え
 世は烏羽玉の真の闇  やみやみ魔神に捕へられ
 名も恐ろしき大江山  鬼雲彦の面前に
 荒々しくも引き出され  絶え入る許りの思ひして
 網代の駕籠に放り込まれ  目も廻ふ許りゆらゆらと
 揺られて来る比治山の  北に聳ゆる真名井岳
 雪積む山の谷の底  岩を開いて押しこまれ
 黒白も分かぬ暗がりの  此巌窟に只一人
 押しこめられて日を送る  扨も扨も世の中に
 妾程因果があるものか  如何なる宿世の罪業か
 廻りて茲に父母の  お顔も知らず慈悲深き
 爺やと婆やに助けられ  花の蕾の最中を
 霜にはうたれ荒風に  悩まされつつ味気なき
 岩窟の中の憂き住居  昼夜分かぬ身の宿世
 救ひ給へと天地の  神に願を掛巻くも
 畏き神の夢の告  日の出神と現れまして
 声厳かに宣らす様  アヽ愛らしきお節嬢
 今に汝の此憂き目  晴らし与へむ汝が慕ふ
 爺、婆さまに会はさむと  詔らせ給うと見る中に
 忽ち夢は破られて  吾身は悲しき岩窟の
 中にくよくよ物案じ  此世に神が在しまさば
 一日も早く片時も  疾く速けく親と娘の
 切なき思ひを憐れみて  救はせ給へ天津神
 国津神等八百万  万の神の御守護りに
 天の岩戸の開く如  これの魔窟のすくすくに
 開いて妾を明るみに  救はせたまへ惟神
 御霊幸倍坐しませよ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 曲津の神は荒ぶとも  誠の神は世を救ふ
 此神言を力とし  朝夕に吾宣りし
 厳の言霊何時しかに  一度に開く梅の花
 春は来れど花咲かぬ  此岩窟の佗住居
 憐れみ給へ百の神  此世を造りし神直日
 心も広き大直日  只何事も人の世は
 直日に見直せ聞き直せ  身の過は宣り直せ
 委曲に詳細に教へたる  三五教の神の教
 アヽ有難や尊しや  心の岩戸はさやさやに
 蓮の花の匂ふ如  開いて空に美はしき
 真如の月は輝けど  又もや曇る胸の空
 身は岩窟に囚はれて  空に輝く日月の
 光も知らず降りしきる  涙の雨は何時迄も
 比沼の真名井の此岩窟  何時かは逃れ厳霊
 百の苦しみ瑞霊  三五の月の輝きて
 思ひも深き親と子が  互に手に手を執り交はし
 抱きて泣かむ時は何時  アヽ惟神々々
 霊幸倍坐しませよ  アヽ惟神々々
 霊幸倍坐しませよ』
と幽かに女の謡ふ声きこへ来たりぬ。
鬼彦『ヤア此処だ此処だ、久し振りでお節さまのお声が聞えて居る。マア之で生命だけは助かつたと云ふものだ、ナア鬼虎、先づ安心したが宜からうぜ』
鬼虎『何と細い嫌らしい声ぢやないか、実際お節さまの声だらうか、名に負ふ魔の岩窟、何が化けて居るか分つたものぢや無い、とつくりと調べた上の事だよ』
 鬼彦は、
『もしもし』
と岩穴を覗き、
『私で御座います』
 お節、フツと此声に驚き窓口を見れば擬ふ方なき鬼彦の顔、お節は見るより、
『ヤア汝は大江山の鬼雲彦が家来鬼彦ではないか、年老り夫婦の汗や膏を絞つた宝を奪ひ取り、剰へ妾を誘拐し、かかる巌窟に長らくの間閉ぢこめ置いた汝悪神の眷属、此処へ来たのは日頃念ずる神様のお引き合せ、さア覚悟を致せ』
と云ふより早く有りあふ岩石を右手に握り、鬼彦の面部を目蒐けて打ちつけたるに、狙ひ外れて岩壁に中り、かたかたと音して巌窟内に落ちた。お節は又もや拾ひ上げ鬼彦の面部を目蒐けて打たむとするにぞ、鬼彦は驚いて覗いた顔を竦め乍ら、
『モシモシお節さま、其腹立ちは御尤もだが、私は去年の鬼彦とは雲泥の相違だ。今は前非を悔い、お前を助けに来たのだ、平助さまもお楢さまも岩窟の入口に待つて御座る。サアサア開けてあげようから出て下さい』
お節『能くベラベラと囀る汝が侫弁、其手段にのるものか、早く此場を立ち去れ』
鬼彦『其御立腹は一応御尤もで御座います、然し乍ら何時までも此処に御座つても詮なき事、何はともあれ今岩戸を開けますから何卒お出まし下さい。アーア一旦悪い事をすれば何時までも悪い事をする様に云はれる哩、人間と云ふものは常が大切だと云ふのは此処の事かなア、これこれ鬼虎、吾々許りにものを云はして貴方は沈黙して居るのか、ヤア男らしくも無いメソメソ泣いて居るのだな、エーじれつたい、泣くのなら又悠くり後で泣け、千騎一騎の場合だ、お前も一つ事情をお節さまの得心の往く所まで打明けて呉れ、此岩戸を開けるのは易い事だが、お節さまの諒解を得てからで無いと、開けるが最後出かけに如何な目に遭はされるか分つたものぢや無い、第一交渉が肝腎だよ』
鬼虎『アーア、仕方が無いな、此鬼虎の様な鬼の様な虎の様な名の付いた悪党の俺でも、今迄の悪業が記憶から浮かんで来て、心の鬼に五臓六腑を抉られる様だ、アーア、開けねばならず、開けてはならず、開けて悔しい玉手箱、お節さまに会はす顔が如何してあらうか』
と声を放つて泣き伏したり。
鬼彦『おい、岩公、貴様は無疵だ、俺に代つて一つ此穴から顔突き出し談判をして呉ないか、特別弁理公使だ、之が甘く往つたら貴様を勲一等にしてやるから』
岩公『勲一等でも何でも御免だ、迂濶首でも出して笠の台でも引き抜かれて見よ、よい面の皮だ、聖人君子は危きに近寄らずだ、マアやめとこかい』
鬼彦『エー、何奴も此奴も鬼味噌許りだ、強相な顔して居よつて胆玉のちよろこい腰抜けだなア、オイ勘公、櫟公、貴様に交渉委員を任命する』
勘公『何を吐すのだい、此談判は鬼彦、鬼虎の避くべからざる義務があるのだ、誰が之だけ辛い時節に人の責任までも引受けて危い事をする奴があるものか、ナア櫟公』
櫟公『オヽさうだ、マアマア今日は日和が悪いから止めとこうかい』
鬼彦『エー、仕方がない、開けてやらう』
と合図の岩壁をグツと押し開けば、お節は日頃鍛えて置いた岩壁で造つた鋭利な石槍を逆手に持ち、鬼彦目蒐けて突きかかる。鬼彦は元来し隧道を生命からがら逃び出す、岩公はお節の後より、無手と許り抱きとめ、
岩公『モシモシお節どの、マアマアお待ち下され、之には深い仔細が御座います』
『此期に及んで何の言訳、汝も鬼雲彦が一派の悪魔共、大神の神力を身に帯びたる丹波村のお節が武者振り、思ひ知れよ』
と振り返り突いてかかる。岩公は又もやトントンと元来し隧道を頭を打ち臂を岩壁に打ちつけ乍ら、倒けつ転びつ出口の方へ走り行く。お節は四辺をキヨロキヨロ見廻しつつ、
『ヤア其方は擬ふ方なき鬼虎では無いか、克くも妾を苦しめよつたな、サアもう斯うなる上は百年目、お節が怨恨の刃、喰つて見よ』
と真向に振り翳し飛びかからむとする其形相の凄じさ。
鬼虎『モシモシお節さま、悪かつた悪かつた、何卒許して下さいませ、之には深い、仔細がある』
お節『其言訳を聞く耳は持たぬ』
と突いてかかる。鬼虎は前後左右に巌窟内に体を躱し鋭鋒を避けつつあつた。如何はしけむ、お節は巌に躓き其場に打ち倒れ悶絶したりけり。
鬼虎『アヽ失敗つた、これや大変だ、おいおい勘公、櫟公、貴様は早く出口へ行つて鬼彦、岩公に此次第を急報致せ。俺はお節さまが気の付く様に介抱して居るから何卒早く行つて呉れ、おい崎嶇たる隧道の中、慌てて躓き怪我するな、早く行つて来い』
『よし合点だ』
と勘公櫟公は一生懸命に出口に向つて駆出したり。鬼虎は叶はぬ時の神頼み、天津祝詞を奏上し天の数歌を声高らかに奏上し居る。
 一方口の岩窟の声は出入口を兼ねたる岩窟の前の老夫婦を始め鬼彦、岩公等が耳に透き通る如く聞え来たりぬ。勘公、櫟公は岩窟の中より此場に現はれ、
『モシモシ鬼彦、岩公の大将、タヽヽヽヽ大変だ、シヽヽヽヽ死んだ、死んだ、死んだ、死んだ哩』
平助『エ、何と仰有る、それは誰が死んだのだい、判然言はないのか』
勘公『これが如何して判然言はれやうかい、シヽヽヽ死んだのぢや死んだのぢや、アーン、アンアンアン』
岩公『鬼虎が死んだのか』
勘公『シヽヽヽ、死んだのは死んだのぢやが、しつかりは知らぬ哩、行つて見れや分る、もう此上言ふのは勘弁へて呉れ』
鬼彦『お節どのが死んだのぢや無いか』
勘公『シヽヽヽ知らぬ知らぬ、マアマア兎も角二人の内一人が死んだのぢや』
平助『これこれお前達、此年寄を嬲るのか、若しお節が死んででも居つたら年は老つてもまだ何処かに元気がある、お前達の三人や五人、捻り潰してやるから、さう覚悟を致せ』
勘公『それでも私丈けは除外例でせうなア』
平助『何、何奴も此奴も皆殺しだ』
櫟公『皆殺しなら何程でも頂戴致します』
岩公『エー、ソンナ処かい、サアサア早く行かうぢやないか、愚図々々して居ると折角助けたお節さまの生命が危いぞ、モシモシ爺さま、何は兎もあれ、奥へ行つて調べませう、サア来い、来れ』
と先に立つて走り行く。平助、お楢はブツブツ呟き乍ら四人が後に随いて行く。鬼虎は一生懸命神言を奏上しウンウンと神霊の注射を行つて居る、お節は漸く息吹き返し顔ふり上げ、見れば日頃怨恨重なる鬼虎が真裸の儘両手を組み一生懸命に祈願して居る。
お節『ヤア、訝かしき汝の行動、極悪無道の身を以て殊勝らしく神を念じ、妾を詐らむとするか、思ひ知れや』
と又もや突いてかかる。
鬼虎『マアマアマア、待つて下さい、お節さま、之には深い理由がある、待つた待つた』
お節『何、待つたもあるものか』
と突きかかるを、鬼虎は右に左に体を躱し、
『お鎮まりお鎮まり』
と言ひつつ迯げ廻る。此処へ転げる様に這入つて来た平助お楢は、
『ヤアお前はお節じやないか』
お節『ヤア、爺さまか、婆さまか、如何して此処へお居でになりましたえ』
『ヤ、お節、会ひ度かつたわいなア』
『ヤ、能う、マア無事で居て呉れた』
と三人互に抱き付き前後を忘れて嬉し涙にかき暮れる。暫時あつて平助夫婦の証言によりお節はやつと安心の上、改めて祝詞を奏上し一行八人此岩窟を立ち出で、五人の裸男と共に道を左にとり真名井ケ岳の豊国姫の出現場を指して登り行く。
(大正一一・四・二一 旧三・二五 北村隆光録)
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