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文献名1霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
文献名2第2篇 千態万様よみ(新仮名遣い)せんたいばんよう
文献名3第10章 四百種病〔621〕よみ(新仮名遣い)しひゃくしゅびょう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-02-14 00:34:04
あらすじお楢が黒姫を案内して自宅に戻ってくると、お節はうなされて青彦の名を呼んでいた。黒姫は、日の出神の筆先と称して、高姫の神諭を読み聞かせ始めた。そして、侍女二人に、ウラナイ教の宣伝歌を歌わせ舞わせた。するとお節の容態はますます悪くなり、苦しみ始めた。それを見てお楢は嘆き始める。黒姫は、神界の御用が急ぐと言い訳をして、その場を立ち去ってしまう。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月22日(旧03月26日) 口述場所 筆録者東尾吉雄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年1月10日 愛善世界社版147頁 八幡書店版第3輯 578頁 修補版 校定版154頁 普及版65頁 初版 ページ備考
OBC rm1710
本文のヒット件数全 1 件/瑞の身魂=1
本文の文字数6008
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本文  真名井ケ原の珍の宝座に参拝せむと、息せき切つて進み行きたるお楢は、ゆくりなくもウラナイ教の鍵鑰を握れる女豪傑黒姫に説き伏せられ、くれりと心機一変し、手の掌足の裏を覆して、スタスタと黒姫一行を伴ひ、漸く丹波村の伏屋に着きにける。
お楢『モシモシ、ウラナイ教の大将様、此処が私の荒屋で御座います。サアサアどうぞお這入り下さいませ。嘸お疲労でせう』
黒姫『ナニ、これしきの雪道で疲労るやうな事で、三千世界の神界の御用が出来ますものか、ウラナイ教にはソンナ弱虫は居りませぬ、オホヽヽヽ』
お楢『どうぞ気をつけてお這入り下さい、大江山の鬼落しが掘つて御座いますから、ウカウカ這入ると大変な事が出来致します。サアサア私の通る処を足をきめて通つて下され、一足でも外を歩くと、陥穽へ落ち込みますから』
黒姫『ナント用心の良い事だナア、アヽ感心々々、何と云うても比沼の真名井に瑞の霊の悪神が現はれる世の中ぢやから、この位の注意はして置かななりますまい。サアサア、照さま、清さま、私の後を踏みて来るのだよ』
お楢『モウ大丈夫で御座います。サアサアどうぞお上り下さいませ』
黒姫『ハヽア、平助どのはこの井戸の水を汲みて倒けたのだな。ホンニホンニ危なさうな井戸ぢや。お婆アさま、お前も随分年をとつて居るから気を付けなされよ』
お楢『有難う御座います。娘も嘸喜ぶことで御座いませう』
 お節は夢中になつて、
『青彦さま、青彦さま』
と呼ンで居る。
黒姫『ドレドレ、これから神さまへ御祈念をして上げよう。それについても一つ妾の話を篤りと聞いた上の事だ。お婆アさま、聞きますかな』
お楢『有難い神さまのお話、どうぞ聞かして下さいませ』
黒姫『この娘の病気は、全体けつたいな病ぢや。病気には四百種病というて沢山な病がある。其中でも百種の病は放つて置いても癒る。あとの百種は薬と医者とで全快する。又あとの百種は、神さまぢや無いと癒らぬのぢや。そして、あとの百種は神さまでも医者でも薬でも癒りはせぬ。これを四百種病と云ふのだ。この娘は第三番目に言うた神信心で無ければ到底癒らぬ。お医者さまでも有馬の湯でもと云ふ怪体な粋な病気ぢや、青彦々々と云ふのは、大方妾の使つて居るウラナイ教の宣伝使、今は三五教に呆けて、この間も音彦とやらの後についてウロついて居た男ぢや。この娘が快くなつたら青彦を養子に貰ひ、娘から青彦を説きつけて、又旧のウラナイ教に逆戻りさせる神様のお仕組の病気に違ひない。お婆アさま、これを良く承知して居て貰はぬと癒す事は出来ぬぞい』
お楢『ハイハイ、ドンナ事でも生命さへ助けて下されば承はります』
黒姫『サア、これから日の出神様のお筆先を頂くから聞きなされ、このお節の守護神にも読みて聞かして改心致させねば、三五教の悪守護神が憑いて居るから、追ひ出す為に結構な御筆先を聞かして上げよう。謹みて聞きなされや』
筆先『変性男子の系統の御身魂、日の出の神の生宮、常世姫命と現はれて、高姫の肉体を藉りて、三千世界の世の初まりの、根本の根本の、身魂の因縁性来から、大先祖がどう成つて居ると云ふ事を明白に説いて聞かす筆先であるぞよ。変性男子は経の御役、誠生粋の正真の大和魂、一分一厘違へられぬ御役であるぞよ。毛筋の横巾も変性男子の系統の肉体に憑つて書いた事は間違ひは無いぞよ。三千世界の大立替大立直しの根本の結構な御筆先であるぞよ。変性女子の身魂は緯の御用であるぞよ。緯はサトクが落ちたり、糸が切れたり、色々と致すから当にならぬ悪のやり方であるから、変性女子の書いた筆先も、申す事も、行状も真実に致すでないぞよ。一つ一つ審神を致さねば、ドエライ目に会はされるぞよ。女子の御役は悪役で、気の毒な御用であるぞよ。身魂の因縁性来で、善と思うて致す事が皆悪になるぞよ。善にも強い悪にも強い常世姫の筆先、耳を浚へて確り聞いて下されよ。毛筋も違はぬ誠一つの、生粋の大和魂の、日の出神の生宮の常世姫命の性来、金毛九尾の悪神を、一旦キユウと腹に締め込みて改心させる御役であるぞよ。それに就いても黒姫の御用、誠に結構な御役であるぞよ。竜宮の乙姫さまがお鎮まり遊ばして御座るぞよ。魔我彦には日の出神の分霊、柔道正宗が守護致すぞよ。蠑螈別には大広木正宗の守護であるぞよ。此神一度筆先に出したら、何時になりても違ひは致さぬぞよ。違ふ様にあるのはその人の心が違うからだぞよ。唐と日本の戦ひが始まるぞよ。日の出神の教は日本の教であるぞよ。変性女子の教はカラの教であるぞよ。変性男子の筆先と、日の出神の筆先とをよつく調べて見て下されよ。さうしたら変性女子の因縁がすつくり判りて来て、ドンナ者でも愛想をつかして逃げて去ぬぞよ。アフンと致さなならぬぞよ。常世姫の御魂の憑るこの肉体は、昔の昔のさる昔、またも昔のその昔、モ一つ昔の大昔から、此世の御用さす為に、天の大神が地の底に八百万の神に判らぬ様に隠して置かれた誠一つの結構な生身魂であるから、世界の人民が疑ふのは無理なき事であるぞよ。神の奥には奥があり、その又奥には奥があるぞよ。三千年の深い仕組であるから、人民の智慧や学では、ソウ着々と判る筈は無いぞよ。今迄の腹の中の塵埃をすつくりと吐き出して誠正真の生粋の大和魂に成りて下さらぬと、誠のお蔭を取り外すぞよ。アフンと致して眩暈が来るぞよ。何程変性女子が鯱になりて耐りても、誠の神には叶はぬぞよ。此の肉体は元を査せば、変性男子の生粋の身魂から生れて来た女豪傑、若い時分から男子女と綽名を取つた、天狗の鼻の高姫であるぞよ。今はフサの国の北山村のウラナイ教の太元の、神の誠の柱であるぞよ。此世を水晶に立直す為に、永い間隠してありた結構な身魂であるぞよ。世界の人民よ、改心致されよ。誠程結構は無いぞよ。苦労の花が咲くのであるぞよ。苦労無しにお蔭を取らうと致して、変性男子の系統を抱き込みて、我身の我で遣らうと致したらスコタンを喰うぞよ。開いた口がすぼまらぬ、牛の糞が天下を取るとは、今度の譬であるぞよ。神の申す事をきかずに遣つて見よれ、十万億土の地獄の釜のドン底へ落して了ふぞよ、神界、幽界、現界の誠の救ひ主は、変性男子と日の出神の生宮とであるぞよ。女子の身魂は此世の紊れた遣り方を見せるお役、天の岩戸を閉める御苦労なかけ替への無い身魂であるぞよ。これも身魂の因縁性来で、昔の因縁が廻つて来たのであるから、神を恨めて下さるなよ。吾身の因縁を恨みて置こうより仕方が無いぞよ。天にも地にもかけ替への無い日の出神の生宮が、三千世界の神、仏事、守護神、人民に気をつけて置くぞよ。改心さへ出来て、この常世姫の申す事が判りたら、如何な事でも叶へてやるぞよ。病位は屁でも無いぞよ。魂を磨いて改心なされ。常世姫が気をつけた上にも気を付けるぞよ。俄信心間に合はん。信心は正勝の時の杖に成るぞよ。一時も早く身魂の洗濯いたして、神に縋りて下されよ。昔は神はものは言はなかつたぞよ。時節来りて艮の金神世に現はれて、三千世界の立替へ立直しを遊ばすについて、第一番に、御改心なされたのが竜宮の乙姫様であるぞよ。この竜宮の乙姫様は、黒姫の肉体にお鎮まり遊ばして、日夜に神界の御苦労に成りて居るから、粗末に思うたら、神の気ざわりに成るぞよ。高姫の肉体は元の性来が勿体なくも天の大神様の直々の分霊であるから、日の出神が引つ添うて、世の立替の地となつて、千騎一騎の御活動を遊ばす御役となりたぞよ。金勝要の大神、坤金神も、一寸我が強いぞよ。早く改心なさらぬと、神界の御用が遅れるぞよ。神界の御用が遅れると、それ丈、神も人民も難儀を致すから、早く改心致して、変性男子と常世姫の御魂の宿りて居る日の出神の生宮の申す事を聞いて下されよ。きかな聞くやうに致して改心させるぞよ。三五教は神の気障りがあるから、神は仕組を変へて此の肉体に御用をさして居るぞよ。神力と智慧学との力比べ、常世姫の神力が強いか、変性女子の智慧学が強いか、神と学との力比べであるぞよ。神の道には旧道と新道と道が二筋拵へてありて、何の道へ行きよるかと思うて、神がジツと見て居れば、新道へ喜びて行きよるが仕舞にはバツタリ行当りて了うて、又もとの旧道へ復つて来ねば成らぬ様に成つて了うぞよ。大橋越えて未だ先へ、行方判らぬ後戻り、慢神すると其通り、早く改心致さぬと、青い顔してシヨゲ返り白米に籾が混つた様にして居るのを見るのが、此の常世姫が辛いから、腹が立つ程気を付けてやるが、変性女子が我が強うて、慢神致して居るから、神ももう助けやうが無いぞよ。もう勘忍袋がきれたぞよ。それにつけては皆の者、変性女子の申すこと、一々審神を致してかからぬと、アフンと致す事が出来致すぞよ。常世姫の憑る肉体を侮りて居ると、スコタン喰う事が出来るから、クドウ申して気をつけて置くぞよ』
と厳の御魂の筆先の抜萃した高姫の書いた神諭を、声高々と読み聞かして居る。
 お楢は畳に頭を擦りつけ、ブルブルと慄ひ泣きに泣いて居る。お節は発熱甚しく、益々『青彦青彦』と夢中になつて叫びはじめたり。黒姫は清子、照子の二人に向ひ、
『サアサア妾が今お筆先を拝読いたから、今度はお前さまがウラナイ教の宣伝歌を謡ふのぢや、サアサア早う、言ひ損ひの無いやうに謡ひなされ』
 二人はハイと答へて座を起ち、病に苦しむお節の枕辺に廻り、声張上げて、
『朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  ウラナイ教は世を救ふ
 常世の国の常世姫  昔の神代のそのままの
 大和魂の生粋で  日の出神の生宮と
 現はれ出でたる高姫の  身魂にかかりて筆をとり
 三千世界の梅の花  一度に開くことのよし
 委曲に詳細に説き諭す  たとへ大地は沈むとも
 月日は西から昇るとも  日の出神の生宮が
 書いた筆先言うたこと  毛筋の横巾ちがはぬぞ
 違うと思ふは其人の  心間違ひある故ぞ
 昔の神代の折からに  世界のために苦労した
 高姫、黒姫、魔我彦や  高山彦や蠑螈別
 いづの身魂と現はれて  竜宮さまの御守護で
 此世の宝を掘り上げて  北山村にウラナイの
 神の教の射場を建て  世界の人を教へ行く
 実にも尊き神の代の  其の根本の因縁を
 どこどこ迄も説き諭す  常世の姫のお筆先
 昔々の神代から  隠しおいたる生身魂
 日の出神の生魂で  唐も日本も悉く
 悪の仕組をとり調べ  四方の国々島々に
 漏れなく知らす神の道  いづの身魂の御教
 変性男子の御身魂  善の身魂の生粋ぞ
 変性女子の瑞身魂  悪の鏡と定まりた
 善は苦労が永けれど  悪の苦労は短いぞ
 悪の道行きや歩きよい  善の道程険しいぞ
 険しい道を喜びて  歩いて行けば末遂に
 誠も開く神の国  広い道をば喜びて
 進みて行けば末つひに  ハタと詰つて茨むら
 針に身体をひつ掻いて  逆転倒を皆うつて
 ヂリヂリ舞をしたとても  あとの祭ぢや十日菊
 誠の神の申すうち  聞かずに行るならやつて見よ
 善と悪との立別けの  千騎一騎の大峠
 変性女子をふり捨てて  常世の姫の生宮と
 現はれ出でたる高姫の  日の出神の御経綸
 万劫末代芳ばしき  名を残さうと思ふなら
 ウラナイ教の神の道  一日も早く片時も
 先を争ひ歩めかし  畏き神のウラナイの
 誠一つの根本の  毛筋も違はぬこの教
 神の奥には奥がある  その又奥には奥がある
 大国常立大神の  三千年の御仕組
 隅から隅まで悟つたる  あの高姫の生宮は
 三千世界の宝物  広い世界の人民よ
 今ぢや早ぢやと早鐘を  撞いて知らする常世姫
 暗に迷うた身魂をば  日の出の守護に助けむと
 朝な夕なに一筋に  誠の教伝へ行く
 常世の姫の真心は  善の鑑ぢや世の鑑
 誠の鑑はここにある  身魂を清めて出て来たら
 三千世界が見えすくぞ  鎮魂帰神をせい出して
 変性女子に倣ふより  神から出したこの鏡
 一つ覗いて見るがよい  三千世界の有様は
 一目に見えるこの教  ウラナイ教は世を救ふ
 誠の道の神ばしら  日の出神の生宮が
 三千世界の太柱  グツと握つて居る程に
 世界の事は何なりと  常世でなけりや判りやせぬ
 真名井の神が何偉い  瑞の身魂が何怖い
 怖いと云うたら吾心  心一つのウラナイ教
 心も身をも大神に  捧げて祈れよく祈れ
 祈る誠は神心  あゝ惟神々々
 身魂幸倍坐しませよ』
と謡ひ了れば、お節は益々苦しみ悶え、遂にはキヤアキヤアと怪しき声を振り絞り、冷汗は滝の如く流れ出で、容態は刻々に危険状態に入りける。
お楢『モシモシ皆さま、御親切に拝みて下さいまして有難う御座いますが、お前さまが此処へ御座つてから、お節の病気は楽になるかと思へば、一息々々、苦しさうに成つて来る、コラマア何うしたら宜しいのだ。オーンオーンオーン』
黒姫『コレコレお婆アさま、勿体ない事を言ひなさるな。これ程結構な日の出神の生宮の御筆先を読みて聞かし、結構な結構な宣伝歌まで唱へて、夫れで悪うなつて死ぬ様な事があつたら、神さまのお蔭やと思ひなされ。妾ぢやとて何うして一刻も早う楽に仕て上げたい、生命を助けて上げたいと思へばこそ、コンナ山路を雪踏み分けて遥々と来たのぢやないか。コンナ繊弱い妙齢の娘を二人まで連れて此処へ来たのも、神から言へば浅からぬ因縁ぢや。何うなるも斯うなるも神様の思召、仮令お節さまが国替なさつた処が、別に悔むにも及ばぬ、如才の無い神さまが、結構な処へ遣つて下さつて、神界の立派な御用をさして下さるのぢや。お前さまの達者を守り、この家を守護する守り神として下さるのぢや。勿体ない、何を不足さうに、吠面をかわくのぢやい、何うなつても諦めが肝腎ぢやぞへ』
お楢『ハイハイ、有難う御座います。然し乍ら妾の生命を取つて、どうぞお節を助けて下さいませ。それがお願ひで御座います』
黒姫『ハテサテ判らぬ方ぢやなア。何程偉い神さまぢやとて、お前の生命とお節さまの生命と交換が出来るものか。ソンナ無茶な事を言ひなさるな』
 お節の容態は益々危篤に成つて来る。黒姫は何とは無しに落ち着かぬ様子にて、
『コレコレ照さま、清さま、今日は神界に大変な御用がある。サア帰りませう。コレコレお婆アさま心配なさるな。気を確り持つて居なさいよ。私は神界の御用が急くから、今日はこれでお暇致します』
お楢『モシモシお節は助かりませうか、助かりますまいか』
黒姫『いづれ楽になるわいナ。屹度癒る、安心なされ』
お楢『楽に成るとはあの世へ往く事ぢやありませぬか、癒ると仰有るのは、霊壇へ御魂に成つて直ると云ふ謎ではありますまいか』
黒姫『アヽ神界の御用が忙しい。照さま、清さま、サアサアお出で』
と雲を霞と比治山の彼方を指してバラバラと走せ帰り行く。あとにお楢はワツと許り泣き伏しぬ。
(大正一一・四・二二 旧三・二六 東尾吉雄録)
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