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文献名1霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
文献名2第2篇 千態万様よみ(新仮名遣い)せんたいばんよう
文献名3第11章 顕幽交通〔622〕よみ(新仮名遣い)けんゆうこうつう
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじお節は幽界を、三五教の宣伝歌を歌いながら旅をしていた。そこへ、岩公、勘公、櫟公、鬼彦、鬼虎の副守護神が現れて、比治山峠で動物扱いされた恨みと、お節に襲い掛かる。お節は三五教の神号を唱えると、青彦の霊が現れて五人の副守護神に霊縛を加え、お節を助け出した。お節は、五人を助けるようにと青彦に頼んだ。青彦は、その心がけなら現界に帰ることができると請け合い、天の数歌を歌った。五人の副守護神は妄執が取れ、一同はみな合わせて神言を奏上した。すると五人の副守護神は牡丹のような花となり、天上に高く昇った。青彦はお節に別れを告げて去った。お節はにわかに身体に爽快を覚え、目を覚ますと、お楢が手を握っていた。お楢は、気を取り直して豊国姫命と素盞嗚尊に祈願をこらし始めたところ、お節が回復したのだ、と語り、豊国姫命に感謝の涙を流した。四五日過ぎてまた黒姫が夏彦と常彦を連れてやってくるが、お楢は黒姫を非難して帰そうとするが、黒姫は屁理屈をこねて粘っている。押し問答をしているうちに、夏彦と常彦が、黒姫に対して疑念を表明し始める。そこへ宣伝歌を歌いながら青彦がやって来て、黒姫を冷やかす。夏彦と常彦は青彦に味方し始める。夏彦と常彦は、黒姫の言行心一致しないのに愛想をつかして、その場でウラナイ教の縁を切ってしまう。そうして青彦に、三五教に導いてくれるように頼み込んだ。黒姫は青彦の胸倉を掴んで食い下がるが、三人はお楢の家に入って黒姫を締め出してしまう。黒姫は一人すごすごと魔窟ケ原へ帰っていく。お楢は、お節が青彦を想う様をみて、婿になってくれと頼み込む。青彦は、鬼ケ城の言霊戦が済むまで待ってくれ、と答えると、夏彦・常彦を伴って、南を指して去って行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月22日(旧03月26日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年1月10日 愛善世界社版163頁 八幡書店版第3輯 584頁 修補版 校定版170頁 普及版72頁 初版 ページ備考
OBC rm1711
本文の文字数9043
本文のヒット件数全 35 件/黒姫=35
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本文  空ドンヨリと、灰色の雲に包まれ、血腥さき風吹き荒む萱野ケ原を、痩た女の一人旅、三五教の宣伝歌を幽かに歌ひ乍ら、心ほそぼそ進み来る。凩すさぶ辻堂の側に立寄り眺むれば、堂の後の戸を開き、現はれ出でたる雲突く許りの裸体の男、歯をガチガチ言はせ乍ら、
『オーお節か、能う出て来やがつた。比治山峠で赤裸になつた俺達を附け込み、四足扱をしやがつた事を覚えて居るだらう。俺は其時に癪に障り……エー谷底へ老爺も婆アも貴様も一緒に放り込みてやらうと思うては見たが、又思ひ直し、神様が怖ろしうなつて、忍耐へてやつた。間もなく肉体は寒さに凍え、血は動かなくなつて、已むを得ず、厭な冥土へ出て来たのだ。貴様の為に死ンだのではないが、あまり貴様たち親子が業託を言やがるので、むかついた、其時の妄念が今に遺つて此通り、貴様等親子三人の生命を取つてやらうと思ひ、五人の霊が四辻に待ち伏せて、お前達親子の者を地獄へ落してやらうと待つて居るのだ。サア此処へ来たのは運の尽き、首をひき千切つて恨みを晴らしてやらう』
お節『これはこれは皆さま、お腹が立つたでせう。併し乍ら頑固な爺の申した事、決して、妾があなた方を虐待したのではありませぬ。妾は櫟サンが負はして呉れいと仰有つたので負うて貰つた丈の事、どうか勘弁して下さいませ』
岩公『エーソンナ勘弁が出来る様な霊なら、コンナ地獄の八丁目にブラついてるものかい、此処はどこぢやと思うて居る、善悪の標準も無ければ、慈悲も情も無い、怨みと嫉みの荒野ケ原ぢや。エーグヅグヅ吐すな。オイオイ皆の者、此奴を叩き延ばせ、手足を引きむしれツ』
 お節は進退惟谷まり、声を限りに、
『どなたか来て下さいなア。どうぞ繊弱き妾をお助け下さいませ。惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
と一生懸命に念じ居る。此場に忽然と現はれた一人の色の青白い優男、いきなり五人の裸男に向ひ、大麻を左右左に打振れば、裸男は、
『ヤア、飛ンでも無い奴が出て来やがつた。オイ勘公、櫟公、岩公、鬼虎、……鬼彦に続けツ』
と一生懸命に逃げ行かむとする。一人の男五人に向ひ『ウン』と霊縛を加へたるに、五人は足を踏ン張つた儘、化石の様になつて了ひ、目を剥き、舌をニヨロニヨロと出し、涙を滝の如く流してふるえ居る。
男『ホーあなたは丹波村のお節さまぢや有りませぬか。どうしてコンナ所へ踏ン迷うてお出でなさいました。私は三五教の青彦と申す宣伝使で御座います。大神様の命に依り、鬼ケ城の魔神に対し、言霊戦に出かけて居る最中で御座いますが、あなたが、惟神霊幸倍坐世と仰有つた声に曳かされ、体が引きつけられる様に、此処へ飛ンで来ました。サアサ、コンナ所に居つては大変です。早く現界へお帰りなさい』
お節『あなたは噂に聞いた三五教の青彦さまで御座いますか。あなたも亦幽界へ何時お越し遊ばしたの……』
青彦『イエイエ私の肉体は唯今、悦子姫様、加米彦、音彦等と共に大活動をやつて居ります。一寸肉体の休息の隙間に、和魂がやつて来たのですよ』
お節『アア左様で御座いますか。危ない所をお助け下さいまして有難う御座います。併しあの五人の裸さまを助けて上げて下さいナ』
青彦『アアお節さま、感心だ、あれ丈酷い目に会ひかけて居つた亡者を、助けてやつて呉れいと仰有るのか。その心なればこそ、再び現界へ帰る事が出来ますよ』
お節『あの五人の方も現界へ返して上げる訳にゆけませぬか』
青彦『あれは駄目ですよ。五人の男の本守護神は、既に立派な天人となつて昇天し、天の羽衣を身に着けて、真名井ケ原の豊国姫様のお側にご用をして居りますよ。彼奴はああ見えても、副守護神の鬼の霊だから、幽界でモウちつと業を曝し、瞋恚の心を消滅させねば、浮かぶ事は出来ない。併し乍ら霊縛は解いてやりませう』
 青彦は五人に向ひ、声も涼しく、
青彦『一二三四五六七八九十百千万』
と数歌を二回繰返せば、五人の裸男は身体元の如くなり、青彦が前に犬突這となり、
五人『コレはコレは青彦様、能う助けて下さいました。結構な神歌をお聞かせ下さいまして是れで私の修羅の妄執もサラリと解けました。此後は決して決してお節さまの肉体に祟りは致しませぬ。私も是れから結構な神となりて、神界に救はれます』
と涙を垂らして泣き入るにぞ、青彦は、
『アヽ結構だ。お前達は私と一緒に祝詞を奏上しなさい』
鬼『有難う御座います。オイオイ皆の連中、青彦の宣伝使について、祝詞をあげませうかい』
 茲に青彦は神言を奏上し始めた。お節を始め五人の裸男は、両手を合せ、青彦と共に神言を奏上し終るや、五人の姿は見る見る麗しき牡丹の様な花と変じ、暖かき風に吹かれて、フワリフワリと、天上高く姿を隠したりける。
青彦『サアお節どの、あなたもお帰りなさい。又現界でお目にかかりませう』
と言葉を残し、青彦は麗しき光玉となりて、南方の天に姿を隠した。お節は今まで苦しかりし身体俄に爽快を覚え、えも言はれぬ音楽の響聞ゆると見る間に正気づき、四辺を見れば、婆アのお楢が枕許に坐つて、お節の手をシツカと握り締め、泣き居たりける。
お節『お婆アさまでは御座いませぬか』
お楢『ヤアお節、気が付いたか、嬉しい嬉しい。これと云ふも、全く神様のお蔭、ウラナイ教の黒姫といふ婆アが遣つて来て、筆先とやらを読みて聞かし、宣伝歌とやらを唄ふが最後、お前の病気は漸々と悪くなり、到頭縡切れて了ひ、妾も気が気でならず、又気を取り直し、真名井ケ原の豊国姫の神様、素盞嗚神様を一生懸命に念じて居ました。さうすると、段々冷たうなつて居たお前の体に温みが出来て来、青白い顔は追々に赤味を増し、細い息をしだすかと見れば、お蔭で物を言ふ様になつて呉れた。アヽ有難い有難い、真名井ケ原に現はれませる大神様……』
と婆アは嬉し泣きに泣き入りぬ。お節は日一日と快方に向い、四五日過ぎて、炊事万端の手伝ひを健々しく立働かるる迄になり、モウ二三日経てば、婆アさまと共に、真名井ケ原の宝座にお礼参詣をなさむと、親子相談の最中、門の戸を押開けて、中を覗き込む二三人の人影有り、よく見れば黒姫、夏彦、常彦の三人なりける。
黒姫『ヤアお婆アさま、何故、娘が全快したら、御礼参詣に出て来ぬのだい』
お楢『お前は黒姫ぢやないか。お節の病気を癒してやるなぞと、偉相な頬桁を叩きよつて、どうぢやつたい。長たらしい訳の分らぬ筆先とやら云ふものを勿体振つて読み、其上に若い娘の口から千遍歌とか、万遍歌とかいふものを耳が痛い程囀つて、娘は見る見る様子が悪うなるばつかり、虫の息になつて、何時死ぬか知れぬと云ふ所を見済まし、神界に御用が有るの何のと言つてコソコソと逃げたぢやないか、あまり偉相な事を言ふものぢやないワイ。矢張り、ウラナイ教の神は、ガラクタ神の、貧乏神の、死神の、腰抜け神ぢや。モウモウ死ンだつて、ウラナイ教を信仰するものかい。……エーエ汚らはしい、病神、早う、帰りて呉れ帰りて呉れ。折角快うなつたお節が又悪なると困る。サア早う早う、帰りたり帰りたり』
黒姫『コレコレ婆アさま、お前ソレヤ大変な取違ぢや。妾が御祈念をしてやつたお蔭で助かつたのぢやないか。其時にはチツと悪うても……悪うなるのが、快うなる兆ぢや。峠を一つ越えるのにも、苦しい目をして、登り詰めたら、後は降り坂ぢや。何時までも、蛇の生殺の様に、お節ドンを苦しめて置くのは可哀相ぢやから、此黒姫が神力で峠まで送つてやつたから、其お蔭でお節さまが危ない生命を助かつたのぢやないか。生命を助けて貰うて小言を云ふと、又罰が当らうぞい』
お楢『巧い事言ふない、ソンナ瞞しを喰ふ様な婆アぢやないぞ。あンまり甘う見て貰うまいかイ。若い時は鬼娘のお楢とまで言はれた、酢いも甘いも、人の心の奥底まで、一目見たら知つて居る此お楢ぢやぞえ』
黒姫『婆アさま、お前チツと逆上せて居るのぢやないかいナ。マア能う気を落ち着けて、妾の言ふ事を一通り聞いて下されや』
お楢『アア五月蠅いツ、聞かぬ聞かぬ。トツトと帰りて下され。…お節ウ、箒を貸し………あの婆アを掃き出してやるのだ。黒いとも、白いとも分らぬ様な面をしやがつて、力も無い癖に、口先で誤魔化さうと思うても、ソンナ事に誤魔化されるお楢婆アぢやないぞや』
黒姫『お楢さま、能う聞いて下さいや。時計が一つ潰れても、根本から直さうと思へば、一旦中の機械をスツパリ解体して了ひ、それから修繕をせねば、完全に直るものぢやない。恰度大病になると其通りぢや。お節さまの体の中の機械を、神様が一遍引き抜いて、更に組立てて下さつたのぢや。訳を知らぬ素人は、時計の機械を解体するとバラバラになるものだから、其時計が以前より悪うなつた様に思うて怒るものぢやが、一旦バラバラに為なくては完全な修繕は出来ぬ様なもので、大病になるとスツカリ機械の入れ替を、神様がなさるのぢや。其時はチツト容態が悪うなるのは当然ぢや。そこをお前さまが眺めて、却て悪うなつた様に思つて居るのが根本の間違ぢや。悪うなつたお蔭で、今の様なピンピンした体になつたのぢや。罰の当つた………何を叱言を云ふのぢやい。ウラナイ教の神様に、お節さまも一緒に御礼を申しなされ』
お節『黒姫さまとやら、御親切に仰有つて下さいますが、妾はどう考へても、ウラナイ教は虫が好きませぬ。ウの字を聞いても、頭が痛うなります。それよりも三五教の青彦さまと云ふ宣伝使に、半日なりと御説教が聴かして欲しいワイナ』
黒姫『三五教の青彦と云ふ奴は、妾の弟子ぢや。彼奴は妾の片腕ぢやが、此頃三五教へ間者となつて妾が入れておいたのぢや。青彦が偉いなら其大将の妾は尚の事、神徳が沢山有る筈ぢや。サアサアま一遍拝みてあげよう』
 お楢、お節、一時に、
『イヤイヤ一時も早う帰つて下さい』
黒姫『ハヽヽヽ、盲と云ふ者は仕方の無いものぢや。何程現当利益を神様がお見せなさつても、お神徳をお神徳と思はぬ盲聾にかけたら、取り付く島も有つたものぢやない。……コレコレ夏彦、常彦、お前チツと言はぬかいなア。唖か何ぞの様に、此黒姫ばつかりに骨を折らして、知らぬ顔の半兵衛をきめ込むとは、何の態ぢや。チト確りしなさらぬか』
夏彦『誰に説教をして宜いか、サツパリ見当が取れませぬワイ』
黒姫『見当が取れぬとは、ソラ何を言ふのぢや。折角お神徳を貰うた此家の娘のお節や、お楢婆アさまを捉まへて、言向和せと云ふのぢやないか。何をグヅグヅして居なさる』
常彦『私は最前から、両方の話を、中立地帯に身を置いて、観望して居れば、どうやら黒姫さまの方が、道理が間違つとる様な気が致しますので、お気の毒で、あなたに恥をかかす訳にもゆかず、沈黙を守つて居る方が、双方の安全だと思つて扣へて居りました』
黒姫『エー二人共訳の分らぬ代物ぢやなア』
夏彦『神の裏には裏があり、奥には奥が有る位ならば、耳が蛸になる程聞いて居りますワイ。今までは何でも彼でも、あなたの仰有る通り盲従して来ましたが、今日の様に民衆運動が盛ンになつて来ては、今迄の様な厳格な階級制度は駄目ですよ。今日のウラナイ教で、あなたの言ふ事を本当に信じ、本当に実行する者は、高山彦さまタツタ一人、又高山彦さまの命令に服従する者は、黒姫さまタツタ一人と云ふ今日のウラナイ教の形勢、何でも彼でも盲従して居ると、同僚の奴に馬鹿にしられますワイ。私も今日限りお暇を頂きます。……お前さまと手を切つた上は、師匠でもなければ弟子でもない。アカの他人も同様ぢや。吾々二人は、今のお言葉で、心の底から愛想が尽きました。どうぞ御免下さいませ』
黒姫『ソレヤ、夏彦、常彦、藪から棒を突出した様に、何を言ふのだい。暇を呉れなら、やらぬ事もないが、今迄の黒姫とは違ひますぞゑ。勿体なくも高山彦の命の奥方、女と思ひ侮つての雑言無礼、容赦は致さぬぞや』
 斯く争ふ所へ、宣伝歌を謡ひ乍ら入り来たるは、青彦なりける。黒姫は青彦を見るなり、胸倉をグツと取り、
『コレヤお前は青彦ぢやないか。何の事ぢや。結構なウラナイ教を棄てて、嘘で固めた三五教の宣伝使になりよつて、わし達の邪魔ばつかりして居るぢやないか。サア改心すれば良いし、グヅグヅ言ひなさると、女乍らも、鍛へあげたる此腕が承知をしませぬぞや』
青彦『アハヽヽヽ、アヽお前は黒姫さまか。老い年して居つて、良い加減に我を折りなさつたらどうぢや。棺桶へ片足突つ込みて居り乍ら、千年も万年も活る様に、何時まではしやぐのぢや。チツと年と相談をして見たらよからうに』
 夏、常二人は拍手して、
『ヒヤヒヤ、青彦の宣伝使、シツカリやり給へ』
黒姫『コラ夏彦、常彦、何の事ぢや。悪人の青彦に加担すると云ふ事があるものか、お前は気が狂うたか、血迷うたのか』
常彦『只今迄はウラナイ教の身内の者、只今縁を断つた以上は、三五教にならうと、バラモン教にならうと、常彦の勝手ぢや。ナア夏彦、さうぢやないか』
夏彦『オウさうともさうとも、……モシモシ青彦さま、あなたも元はウラナイ教のお方ぢやつたさうですなア。私は矢張りウラナイ教ぢや。併し乍らあまり此婆アの言心行が一致せないので、誰も彼れも愛想を尽かし、晨に一人、夕に三人と、各自に後足で砂をかけて、脱退する者ばつかり、私も疾うから、ウラナイ教は面白くないから、三五教になりたいと思つて、朝夕念じて居りましたが、一旦黒姫や高姫に瞞されて、一生懸命に三五教の神様の悪口を広告れて歩いたものだから、今更閾が高うて、三五教に兜を脱ぐ訳にも行かないし、宙ブラリで困つて居りました。どうぞ青彦さま私等二人の境遇を御推察の上、どうぞ宜しく御執り成しをお願申します』
青彦『ハア宜しい承知致しました。御安心なされ。……オイ黒姫、人の胸倉を取りよつて何の態ぢや。放さぬかい』
黒姫『寝ても起きても、お前の事ばつかり思うて居るのぢや。大事のお前を三五教に取られたと思へば、残念で残念で堪らぬワイ。常彦や夏彦のガラクタとは違うて、お前はチツト見込があると思うて居つた。今はウラナイ教も追々改良して、三五教以上の結構な教が立ち、御神力も赫灼だから、どうぢや一つ、元の巣へ返つて、黒姫と一緒に活動する気はないか』
夏彦『モシモシ青彦さま、嘘だ嘘だ。改良所か、日に日に改悪するばつかりだ。此間もフサの国から、ゲホウの様な頭をした高山彦と云ふ男が出て来て、黒姫の婿になり、天下を吾物顔に振れ舞ふものだから、誰れもかれも愛想をつかし、毎日日日脱退者は踵を接すると云ふ有様、四天王の一人と呼ばれた吾々でさへも、愛想が尽きたのだ。黒姫の口車に乗らぬ様にして下さい』
黒姫『コラ夏、常、要らぬ事を言ふない。貴様ア厭なら厭で、勝手に退いたら宜い。人の事まで構ふ権利があるか。……サア青彦、返答はどうぢやな。返答聞くまで、仮令死ンでも、此腕がむしれても放しやせぬぞ』
青彦『エー執念深い婆アだナア。放さな放さぬで良いワ』
と云ふより早く、赤裸になつた。黒姫は着物ばかりを握つて、
『誰が何と言うても放すものかい。……ヤア何時の間にやら、スブ抜けを喰はしよつたナ、エーコンナ皮ばつかり掴みて居つても、なにもならぬ。忌ま忌ましい』
と言ひつつ着物を大地に投げつけるを夏彦は手早く拾ひあげ、常彦、青彦諸共にお節の家に飛び込み、中からピシヤリと戸を閉め、錠をおろしたり。黒姫は唯一人門口に取り残され、ブツブツつぶやき乍ら、比治山の方を指してスゴスゴと帰り行く。
お楢『ヤアヤアお前さまは、青彦さまか。能う来て下さつた。こないだの晩に泊つて貰はうと思つて居つたのに、泊つて欲しい人は泊つて呉れず、厭な奴ばつかりノソノソと泊り、執念深い……死ンでからも爺ドンの生命を取りに来、又聞けば、お節の生命まで亡霊となつて狙ひよつたさうぢや。お前さまが夢に現はれて、悪魔を改心させ娘を助けて下さつた夢を見たら、其日から不思議にも、お節が段々と快くなり、婆アも、お節も、毎日日日、青彦さま青彦さまと真名井の神様よりも尊敬して居りました。能う来て下さつた。サアサアむさくるしいが、ズーツと奥へお通り下され。……そこの二人は黒姫の弟子ではないか、エーエー黒姫の身内ぢやと思へば何だか気持が悪い。二人のお方は折角乍ら、トツトと帰りて下され』
青彦『お婆アさま、私も元は黒姫の弟子になつて居りましたが、あまりの身勝手な奴だから、愛想が尽きて三五教に籍を変へ、御神徳を戴いて今は御覧の通り、宣伝使になりました。此二人は、今日只今迄、常彦、夏彦と云うて、黒姫の四天王とまで謂はれて居つた豪者だが、此二人も私の様に、愛想をつかし、今此家の門口で師弟の縁を断り私の友達になつたのだから、さう気強い事を言はずに、大事にしてあげて下さい』
お楢『アアさうかいナさうかいナ。それとは知らずに偉い失礼な事を申しました。……コレコレお節、何恥かしさうにして居るのぢや。早うお客さまにお茶でも汲まぬかいナ』
 お節は袖に顔を包み、稍俯むき気味になつて、
『これはこれは青彦様、能う来て下さいました』
と言つた限、俯伏になり震ひ居る。
お楢『アーア若い者と云ふ者は、仕方の無いものぢや。……モシモシ青彦さま、婆アの頼みぢやが、不束な娘で、お気には入りますまいが、どうぞお節の婿になつて下され。これが婆アの一生の頼みぢや。……コレコレお節、お前も頼まぬかいナ』
お節『………』
常彦『ナアーンと偉いローマンスを見せて頂きました。ナア夏彦、此の間は高山彦と黒姫のお安うない所を拝観さして貰ひ、今日は又一層濃厚なローマンスを目の前にブラ下げられて、……イヤもうお芽出たい事ぢや。……青彦さま、一杯奢りなされや』
青彦『お婆アさま、私の様な破れ宣伝使に大事の娘様の婿になつてくれいと仰有るのは、有難う御座いますが、私は今悦子姫様の御命令によりて、鬼ケ城の言霊戦に出陣せねばなりませぬ。又私一量見ではゆきませぬから、悦子姫様や、音彦さまのお許しを得て、ご返辞を致します。それ迄何卒待つて下さいませ。……かういふ内にも心が急けます。悦子姫様が、青彦はどこへ行つただらうと、お尋ね遊ばして御座るに違ひない。肝腎要の場合、女の愛にひかされてコンナ所へ舞ひ戻つて来たと思はれてはなりませぬから、兎も角御返辞は後に致しませう。左様なれば……御機嫌よう……お婆アさま、お節どの』
と言ひすてて門口へ急ぎ出でむとするをお楢は、
『どうぞ、お節の事を忘れて下さるなや』
常彦『モシモシ青彦さま、どうぞ私も鬼ケ城へ連れて行つて下さい』
夏彦『私も、どうぞ、お伴をさして下さい』
青彦『悦子姫様の意見を聞かねば、何ともお答は出来かねますが、御都合が好ければ、私と一緒に参りませう』
二人『どうぞ宜しうお頼み申す。……婆アさま、お節さま、偉いお邪魔を致しました。御縁が有れば又お目にかかりませう』
お楢『左様なら……』
お節『御機嫌よう……』
と青彦は此家を後に、心いそいそ南を指して二人を伴ひ、韋駄天走りに走り行く。
(大正一一・四・二二 旧三・二六 松村真澄録)
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