元ウラナイ教で、今は三五教の宣伝使となっていた常彦は、観音峠の頂上で旅の疲れからうとうとしていると、みすぼらしい二人の男が登ってくるのに出くわした。これは、黒姫の元から逃げてきた板公と滝公であった。
板公と滝公は、松姫のところも追い出され、困窮していた。二人は常彦を三五教の宣伝使と認め、空腹を満たすために食物の提供を求めた。常彦は握り飯を与えた。
飢えを満たした二人は常彦に礼を言う。常彦は、二人が板公と滝公であることを認め、このような境遇に陥った訳を尋ねた。二人は黒姫のところで失敗をして逃げた顛末を語った。
常彦は、青彦やお節、紫姫らの一行が黒姫のところに行ったと聞いて、三五教信心堅固な彼らがウラナイ教になったことを不審に思う。そこで魔窟ケ原に行って事の真相を確かめたい、と言う。
滝公と板公は、常彦に恩義を感じて、三五教の人間としてお供したい、と申し出て許可を得る。三人が須知山峠の頂上まで来て休んでいると、そこへ鬼鷹、荒鷹の二人が通りかかった。
鬼鷹、荒鷹は丹州に言われて、こちら方面にやってきたのだ、という。そして、弥仙山の麓の村で、玉照姫という尊い神人が生まれたこと、黒姫が玉照姫をウラナイ教に引き込んで利用しようとしていることを伝えた。
鬼鷹、荒鷹は丹州に言われたとおりの方向に旅を続けた。常彦は、弥仙山に興味を抱きつつ、最初に決めた目的地に進むことを思案した。