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文献名1霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
文献名2第3篇 至誠通神よみ(新仮名遣い)しせいつうしん
文献名3第12章 言照姫〔657〕よみ(新仮名遣い)ことてるひめ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ門番長の竜若も、四人の姿を見て、自分も四足で這いながら奥へと入っていった。五人は松姫の庭前に現れると、動物のように唸り始めた。松姫とお節は五人に話しかけるが、唸るだけで返事がない。松姫は神前に祈願するが、五人は獣のようになって一行に治る気配がない。自分も四つ這いになって罪滅ぼしをしようか、という松姫に対して、お節は人間に生まれながら畜生の真似をしてはならない、と諌めた。お節の強い言葉に、松姫はお節に神前でお詫びを上げていただくようにお願いした。お節は天津祝詞を上げ、戻ってきて五人に呼びかけると、やっと五人は立ち上がって話すことができるようになった。竜若は、馬公、鹿公への仕打ちに対するお詫びのつもりで四つ這いになったが、そうしたところ立つことも話すこともできなくなってしまった、と畜生道に堕ちた恐ろしさを語った。松姫は、罪滅ぼしの心を褒めつつも、自愛の戒めを述べた。そして、実はすでに高姫、黒姫も三五教への改心を決めていたのだが、部下への示しのために、自分はウラナイ教を堅く守っていたのだ、と明かした。しかし、こうしてお節や馬公、鹿公が誠を表して神様の戒めを実地に見せてくれたことで、帰順することができた、と感謝を表した。そして、自分はこれから身魂磨きの修行に出ると宣言し、お節をこの館の主と定めると、庭先の草履を履いて外に飛び出し、夕闇に紛れて姿を消してしまった。熊彦と虎彦は、慌てて松姫を連れ戻そうとするが、竜若はそれを戒めた。熊彦と虎彦は、これまでの松姫の恩を思えば見殺しにすることはできない、と怒って、竜若に殴りかかろうとする。馬公と鹿公は、慌てて熊彦と虎彦を止めて、諌めるが、竜若は熊彦と虎彦の師匠を思う気持ちが嬉しいと、平伏する。お節も熊彦と虎彦に乱暴を止めるようにと平伏した。するとどこからともなく喨々と音楽が聞こえ、一人のエンゼルが現れた。エンゼルは、神素盞嗚大神の使い・言照姫命を名乗ると、松姫の改心によって高姫、黒姫の罪は赦されたことを告げた。そして、松姫は神の守護によって神界に抜群の巧妙を表した後に、当館に戻ってくるであろう、と予言をなした。エンゼルは、お節に玉能姫、竜若に竜国別、馬公に駒彦、鹿公に秋彦、熊彦に千代彦、虎彦に春彦と神名を授けた。一同に、お節=玉能姫を師として神業に全力を尽くすようにと言い渡すと、消えてしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月08日(旧04月12日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年2月28日 愛善世界社版193頁 八幡書店版第4輯 101頁 修補版 校定版196頁 普及版89頁 初版 ページ備考
OBC rm1912
本文の文字数6975
本文のヒット件数全 1 件/神素盞嗚=1
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本文  松姫館の表門の司を兼ねたる受付役の竜若は、両手を組み深き思案に沈む折柄、潜り門を潜つてノタノタ入り込む四人の姿を眺めて打ち驚いた。女神姿の二人の宣伝使は門外に煙の如く姿を消した。
 竜若は怪しき四人の姿を見て、
『オイ其処へ往くのは、熊に虎ぢやないか。ヤー馬公に鹿公、この冷たい地上を四這ひになつて通るとは、こりや又何うした理由だ』
熊彦『熊、虎の本守護神の顕現だよ』
竜若『貴様は馬公、鹿公を威喝殴打致した罪人だから、当然の成り行きだが、馬公に鹿公は又何うしたものだ』
馬公『ハイ私も本守護神が現はれました。どうぞ尻でも叩いて追ひ込んで下さい』
竜若『ハテな』
と暫時思案の後自分も又四這ひになつて従いて行く、五人の姿は館の奥深く這ひ込んだ。奥には松姫、お節の両人、桐の丸火鉢を挟んで頻りに御蔭話に現を抜かしてゐる。苔蒸す庭前にノコノコ現はれた五人の四這ひ姿、二人は話に実が入り、少しも此の珍姿怪体に気が付かなかつた。獣になつた五人は人語を発すること能はず、二人が自然に目を注ぐのをもどかしげに待てゐる。待あぐんでか、熊公は熊の様に、
熊彦『ウン ウーン』
と一声唸る。続いて虎公は、
『ウワー ウワアー』
と一生懸命に唸り立てる。馬公は、
『ヒン ヒン ヒン』
と叫ぶ。鹿公は、
『カイロー カイロー』
と鳴く。竜若は沈黙を守つてゐる。此の声に驚いて二人は庭前を見やれば四這ひになつた五人の男、松姫は、
『アーいやらしいこと、何でせうなア、お節さま』
と座を立つて遁げようとする。
お節『モシモシ松姫さま、さう驚くには及びませぬ。なんでもありませぬ、竜若さまに熊彦、虎彦の両人さま、それに三五教の馬公に鹿公さまですよ。ホヽヽヽヽ、あのマアよう似合ひますこと』
 松姫はやつと安心の面色にて、
『コレコレ竜若、熊彦、虎彦、冗談もよい加減にしなさい。女主人だと思つて人を嘲弄するのかい。なんだ見つともない。神様の御用をする身であり乍ら、汚らはしい獣の真似をしたり、何の態だ。ちと嗜みなさらぬか』
虎彦『ウワー ウワー』
熊彦『ウー ウー』
松姫『アーア困つたことになつて来た。誰も彼も気が違つたのだらうか。これお節さま、如何しませう』
お節『サア困つたことですな、何うしようと云つたところで仕方が無いぢやありませぬか。コレコレ馬公、鹿公、お節ですよ。あまり御無礼ぢやありませぬか』
馬公『ヒンヒンヒン』
鹿公『カイローカイロー』
お節『アヽ互恨みの無いやうに、両方共怪体なことになりましたな』
松姫『斯う云ふ時には神様より外に解決をつけて下さる方はない、アーア可憐想に生き乍ら畜生道へ落ちたのかいな。人面獣心と云ふことは聞いて居るが、此奴は又獣体獣心になつた様だ。やつぱり此世にも地獄もあれば、餓鬼道、畜生道もあると見える。アヽ怖ろしい怖ろしい。コレコレ皆さま、立つて見なさい。どうしても立つことが出来ないのか。最早人間の位が無くなつたのかいな。位と云ふ字は、立つ人と書くが、此奴は又完全な四足ぢや、アヽ可憐想に、これと云ふのも松姫の我が強いからだ。ドレドレ一つ神様にお詫を致しませう。お節さま、貴女はこの五人の男の看守りをして居て下さい。私はこれからお水でも頂いて一生懸命御祈念を致します』
と真青な顔をして、神前の間さして進み入る。五人は声限りに『ウーウー』『ウワー』『ヒンヒン』『カイロカイロ』と負ず劣らず呶鳴り立ててゐる。
 暫くあつて松姫は此場に現はれ、
『アヽお節さま、一生懸命に願つて来ましたが、まだ皆の衆は治りませぬかな』
お節『ハイ依然として最前の通り、庭の木のしげみへかたまつて這ひつくばうて居られます。漸く唸り声だけは止まつた様です』
松姫『どう致しませう。私も仕方が無い、罪滅しに四這ひになつて這うて見ませうか』
お節『滅相な、何を仰有います。結構な立つて歩ける人間に生れ乍ら、神様の生宮を軽蔑し、四足の真似を為さると今の五人さまのやうに、神罰が当つて本当の四足になつて了ひますよ』
松姫『それだと言つて私の責任が済まぬぢやありませぬか。私は畜生道へ落ちても構ひませぬ、苦楽を共にするのが本当です』
お節『結構な神の生宮と生れて其様な汚らはしい事を為さると、本守護神を侮辱した事になり、本守護神は愛想をつかして貴方の肉体を脱出し、副守護神ばかりになつて了ひます。さうすればあのやうな浅猿しいさまにならねばなりますまい。人間は神様に対し持身の責任があります。我身を軽んずると云ふことは、所謂大神様を軽んずるも同様、これ位深い慢神の罪はありませぬ。どうぞそれ丈は思ひ止まつて下さいませ』
松姫『そうだと言つて此の惨状を私として傍観する事が出来ませうか』
お節『成り行きなれば仕方がありませぬ。前車の覆へるは後車の戒め、必ず必ずそんな真似をなさつてはなりませぬぞ』
と声に力を籠め、常に変つて稍気色ばみ叱りつけるやうに言つた。松姫は黙念として首を垂れ、悲歎の涙に暮れてゐる。
お節『人間と云ふものは行ひが大切です。吃りの真似をすれば自然に吃りとなり、唖の真似をすれば自然に唖となり、聾の真似をすれば忽ち聾となり、躄の真似をすれば天罰覿面躄になつて了ふのは、争はれぬ天地の真理です。それに人間に生を亨け乍ら如何なる事情があるにもせよ、勿体ない、結構な肉体を四足の真似をしたりすると云ふことがありますものか。アレ見なさい五人の方は段々身体の様子が獣らしくなるぢやありませぬか。それに又人間と生れ乍ら汚らはしい、馬ぢやの、鹿ぢやの、熊、虎、竜なぞの獣の名をつけるものだから、忽ち其名の如く堕落して了ふ。言霊の幸はふ国と申しますが、言霊計りではありませぬ、行ひの幸はひ災する世の中、どうしても人間は名を清くし、心を清め、行ひを正しくせなくてはなりませぬ。アヽ可憐想に私が及ばず乍ら、言霊を以て宣り直して見ませう。さすれば大慈大悲の大神様が一度は御許し下さるでせう』
松姫『本当に驚きました。どうぞ貴女、神様にお詫して下さいませ』
お節『畏まりました』
とお節は立上り、神前に進み入り天津祝詞を奏上し、終つて再び此場に現はれた。
お節『モシモシ竜若さま、熊彦さま、虎彦さま、神様が御許し下さいました。サアお立ちなさいませ。一二三四五六七八九十百千万』
 竜若は忽ちムツクと立上り、
竜若『アヽ有難うございました』
 次で熊彦、虎彦、馬、鹿の四人、又もやスツクと立上り、
『コレハコレハお節さま、よう助けて下さいました。エライ心得違ひを致しました。モウ今後は決して斯んな馬鹿なことは致しませぬ』
松姫『コレ竜、熊、虎の三人さま、お前は彼んな馬鹿な態をして私を困らしたのぢやないかいな』
竜若『イエイエ滅相な、私が門番を致して居りますと、潜り門をノタノタ這うて来る熊彦、虎彦の姿、こりや不思議だとよくよく見れば、馬公、鹿公四人揃うてノタノタと四這ひになつて奥へ向つて進んで往く。ヤア此奴は熊、虎、最前の無礼を謝する為、謙遜の余り這うてゆくのだな。それに就ても馬公、鹿公は立つて歩くにしのびず、御付合ひに這うてゆかつしやるのだ。アヽ何方も誠と誠の寄り合ひ、義理の立て合ひと感服の余り、大責任を持つた私一人、人間らしう立つて歩く訳にも行かず、余り心の恥かしさに四這ひになつて随いて来ました。さうした所二三間歩く内に本当の四足になつて了ひ、立つことも出来ず、もの言ふ事も出来なくなつたのです。実に恐ろしいものです。ナア熊彦、虎彦、お前はどうだつた』
 熊、虎一度に、
『何だか本当の獣になつたやうな心持がし、再び立つて歩く事が出来ないかと心配してゐました。お節さまの御かげで畜生道の苦みを助けて頂きました。有難うございます』
と心底から嬉し涙を零して居る。
お節『アヽそれは大変な事になるとこでした。今後は何卒慎んで下さいませ。鹿公、馬公、お前迄が何とした馬鹿な真似をなさるのぢや。私は大神様に恥かしい』
『イヤどうも申訳がありませぬ。以後は屹度心得ます』
お節『馬公、鹿公、貴方は途中で立派な女神さまにお会ひぢやなかつたか』
馬公『ハイ会ひました』
鹿公『門前まで送つて頂きました。併しそれ限り御姿がなくなつて了つたのです』
お節『さうでせう。貴方が自ら人格を落して馬鹿な真似を為さるものだから、流石に慈愛深き女神様もおあきれ遊ばして、お帰りになつたのだ。お詫をなさいませ』
馬公『有難うございます』
鹿公『今度といふ今度は種々と神様から実地教育を授かりました』
熊彦『私は、馬公、鹿公に対し、実に有るに有られぬ侮辱を与へ、打擲を加へました。然るに忍耐強きお二人さまは、チツトも抵抗もなさらず、却て私達に感謝をされました。智慧浅き私共は、馬鹿か、気違ひかと思うて益々虐待を致しましたので、心の底より恥入つて、アヽ私の精神は四足だつた、人間らしく、どうしてお地の上を立つて歩けようかと、懺悔の余り一つは謝罪のため四足の真似を致しました』
と涙ぐむ。
松姫『アーアさうだつたか、其処迄改心が出来れば、斯んな結構なことはありませぬ。併し神様の御教に、神を敬ひ、人を敬ひ、我身を敬へと云ふことがあります。何卒人間の身体は神様の結構なお宮だと思つて、仮令自分の身体でも粗末にしてはなりませぬ。私もお節さまがお止め下さらなかつたならば、お前さま等のやうに畜生道に落ちるとこでございました。サア皆さま、打揃つて神様にお礼を申しませう。実の所はフサの国の本山より、高姫様、黒姫様の御命令が降り、心は既に三五教へ帰順致して居つたのですが、部下の皆さま達が俄にそんな事を云つたところで聞いて下さる道理もなし、どうしたらよからうかと思ひ煩つて居りました。然るに神様は何から何まで抜け目なく、誠の手本を示して皆さまの改心を促して下さいました。此間からお節さまがお出でになり、いろいろと言葉を尽して三五教に帰るようとお示し下さつたけれども、余り易々と帰順すればお節さまの夫を思ふ真心の誠が現はれ難いと思つて、わざと心にも無い事を云うて頑張つて居りました。さうして紫姫様の御身の上を案じて助けたいと思ふ馬公、鹿公のお二方に花を持たしたいばつかりで、今迄頑張つて居たのです。私が心の底から改心を致しましたのは、大神様のお慈悲は申すに及ばずお節さまのお力と、馬公鹿公の主人を思ふ真心のお力でございます。私のみかウラナイ教一同の者が帰順するやうになりますのも、夫を思ふお節さまの至誠と、主人を思ふ馬公、鹿公の忠義心とのお力でございます。誠ほど結構なものは此世の中にございませぬ。私は今日限り此の館をあけて暫く修業に参り、身魂を研くつもりでございます。どうぞお節さま、馬公、鹿公と共に此館をお守り下さつて、数多の信者に誠の道を説いてやつて下さいませ。貴方等が夫や主人を大切に思はるるのと同様に、私も師匠の高姫様や、黒姫様のために尽さねばなりませぬ。どうぞ宜敷くお願ひ致します。竜、熊、虎其他一同の方々、お節さまを私の代理否、私の御師匠さまと崇め、鹿公、馬公を高弟と仰いで、仲好くお道のために尽して下さい』
と言ひ棄て庭先の草履を穿くや否や、夕の闇に紛れて何処ともなく姿を隠しけり。
 熊彦は驚きあわて、
『ヤア竜若さま、松姫さまは到頭蒙塵されました。コラ斯うして居られまい。何処までも追ひ駆けてお姿を見つけ出し、帰つて貰はねばなりますまい。オイ虎彦、サア足装束をせい』
竜若『オイ熊彦、虎彦、待て待て、去るものは追はず、来るものは拒まずぢや。何事も惟神に任して置けばよいのだ』
熊彦『オイ竜若、貴様は人情を知らぬ不徳漢だ。今迄師匠と仰いだ松姫さまが、吾々の醜態を御覧になつて恥しさに堪へかね、結構な館を捨てて何一つ持たず、飛び出されたぢやないか。春秋の筆法を以て言ふならば、竜若、松姫を追放すと云ふことになるぞ。今迄は上役を笠に着居つて偉さうに、熊だの、虎だのと頤で俺を使ひ居つたが、何ぢや、斯んな時に平然として構へて居る奴が何処にあるか。モウ今日限り上官でも兄弟子でも、何でも無いワ。不徳を懲すために、コラ柔道百段の鉄拳をお見舞ひ申さうか、返答は如何だ』
竜若『アハヽヽヽ、又鍍金が剥げかけたぞ。今のことを忘れたか。また四足に還元したら如何するのだ』
熊彦『エー四足になつたつて構ふものか。国家の興亡旦夕に迫る此の一刹那、愚図々々して居る場合でないぞ。間髪を入れずとは此の事だ。オイ竜若、貴様も今迄松姫様の殊恩に浴した代物だ、斯う云ふ場合に赤誠を表はし、師弟の道を尽すと云ふ義侠心はないか』
虎彦『コラ竜若の野郎、何を怖ぢ怖ぢとしてゐるのだ。松姫様を見殺しにする量見か』
竜若『喧しい云ふない。貴様のやうな慌者が居るから、ウラナイ教は発達せないのだ。

君ならで誰かは知らむ我心

と松姫様は俺の千万無量の心中をよくお察し遊ばしてござるのだぞ。貴様のやうにうろたへ騒いで何になるか。それだから平素から臍下丹田に心魂を鎮めよと云うてあるぢやないか』
熊彦『アカンアカン、そんな逃げ口上を云つたつて、誰が承諾するものかい。卑怯者奴が、不徳漢奴が』
竜若『オイ、それ程松姫様の神業の邪魔がしたければ、俺に構はずトツトと往け。間誤々々して居るとお姿を紛失して了ふぞ』
熊彦『エー忌々しい、禄盗人奴、サア虎彦、首途の血祭に、仮令熊や虎に還元したつて構ふものか。此奴を一つ打撲つて潔く出発しようぢやないか』
虎彦『ヨシヨシ合点だ』
と早くも拳骨を固め前後より打かからむとする。馬公、鹿公は両人の利腕をグツと握り、
『ヤア待つた待つた』
『待てと云つたつて是が何うして待たれるものか。エー邪魔して呉れな、放せ放せ』
馬公『お前さまの焦るのは尤もだ。併し乍ら松姫様をそれだけ思ふ真心は、実に感心だが、贔屓の引倒しとなつては、反つて済まないぞ。一生懸命に松姫様のお為だと思つてやつたことが、却て師匠を泥溝へ落すことになるのだ。マア冷静に考へて見よ。余り熱した時は公平な判断は出来ぬものだ。此処が鎮魂の必要な所だ。マアマア俺達に免じて思ひ止まつて呉れ。屹度松姫様は神様に助けられ、立派な手柄を遊ばすのだから』
熊彦『馬公、そんな気休めを云うて呉れな』
馬公『ナニ決して気休めぢやない。正真正銘の偽らざる俺の忠告だ。屹度お前のためにならぬやうなことはせないよ』
熊彦『俺はどうなつても構はぬ。松姫様を見捨てる訳にはいかない。どうぞ頼みだから放して呉れ』
虎彦『オイ鹿公、どうぞ今度許りは見遁して呉れ。二人のものに自由行動を採らして下さい。これが一生の頼みだ』
竜若『馬公、鹿公、構うて下さるな。これだけ貴方が親切に云つて下さつても、私が何と云つても通じないやうな没分暁漢だから、二人の自由に任して置きませう。併し乍ら二人とも実に美はしい紅い血が全身に漲つて居る。ヤア熊、虎、ようそこ迄師匠を思うて呉れる。俺は何も云はぬ、唯もうこの通りだ』
と手を合す。
お節『コレコレ熊公、虎公、どうぞ思ひ止まつて下さい。お節がこの通りお願ひ致します』
と跣足の儘庭先に飛び下り、大地にペタリと平伏し、両手を合して涙と共に頼みいる。
 どこともなく嚠喨たる音楽の響、一同はハツと驚き空を見上ぐる途端に現はれた一人のエンゼル、声も涼しく、
エンゼル『われこそは神素盞嗚大神の御使言照姫命なり。松姫の改心に依り、ウラナイ教の教主高姫、副教主黒姫の罪は赦された。又松姫は神が守護を致し、神界のために抜群の功名を顕はし、日ならず当館へ帰り来るべし。此上はお節に対し、玉能姫と云ふ神名を賜ふ。竜若は今より竜国別、馬公は駒彦、鹿公には秋彦、熊彦には千代彦、虎彦には春彦と神名を賜ふ。汝等玉能姫を師と仰ぎ協心戮力神界のために全力を尽せ。神は汝の心魂を守護し天地に代る大業を万世に建てさせむ。ゆめゆめ疑ふこと勿れ』
と詔り終り、崇高なるエンゼルの姿は烟の如く消え失せたまひぬ。
 一塊の紫雲は室内より戸外に向つて流れ出で、中空高く舞ひ上る。星は満天に燦然として輝き渡り、東の山の端に三五の明月皎々として輝き始め、芳ばしき風颯々として吹き来り、一同の心胆を洗ふ。
 アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世。
(大正一一・五・八 旧四・一二 外山豊二録)
(昭和一〇・六・三 王仁校正)
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