三人は高熊山の岩窟に詣でて心を洗い魂を清め、進んでいった。戸隠岩の麓に着いて路傍の石に腰を掛けて休息を取った。
するとそこから一丁ばかり先に、五六人の怪しい男たちがたむろして、こちらを窺っている。玉治別は、盗人を改心させるには、盗人の中に入らなければならない、と二人に言う。
玉治別が玉公親分となりすまし、竜公・国公を子分として男たちのところへ行くと、自分は三国ケ岳の鬼婆の片腕だと名乗った。盗人たちは、仲間に入ってくれと言うが、玉治別は、追いはぎなどは小さい盗人のすることだ、と言って、自分に付いて来るようにと男たちを誘う。
玉治別は、黄金の玉と紫の玉があれば三千世界のことが思いのままになる、その玉を取りに行くのだ、と言って盗人たちを自分の子分にしてしまった。
盗人たちが言うには、自分たちの頭がいて、今三五教の本山に、徳公と名乗って入り込んでいるのだ、と明かした。玉治別は、徳公なら知っているが、あの程度の者を頭に頂いているよりも、自分たち宣伝使にしたがった方がよいと、正体を明かして盗人たちを諭す。
盗人たちは玉治別の説得に、一も二もなく、神様の道に仕える事を誓った。このとき、宣伝歌の声が聞こえてきた。宣伝歌は、一行が高春山に乗り込んで活躍する様を歌っていた。