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文献名1霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
文献名2第2篇 是生滅法よみ(新仮名遣い)ぜしょうめっぽう
文献名3第9章 改悟の酬〔683〕よみ(新仮名遣い)かいごのむくい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-05-02 01:41:57
あらすじ
湖中の大岩石に取り残された三人の盗賊は、水に頭まで浸かってしまった。すると三個の火球が荒れ狂うと湖水が二つに割れ、三柱の女神が現れたと見えた。

たちまち大岩石周辺の湖水は干上がった。女神と見えたのは、杢助、お初、玉治別の三人であった。玉治別は、水が干上がったのは湖に住む大蛇の仕業であると言い、盗賊たちに改心を諭した。

杢助と玉治別は、宣伝歌を歌って三人に改心を促した。遠州、駿州、武州の三人は涙を流して感謝した。すると三人の本守護神が女神となって現れて喜びの舞を舞った。

そこへ、雲州、三州、甲州の三人が、一人の女神の手を引いてこの場に現れた。杢助が女神をよく見ると、亡くなった妻のお杉であった。雲州、三州、甲州の背後からは、また三柱の女神が現れて天に昇った。

雲州、三州、甲州は、お初に金銀を与えられて赦されてから、後ろ髪引かれる心地がして、お杉の墓に詣でたところ、お杉の精霊に出会い、杢助・お初のところへ連れて来たのであった。

これよりお杉の精霊も現世の執着を去って天国に昇ることができた。夫と娘の幸福を祈りつつ、天人の列に加わったのであった。

玉治別は遠州ら六人に諄々と道を説いて聞かせ、再会を約して別れを告げた。杢助、お初、玉治別の三人は、鷹依姫の岩窟を指して進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月19日(旧04月23日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月5日 愛善世界社版166頁 八幡書店版第4輯 325頁 修補版 校定版171頁 普及版75頁 初版 ページ備考
OBC rm2109
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本文  雨もなきに湖水の水量は増りゆき、最早三人の鼻の位置まで水は漂うて来た。湖水に聳り立ちたる一つ岩も今は水中に没し、黒い頭が三つ許り湖面に浮かんで居る様に見えた。月は俄に黒雲に包まれ、咫尺を弁ぜざる細かき雪は俄に降り来り、寒冷身をきる如くなり、その生命瞬間に迫るを、三人は如何はせむと相互に心を揉み乍ら、尚も神を念ずる事を為さずありけるが、忽ち暗黒の水面をパツと照らして入り来る三箇の火球ありて三人が身の上下左右に荒れ狂ふ。湖水は二つに割れたりと見るや湖底より美はしき三柱の女神、左手に小さき玉を捧げ、右手に鋭利なる両刃の剣を抜き持ち乍ら、徐々と三人の前に現はれ来りしが何時の間にか岩は水面に高く現はれける。而して岩島の根には一滴もなき迄、水は左右に分れて干上り、三人の女神と見えしは誤りにて、さきに立ちたるは六歳のお初、次に玉治別、次に杢助の大男なり。
遠州『ヤア貴方は玉治別さま、何卒生命ばかりは助けて下さい』
玉治別『此湖水は八岐大蛇の眷族の大蛇の棲処である。此湖の水を左右に割つたのは全く大蛇の仕業であるぞ。早く心の底から悔悟を致し、誠の道に立ち帰れば宜し、さなくば斯くの如く神変不可思議の神術を以て、汝を飽迄も懲しめてくれむ。いつ迄も我を張るならば大蛇の腹に葬られる様な事が、今眼前に突発するぞ』
駿州『何卒今度ばかりはお助け下さいませ。決して悪事は致しませぬ』
 湖水は見渡す限り次第々々に水量減じて、遂には湖底まで現はれ来り、只一条の川、真ん中を流るるのみとはなりぬ。
 此時又もや杢助、玉治別、お初の三人は宣伝歌を歌ひ乍ら此場に近寄り来る。其歌、
杢助『瀬織津姫大神の  神言畏み玉治別の
 神の使は津田の湖  枉津の棲処を言向けて
 世の災患を救はむと  心に腹帯、時置師
 神命の世を忍ぶ  賤の樵夫と身を窶し
 名も杢助と改めて  津田の湖をば根底より
 清めむものと時を待つ  折しもあれや三五の
 神の教の宣伝使  玉治別が訪ね来て
 執着心の深かりし  妻の霊魂を弔ひつ
 根底の国の苦みを  救ひ給ひし神恩に
 報いむ為と今此処に  娘お初と諸共に
 現はれ来り玉の緒の  生命救ひし其上に
 鼓の滝に現はれて  鋼の鍬を打ち揮ひ
 さしもに堅き岩石を  きつて落せば忽ちに
 底を現はす津田の湖  ここに三人はイソイソと
 遠州武州駿州の  生命を託けた一つ岩
 来りて見れば此は如何に  我等が姿か幻か
 寸分違はぬ三柱の  女神は此処に現れましぬ
 神の恵の御光に  今は漸く照らされて
 霊肉一致の清姿  最早我等は神界の
 誠の道の太柱  実に尊さの限りなり
 アヽ三人の人々よ  今より心を取直し
 小さき欲を打ち捨すてて  万劫末代萎れない
 誠一つの花咲かせ  味も香もある桃の実の
 神の御楯と逸早く  成りて仕へよ現世は
 夢幻の浮世ぞや  幾千代までも限りなく
 生命栄えて神の国  生きたる儘に神となり
 世人を救ふ人となり  早く心を改めて
 我等に従ひ来れかし』
玉治別『高春山は高くとも  鷹依姫は猛くとも
 誠一つの言霊に  服へ和すは眼前
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましまして
 我等を始め杢助師  神の化身のお初嬢
 厚く守りて此度の  言霊戦に恙なく
 全き勝利を得させかし  此三人の肉の宮
 洗ひ清めて霊幸はふ  神の尊き宮となし
 神政成就の神業に  使はせ給へ天教山に
 永久に鎮まる木の花姫の  神の命や斎苑館
 治めまします素盞嗚の  神の尊の御前に
 心に潜む鬼大蛇  醜女探女も喜びて
 誠の神となり変り  此肉体を何時迄も
 いと健かに現世に  立ちて働く神代と
 守らせ給へ惟神  御霊幸はひましませよ』
と玉治別が声を限りに歌ひ終れば、今迄現はれたる三人の姿は、又もや元の女神となつて天女の舞を舞ひ乍ら、中空さして昇り行き、遂には神姿も見えずなりにけり。遠州、駿州、武州の三人は涙を滝の如くに流しつつ感謝に咽ぶ。三人の背後よりは紫の雲、シユウシユウと湯烟の如く音をたてて頭上に高く立昇り、其中より蜃気楼の如く三人の女神現はれ給ひ、右手に鈴を持ち、左に日月の紋を記したる扇を開いて中空に舞ひ狂ふ。之ぞ遠州、駿州、武州三人の副守護神が体を離れたるより、その精霊中の本守護神は喜び給ひて其神姿を現はし歓喜の意を表したるなりき。一同は此奇瑞に感歎し天津祝詞を奏上する折しも、雲州、三州、甲州の三人は、容色艶麗なる女神の手を引き、杢助の前に現はれて、前非を悔い涙を流して合掌する。三人に手を引かれて此処に現はれし女神を見れば、こは抑如何に、十年以前の壮健なりし花の盛りのお杉が姿なりければ、杢助は思はず知らず、
『アヽ女房の精霊か、能くも無事に居てくれた』
『お母さま、よう来て下さいました』
とお初はお杉の精霊に取りついて嬉し涙に泣き崩るる。甲州、雲州、三州の三人の後よりは又もや紫雲立ち昇り、以前の如く美はしき女神現はれ空中に舞曲を奏し、之亦雲中に神姿を隠しける。
 暴悪無道の盗賊、三州、雲州、甲州も杢助が娘のお初の誠心に絆され、一旦金銀は奪ひ取りて帰りしものの何となく後髪引かるる心地して、お杉の墓に知らず識らず引き寄せられしが、此時墓よりヌツと現はれし影は、痩せ衰へて死したる筈のお杉にして、中肉中背の色飽迄白く元気飽迄旺盛なる姿なりけり。お杉は之より娑婆の執着心をさり天国に上り、後に残せし夫並に一粒種の我娘の幸福を祈り、尊き天人の列に加はりける。之を思へば恐るべきは執着心と欲望なり。あゝ惟神霊幸倍坐世。
 之より玉治別は遠州以下五人に諄々として誠の道を説き、再会を約して此処に別れを告げ、杢助、お初と共に艱難を冒して、鷹依姫の割拠せる岩窟に向つて宣伝歌を唱へながら勢よく登り行く。
(大正一一・五・一九 旧四・二三 北村隆光録)
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