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文献名1霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻
文献名2第1篇 南海の山よみ(新仮名遣い)なんかいのやま
文献名3第2章 副守囁〔714〕よみ(新仮名遣い)ふくしゅのささやき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-06-22 19:57:35
あらすじ熊野の那智の滝で罪穢れを洗い清めた若彦の館に、魔我彦と竹彦が訪ねて来た。魔我彦、竹彦は玉照彦・玉照姫の使者として来たのだ、と傲然と構えている。魔我彦と竹彦は、聖地で杢助と初稚姫が幅を利かせているために高姫が非常に心配をしている、と報告し、言依別命が玉能姫と不倫をしているなどど嘘の報告をなし、若彦を取り崩そうとする。しかし若彦は、それが本当だとしても小さなことだ、と取り合わない。魔我彦は必死で若彦の心を崩そうとするが、竹彦が茶々を入れて邪魔をする。竹彦は神懸りになって、魔我彦・竹彦が国依別と玉治別を谷底へ突き落としたことを仄めかすようなことを言い、逆に魔我彦が焦り出す。そこへ、若彦に三人の男の来客があった。若彦は魔我彦・竹彦が逃げないように見張りをつけて、接客に出た。
主な人物 舞台熊野の若彦館 口述日1922(大正11)年06月10日(旧05月15日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月19日 愛善世界社版24頁 八幡書店版第4輯 501頁 修補版 校定版24頁 普及版10頁 初版 ページ備考
OBC rm2302
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本文の文字数5430
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本文  罪も穢れも那智の滝、洗ひ流した若彦は、心もすがすがしく三五教の教理を遠近に伝ふべく、普陀落山の麓に館を造り、教を四方に布きつつあつた。門を叩いて、
『頼まう頼まう』
と訪ふ二人の宣伝使がある。門番の秋公、七五三公は此声に眠りを醒まし、大欠伸をしながら、
七五三公『オイ秋公、誰だか門外に訪ふ人がある。早く起きて開けてやらないか』
秋公『夜も碌に明けてゐないのに、此の門開ける必要があるか。少し時刻が早いから、マア一寝入したがよからう』
 門を叩く声益々忙はしい。七五三公は夜具を被つた儘、
『オイオイ開けるのは秋公の役だ。早く起きぬかい』
秋公『夫程喧しく言ふなら、貴様開けてやれ』
『オレは其名の如くしめる役だ。愚図々々して居ると、又若彦の大将からお目玉を頂戴するぞ。エー仕方の無い奴だ』
と寝巻の儘、仏頂面を下げて片足に下駄、片足に草履を穿き、三尺帯を引摺り乍ら、門をガラガラと開いた。二人は丁寧に会釈し、
『若彦の宣伝使は御在宅ですかな』
七五三公『そんな難かしいことを言つて解るかい。居るか、居らぬかと云ふのか。さうしてお前は何と云ふ宣伝使だ』
『ハイ私は魔我彦、外一人は竹彦と云つて三五教の宣伝使です。大神様の御命令に依つて、遥々参つたのですから案内して下さい』
『曲つたとか、曲らぬとか、案内とか、門内とか、お前の言ふ事は全然訳が分らぬ。そんな英語を使はずに俺達に分る様に云つて呉れ』
魔我彦『アハヽヽヽ、訳の分らぬ門番もあつたもんぢやなア。こんな奴が門番して居る位だから、大抵若彦の御手並も分つてゐるワイ』
七五三公『一寸待つて呉れ。今お前は此家の御主人を若彦と云つたなア。何故若彦さまと言はないのだ。そんな無茶なこと云ふ奴は、此の門は通されぬのだ。大方魔谷ケ岳の蜈蚣姫の乾児だらう。三五教の宣伝使だなんて、うまく化て来たのではないかな。……オイ秋公、貴様起きて来い。大変な奴がやつて来居つたぞ』
 秋公は此声に驚いて、寝巻の儘此場に現はれ来り、
『大変な奴とは此奴か。如何したといふのだ』
『此方の主人を若彦なんて呼びつけにしやがるものだから、むかつくのだよ秋公』
『それはむかつくとも、オイ何処の奴か知らぬが今日は帰つて呉れ』
魔我彦『其方は謂はば若彦の門番でないか。大神様の御命令で来た吾々を、通すの通さぬのと云ふ権利があるか。早く案内を致せ』
と稍怒りを帯びた語気で呶鳴りつけた。二人は頭を掻き乍ら、
秋公『マア是から吾々門番は手水を使ひ、着物を着換へ、朝飯を食つて悠くりと案内をしてやるから、それ迄其処に待つてゐるが好いワイ』
竹彦『魔我彦さま、広いと云つてもたかが知れた若彦の屋敷、サア、行きませう』
と先に立ち奥に入る。若彦は涼しさうな薄衣を着て、庭先の掃除に余念無く、箒目を正しく砂の上に画いてゐる。
魔我彦『アヽ彼れが何うやら若彦の宣伝使らしい。大将は朝早くから彼の通り、箒を以て園丁の役を勤めて居るのに、門番の奴グウグウと寝やがつて、ポンついてゐやがる。ウラナイ教の北山村の本山でも、依然さうだつた。門番は威張るばかりで働かぬものだ。なア竹彦、貴様も波斯の国ではウラナイ教の門番をしてゐた時、依然さうだつたなア』
竹彦『そんなことを今頃に持ち出すものぢやありませぬぞ。さうしてウラナイ教なんて、疾の昔に消滅して了ひ、今は吾々は立派な三五教の宣伝使だ。昔の門番を、こんな処で担ぎ出されると吾々の沽券が下る。そんな過去つたことを云ふのなら、青山峠の谷間の突発事件を此処で開陳しようか』
魔我彦『シーツ』
竹彦『シーツとはなんだ。人を四足扱ひにしやがつて、シーシー云うと、死んだ奴が又恨めしやーナアーとやつて来るぞ。縁起を祝ふ神の道だ。四と九とは言はぬやうに慎んだがよからう』
と佇んで若彦の掃除を見乍ら二人が囁いてゐる。其の声が耳に入り若彦は、箒を手にしながら両人の姿を眺めて、
若彦『アヽ貴方は魔我彦さまに竹彦さま、朝早くから、よくお入来になりました。どうぞ奥へ通つて下さい。一別以来の御話しも悠くり承はりませう』
 魔我彦は儼然として、
『私は玉照彦、玉照姫様の御使として、遥々参つたもので御座います』
竹彦『謂はば神様の御使、謹みて御聴きなさるがよろしからう』
と傲然と構へてゐる。若彦は腰を屈め、
『何は兎もあれ、奥へ御通り下さいませ』
と先に立つ。二人は離れ座敷に招かれ、茶湯の饗応を受け、暫く打寛いで四方山の話に耽る事となつた。若彦は表に出で部下の役員信者と共に、神殿に朝の拝礼を為し、一場の説教を了り朝飯を喰つて居る。侍女は膳部を拵へ、離れ座敷の二人の前に持運び、朝飯をすすめて居る。若彦は朝餉を済まし、衣紋を繕ひ、離座敷の二人が前に現はれ、
若彦『これはこれは御両人様、長らく御待たせ致しました。遥々の御越し、何の御馳走も無く誠に済みませぬ』
魔我彦『三五教の教理は一汁一菜と云ふ御規則で御座る。それにも関はらず、イヤもう贅沢な御馳走に預りました。聖地に於ては到底玉照彦様でも、こんな御馳走は見られたことも御座りませぬ。併し乍ら折角の御志、無にするも如何かと存じ、快く頂戴致しました。アハヽヽヽ』
若彦『吾々も三五教の宣伝使、一汁一菜の御規則はよく守つて居ります。併し乍ら今日は神様の御入来ですから、神様に御馳走を奉つたのです。魔我彦さまや、竹彦さまに御上げ申したのでは御座らぬ。貴方は神様に上げたものを、気の毒だから御食れましたと仰有つたが、神様の分まで御食りになつたのですか』
と竹篦返しを喰はされ、二人はギヤフンとして円い目を剥く。
魔我彦『今日吾々の参つたのは大神様の御命令、玉照彦、玉照姫の二柱の神司より、御神慮を伝ふべく出張致しました。貴方は聖地の大変を知つて居りますか』
若彦『聖地は無事安穏に神業が栄えて居るぢやありませぬか』
魔我彦『さてさて貴方は長らく聖地を離れてゐるから解らぬと見えるワイ。貴方の御存知の杢助と云ふ奴、全然聖地へ入り込み、初稚姫の少女の言ふ事を楯に取り、横暴を極め、誰も彼も人心離反し、今に大変動が起らんとして居る。それで高姫さまも非常に御心配を遊ばして御座るのです』
若彦『さうすると貴方は高姫さまの旨を奉じて来られたのか、或は言依別の教主様の旨を奉じて御入来になつたのか、それから第一番に聴かして貰ひませう』
竹彦『そんな事は如何でも好いぢやないか』
と言はんとするを魔我彦は周章て押し止め、
魔我彦『コレコレ竹彦さま、お前は約束を守らぬか。お前の言ふべきところではない、謂はば従者ぢやないか』
竹彦『従者か何か知らぬが依然表面は魔我彦と同格の立派な宣伝使だ。余り偉さうに言つて貰ひますまい。青山峠の絶頂は何うですな』
と顔を覗き込む。
魔我彦『青山に日が隠らば烏羽玉の夜は出なむ。朝日の笑み栄え来て、拷綱の白き腕淡雪の若やる胸を、素手抱き手抱きまながり、真玉手玉手さし巻き、腿長にいほしなせ、豊御酒奉らせ。アハヽヽヽ』
と笑ひに紛らす。
竹彦『ヘン、うまい処へ脱線するワイ』
魔我彦『沈黙だ』
若彦『杢助が何うしたと言ふのですか』
魔我彦『杢助はお前さまを紀州下りまで追ひやつて置き、お前の女房玉能姫をうまく抱き込み、聖地へ連れて行き、言依別の命に密と○○させて、それを手柄に威張つて居るのだ。それが為に聖地の風紀は紊れ、「町内で知らぬは亭主ばかりなり」と云ふ事が突発して居ますよ。お前さんは杢助や、言依別を何と思ひますか。肝腎の女房を○○されて、それで安閑としてゐるのですかな。高姫さまが大変に憤慨なされて「アヽ若彦さんは気の毒ぢや、何卒一日も早く此事を知らして上げ、私と一緒に力を協して聖地を改革せねばならぬ」と仰有つて、錦の宮に御願ひを遊ばしたところ、玉照彦、玉照姫の神司に大神が御降臨遊ばし、「不届至極の言依別、今日より其職を免じ、高姫に一切万事を委任する。就ては杢助を叩き出し、若彦さんを総務にするのだから早く聖地へ帰つて貰へ」との有り難き御言葉、それ故吾々は遥々と参りました』
若彦『それは御苦労でした。併し乍ら貴方の仰有る大変とは、そんなものですか。それはホンの小さい問題ぢやありませぬか。例令玉能姫が○○されたと言つても、吾々さへ黙つて居れば済むことだ。其の位な事が、何大変であらう。アハヽヽヽ』
と手も無く笑ふ。魔我彦はキツとなり、
『これは怪しからぬ。自分の女房を○○され乍ら平気で笑うてゐるとは、無神経にも程度がある。イヤ、貴方は玉能姫以上のナイスが出来たので、これ幸ひと思つてゐるのでせう』
若彦『私は神界に捧げた身の上、玉能姫を措いて他に女などは一人もナイスだ。アハヽヽヽ』
と木で鼻を擦つたように笑つて取り合はぬ。
魔我彦『それよりも未だ未だ一大事がある。如意宝珠や、紫の玉や、黄金の玉を隠した張本人は言依別命だ。可愛相に黒姫さまや、竜国別、鷹依姫其他の連中は、玉探しに世界中へ出て了つた。さうして言依別の教主は何でも目的があつて、自分一人で何処かへ隠して了ひよつたのだから、何処までも詮議立をしなくてはなりませぬ。何を云つても玉能姫を○○するために、お前さまを斯んな遠国へ、杢助と諜し合せて追ひやるやうな代物だからなア』
若彦『アヽさうですか、私は言依別様が何をなさらうとも、神界に仕へて居る方だから、少しも異存は申しませぬ、絶対服従ですから』
魔我彦『服従も事に依りますよ。些と冷静に御考へなさい。天下の大事ですから。教主一人と天下とには換られますまい』
若彦『彼の賢い抜目の無い玉治別や、国依別が付いて居るのですから、滅多なことはありますまい。もしも左様なことがあれば、屹度知らして来る筈になつて居るのですから』
竹彦『玉治別や国依別は、モウ現世には………』
と言ひかけるのを、魔我彦は『シーツ』と制し止める。
竹彦『又人をシーなんて馬鹿にするない。シーシー死骸、死人、しぶとい、知らぬ神に祟り無し。死んだがマシであつたかいなア』
と首を篦棒に振り、長い舌を出してゐる。魔我彦は心も心ならず、
魔我彦『若彦さま、此男は些と逆上してゐますから、何を云ふか解りませぬ。チツとキ印ですから其のつもりで聴いて下さい』
若彦『玉治別と国依別さまの消息は御存知でせうな』
魔我彦『………』
竹彦『此の竹彦は知つても知りませぬ。併し乍ら副守護神が能く知つてゐますよ』
 魔我彦は矢庭に両手を組み、竹彦に向つてウンと一声、魔我彦は、
『副守の奴、除けーツ』
と呶鳴り立てゐる。
竹彦『ウヽヽ油断を致すと谷底へ突落されるぞよ。一旦谷底へ落した上で神が救けて、誠の御用を致さすぞよ。此世は神の自由であるから、人間のうまい計画は成就致さぬぞよ。蛙は口から、われとわが手に白状致さして面の皮を引剥くぞよ』
魔我彦『下れ下れ、下り居らう。其方は野天狗であらう』
竹彦『野天狗でも何でも可いわ、谷底ぢや、押も押れもせぬ三五教の宣伝使でも、矢張押されて谷底へ落ちてアフンと致すことがあるぞよ。今に上が下になり下が上になるぞよ。神が表に現はれて善と悪とを立別るぞよ』
魔我彦『エー喧しい野天狗だ。下れと云つたら下らぬか』
竹彦『ウヽヽ若彦殿、気をつけたがよからうぞよ。悪の誘惑に乗つてはならぬぞよ。何程うまいこと申して来ても、神に伺うた上でなければ、聞いてはならぬぞよ。マガマガマガ』
魔我彦『モシモシ若彦さま、困つた邪神が憑依したものですなア』
若彦『イヤ邪神でもありますまい。大方此の守護神の言ふことは、事実に近いやうですよ。国依別、玉治別の宣伝使は、若しや或はマガタケル彦に谷底へ突き落されたのではありますまいかな』
竹彦『ウヽヽ流石は若彦の宣伝使だ。汝の天眼通、天晴れ天晴れ』
 魔我彦は顔蒼白め、ソロソロ遁腰になつて此場を立去らうとする。
若彦『マア魔我彦さま、悠くりなさいませ。天が下には敵も無ければ味方も有りませぬよ。神様が善悪は御審判き下さいますから、吾々は何事が起らうとも惟神に任して居れば好いのですよ。サア、お茶なつと召上りませ』
と茶を汲んで突き出す。魔我彦は身体ワナワナと戦き出した。
 斯る処へ召使のお光と云ふ女、あわただしく走り来り、
お光『只今三人のお客様が見えました。何う致しませう』
若彦『表の奥の間へ御通し申して置け』
魔我彦『モシモシ其の三人の方と云ふのは、何んな御方で御座いますか』
お光『なんでも宣伝使さまのやうです。大変大きな御方が一人混つてゐられます』
 魔我彦の面色はサツと変つた。竹彦は身体をブルブルと慄はせ乍ら、又神憑りになつて、
竹彦『それ来た それ来た、谷ぢや谷ぢや、玉ぢや玉ぢや、クニクニクニモクモクモク』
と呶鳴り出した。若彦は、
若彦『コレお光や、四五人の男を此処へ招んで来てお呉れ』
 『ハイ』と答へて、お光は表を指して姿を隠し、暫くありて甲、乙、丙、丁、戊の五人の大男を伴れて来た。
若彦『ヤア五人の男ども、私は表のお客さまに少し用があるから、二人のお客さまを見放さないやうに、大切に保護をして居るのだよ。出口入口に気をつけて悪魔の侵入せないように守つてあげて呉れ。遁げられては一寸都合が悪いからなア』
甲『ハイ何事もチヤンと私の胸に御座います。御心配下さいますな』
若彦『何分宜しう頼む。モシ魔我彦さま、竹彦さま、私は表の客人に一寸会つて来ます。何うぞ悠くりお茶でも上つて遊んで下さいませ』
と五人の男に目配せし、悠々と此場を立つて表屋の方に姿を隠す。
(大正一一・六・一〇 旧五・一五 外山豊二録)
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