バラモン教が顕恩郷を支配していたとき、バラモン教幹部の鬼熊別・蜈蚣姫夫婦の間に小糸姫という一人娘があった。
また部下の雉子という男、世才に長けてうまく鬼熊別夫婦に取り入り、宣伝使に取り立てられて友彦という名を賜った。しかし友彦は、なんとかして小糸姫を自分のものにして、鬼熊別の後継となろうという野心を持っていた。
あるとき鬼熊別一家は部下を連れてエデン河に船を浮かべて酒宴を催した。しかし酔った鬼熊別の鉄拳を避けようと逃げる従臣によって船が傾き、小糸姫が激流に飲まれてしまった。
水練に長けた友彦は、小糸姫を助けて蘇生せしめ、無事に館に連れ帰った。喜ぶ鬼熊別夫婦を前にして、友彦は現幹部の不甲斐なさを讒言して取り入る。
小糸姫の無事を祝ってバラモン教の祝典が開かれた。バラモン教棟梁の鬼雲彦は挨拶に立ち、小糸姫の遭難に対して幹部連が何の力にもならなかったことを引き合いに出して、バラモン教の教勢の衰えを嘆き、一同に奮起を促した。
友彦はこれに力を得て登壇し、現幹部の無力を非難して暗に己を売り込んだ。祭典の場は友彦への賛否で騒然となったが、鬼熊別一家とともに友彦はゆうゆうと引き上げた。