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文献名1霊界物語 第26巻 海洋万里 丑の巻
文献名2第3篇 神都の秋よみ(新仮名遣い)しんとのあき
文献名3第11章 言の波〔776〕よみ(新仮名遣い)ことばのなみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-10-09 19:03:14
あらすじ秋彦は聖地が近づき、元気旺盛になって副守護神の発動気分で歌い始めた。紫姫の従者の鹿として比沼真奈井に詣でる途中、バラモン教に囚われていたが、悦子姫一向に救われ、三五教徒として高城山の松姫を言向け和した過去を歌に歌った。そして高姫一行が玉への執着から、自分と国依別の偽神懸りを信じて竹生島に行ってしまったことを宣り直すようにと祈って終わった。歓呼に包まれて船は岸辺に安着した。言依別命を先頭に、迎えに来た信徒たちに代わる代わる神輿をかつがせて、しずしずと錦の宮に帰って行った。腰の曲がった夏彦は、千鳥のように大道を左右に手を振り首振り、麻邇の玉が錦の宮に静まることになった経緯を、祝いの歌に歌いこんだ。続いて常彦が夏彦の後を受けて祝歌を歌い、佐田彦がそれに続いた。佐田彦の歌には、高姫が隠された玉を求める様が歌いこまれていたが、その玉の隠し場所や経綸の詳細は伏せられていた。佐田彦は高姫らの身の上を案じて、一刻も早く聖地に帰って来て精神を和めるようにと祈りを歌に歌った。波留彦は続いて歌った。バラモン教の滝公として悪事をしていた自分も、常彦の情けによって改心し、玉能姫と初稚姫に従って三つの玉の神業に携わったことを歌った。そして、悪に溺れた滝公も神の光に照らされて波留彦となり、神業に携わったように、高姫・黒姫も聖地に戻って執着心の雲を晴らすようにと祈願を歌った。日ごろの述懐を歌い終わった波留彦は錦の宮の方に向かって拍手し、暗祈黙祷した。五個の神宝を乗せた神輿は無事に錦の宮に到着し、言依別命を先頭に八尋殿に設けられた聖壇に安置された。信徒らは立錐の余地も無いほどに集まり、神威のあらたかなることに感謝の涙を流した。九月九日の聖地の空には、金翼を並べて空中を飛ぶ八咫烏の雄姿が見られた。妙音菩薩の微妙な音楽は、三重の高殿に空高く響き渡った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年07月19日(旧閏05月25日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年6月5日 愛善世界社版141頁 八幡書店版第5輯 193頁 修補版 校定版156頁 普及版51頁 初版 ページ備考
OBC rm2611
本文のヒット件数全 1 件/厳の御霊の大御神=1
本文の文字数6428
その他の情報は霊界物語ネットの「インフォメーション」欄を見て下さい 霊界物語ネット
本文  秋彦は漸く聖地に船の近付きしに元気益々旺盛となり、副守護神の発動気分を発揮し歌ひ始めた。
『四尾の山が見えて来た  和知の流れは永久に
 清き教を白瀬川  生田の里も早越えて
 何の便りも音無瀬の  流れも清き由良の川
 由良の港に名も高き  秋山彦や紅葉姫
 鹿と呼ばれし秋彦が  言依別に従ひて
 麻邇の宝珠を迎へむと  流れを下り来て見れば
 思ひ掛なき瑞御霊  八洲の河原に誓約して
 清明無垢の御心を  現はし給ひし救世主
 神素盞嗚大神の  聖顔殊に麗しく
 慈愛の涙満面に  湛へいませる崇高さよ
 四尾の山に奥深く  此世を忍び給ひつつ
 神世をここに待ち給ふ  国武彦の御身魂
 煙の如く現はれて  紅葉かがやく秋山の
 館に隠れ給ひつつ  遠き昔の初より
 黄金の島の秘密郷  諏訪の湖水の底深く
 かくれて神世を待ち給ふ  玉依姫の厳御魂
 麻邇の宝珠は恙なく  八咫烏に送られて
 天津御空を潔く  秀妻の国の中心地
 外の囲ひと聞えたる  由良の港に鳩のごと
 降り給ひて神の世の  礎固くつき給ふ
 あゝ惟神々々  御霊の幸を蒙りて
 流れも清き和知川に  汚れし身魂を洗ひつつ
 前代未聞の神業に  参加なしたる尊さよ
 思ひまはせば其昔  兄の駒彦諸共に
 紫姫に従ひて  花の都を後になし
 豊国姫の常久に  鎮まりいます比沼真奈井
 瑞の宝座に詣でむと  主従三人山を越え
 草を分けつつ進み行く  普甲峠の手前まで
 主従三人進む折  バラモン教に仕へたる
 三嶽の山の守護神  名も恐ろしき鬼鷹や
 情容赦も荒鷹の  曲津の神に誘はれ
 紫姫と諸共に  醜の岩窟に捕へられ
 進退ここに谷まりて  前途を煩ふ折柄に
 三五教の宣伝使  悦子の姫を始めとし
 音彦、加米彦両人が  岩窟の中に駆入りて
 神の化身の丹州と  息を合せて救ひ出し
 茲に三人は三五の  心の岩戸をさらさらと
 開き給ひし尊さよ  三五教の人々と
 三嶽の山の峰伝ひ  蜈蚣の姫の籠りたる
 鬼ケ城へと立向ひ  言霊戦を開始して
 バラモン教の司等を  雲の彼方に追ひ散らし
 それより聖地に駆向ひ  神の大道を伝へむと
 高城山の松姫が  館をさして進み行く
 堪へ忍びの花咲きて  神の御目に叶ひしか
 名も秋彦と賜はりて  いよいよ尊き宣伝使
 西や東や北南  神の御教を伝へつつ
 稚姫君大神を  祀りし生田の神館
 国依別や駒彦と  三つの御霊の御教を
 道を求むる人々に  明し伝ふる折もあれ
 玉を索めて南洋の  竜宮島まで彷徨ひし
 高姫さまの一行が  訪問されて国さまや
 駒彦、秋彦三人は  又も五月蠅い玉詮議
 さつと裁いて近江路の  竹生の島に宝玉は
 社殿の下に奥深く  隠されありと出放題
 其虚言を真に受けて  高姫さまを始めとし
 高山彦や黒姫は  時を移さず進み行く
 あゝ惟神々々  国依別や秋彦が
 心にもなき詐りを  宣り伝へたる曲業を
 直日に見直し聞直し  是非なきことと宣り直し
 赦させ給へ三五の  道を守らす大御神
 埴安彦や埴安姫の  貴の命の御前に
 慎み敬ひ詫びまつる  あゝ惟神々々
 御霊幸はへましませよ』
と歌ひ終つた。
 歓呼声裡に玉の御船は漸くにして、吉美の浜辺の南岸に安着した。
 言依別命を先頭に、五十子姫、梅子姫、初稚姫、玉能姫、玉治別や黄竜姫、蜈蚣姫と順序を正し、錦の宮の八尋殿より迎へ来れる数多の信徒に神輿を舁がせ、列を正してしづしづと、微妙の音楽に前後を守られつつ、粛々として錦の宮に帰り行く。
 腰の曲つた夏彦は、嬉しさの余り足も地に着かず、千鳥の如く右左、大道狭しと手を振り首を揺りつつ祝ひの歌を高らかに口ずさみながら帰り行く。
『あゝ惟神々々  御霊幸はへましまして
 天地を清むる三五の  神の教の御光は
 四方に輝く時来り  三つの宝珠を始めとし
 今また五つの麻邇の玉  経と緯との御仕組の
 錦の機を織りませる  真の神を斎りたる
 錦の宮に更めて  鎮まりますこそ尊けれ
 心も赤き秋山彦の  神の命の真心は
 照り輝きて紅葉姫  大和心の厳御霊
 皇大神は詳細に  夫婦が心をみそなはし
 空前絶後の神業を  依さし給ひて永久に
 誉を四方に伝へむと  神素盞嗚大御神
 国武彦の厳御霊  再び館に現はれて
 三五の月の大御教を  堅磐常磐に固めまし
 神の大道に五十子姫  教の花は香ばしく
 一度に開く梅子姫  花の莟の初稚の
 姫の命や玉能姫  玉の光はいやちこに
 玉治別と現れまして  神の御稜威もテールス姫の
 神の司や黄竜姫  蜈蚣の姫や友彦の
 鼻の先まで紅の  赤き心の宮仕へ
 暗夜を明石の久助が  海洋万里の波を越え
 妻のお民と諸共に  空前絶後の神業に
 仕へまつりし健気さよ  花さく春も早過ぎて
 あつき心の夏彦が  今日の生日の足日をば
 喜び祝ひ奉り  千代も八千代も三五の
 神の教の礎は  いや固らかに揺ぎなく
 茂り栄ゆる八桑枝の  日に夜に開きのぶるごと
 進ませ給へ惟神  神の御前に慎みて
 今日の喜び祝ぎまつる  あゝ惟神々々
 御霊幸はへましませよ』
と歌ひ了つた。
 常彦は又夏彦の歌に促されて怪しき口調を以てうなり出した。
『ウラナイ教の黒姫に  愛想をつかして三五の
 誠の道に救はれし  沈香も焚かぬ屁も放らぬ
 教も知らぬ常彦が  錦の宮の側近く
 朝な夕なに仕へつつ  唯々諾々と日を送り
 三五教の隆盛を  指折り数へ松の世の
 来るを遅しと伺へば  三つの御霊の如意宝珠
 綾の聖地に納まりて  教の光日に月に
 四方に輝く目出度さよ  慶びを積み暉きを
 重ねて広き八尋殿  九つ花の咲き匂ふ
 十の美世廻り来て  思ひもよらぬ竜宮の
 五つの御霊の麻邇宝珠  初稚姫や玉治別の
 神の使等一行の  清き身魂の働きに
 諏訪の湖空高く  神の使に送られて
 雲を圧して悠々と  輝き渡り帰ります
 今日の生日の足日こそ  五六七神政成就して
 天国浄土も目のあたり  出現したる思ひなり
 あゝ諸人よ諸人よ  天津神等国津神
 百の司の神等の  御前に赤き心もて
 慎み感謝し奉れ  先に現れます三つ御玉
 神の仕組を畏みて  隠させ給ふ言依別の
 瑞の命の御指図  仕へまつりし玉能姫
 初稚姫の御前を  寿ぎ奉る信徒の
 沢ある中に高姫や  高山彦や黒姫が
 妬みの焔消えやらず  心焦ちて西東
 南の洋の果てまでも  あてども知らぬ玉探し
 出でます後に竜宮の  実にも尊き麻邇宝珠
 現はれ給ひて言依別の  神の司の御許に
 納まり給ふと聞くならば  高姫如何に村肝の
 心なやます事ならむ  今から思ひやられける
 あゝ惟神々々  御霊幸はへましまして
 三五教の上下は  神に心を任せつつ
 睦び親しみ末永く  歓ぎて伊都の大前に
 心平に安らかに  心の空の雲霧を
 尊き御水火に吹き払ひ  堅磐常磐の礎を
 築かせ給へ惟神  神の御前に願ぎ奉る』
 佐田彦は又もや歌ひ出した。
『○○山の頂上に  ○○○に従ひて
 空前絶後の神業に  仕へ奉りし佐田彦は
 初稚姫や玉能姫  危き生命を救はむと
 音高々とおちかかる  ○○滝の麓にて
 バラモン教の神司  蜈蚣の姫と格闘し
 初稚姫や玉能姫  二人の神使を救ひつつ
 波留彦諸共○○の  又もや○に立帰り
 ○○○の御前に  三つの御玉を○○し
 ここにいよいよ谷丸を  道の先頭の佐田彦と
 宣り直されて滝公は  夏の初と言ひながら
 名も波留彦と与へられ  初稚姫や玉能姫
 一行四人は慎みて  此の世彼の世の○の海
 波に浮べる○○の  島に小舟を漕ぎつけて
 ○○○を○○し  神の厳しき戒めに
 折角来るは来たものの  ○○○の隠し場所
 知らずに再び漕ぎ帰る  さはさりながら○○の
 ○○したる○○は  確かにここと明らめて
 知つては居れど皇神の  いとも厳しき戒めに
 三十万年未来まで  ○○○にして置かう
 高姫さまや黒姫が  心を焦ちて遠近と
 三つの宝珠の在処をば  夜叉の如くに駆巡り
 当所も知らぬ玉探し  お気の毒ぢやと知つた故
 いろいろ様々理を分けて  申上ぐれど高姫は
 日の出神を楯にとり  続いて黒姫竜宮の
 乙姫さまを標榜し  三つの宝珠はどうしても
 系統の身魂が預らにや  完全無欠の松の世の
 五六七神政は成就せぬ  佐田彦言はぬと申すなら
 言はでも宜しい高姫が  日の出神の神力で
 探して見せうと雄猛びし  万里の波濤を乗越えて
 どこどこまでも探し行く  心の中の可憐らしさ
 玉の在処は○○と  知らして安心させたいは
 山々なれど○○の  教はどうも反かれぬ
 あゝ惟神々々  又もや神の御仕組で
 高姫さまの居らぬ間に  竜宮島の麻邇宝珠
 綾の高天に納まりて  梅子の姫を初とし
 初稚姫や玉能姫  再び尊き神業に
 仕へませしと聞くならば  日の出神も竜宮の
 乙姫さまも肝ぬかれ  アフンとするに違ひない
 夜食にはづれた梟鳥  むつかし顔を目のあたり
 今見るやうに思はれて  お気の毒なる次第なり
 今に高姫帰りなば  初稚姫や玉能姫
 向ふにまはして一戦  おつ始まるに違ない
 平和克復一時も  聖地の空に来て欲しい
 三つの宝珠や五つ宝珠  ほしうて探す高姫の
 心はいつか玉脱けの  ラムネの様な気ぬけ顔
 味もしやしやりも無きのみか  誰が呑んでも水臭い
 うすい憂目にあはしたと  教主の襟髪引掴み
 金切り声を搾り出し  一悶錯をなさるだろ
 佐田彦それが気にかかり  一夜さへも安々と
 眠りに就いた事はない  三つの御霊に比ぶれば
 天地霄壤に違ひある  竜宮島の麻邇の玉
 一つ位は高姫に  手柄を分けてやつたなら
 無事に解決つくだらう  言依別神さまも
 お年が若いで気が利かぬ  私が言依別ならば
 今度は高姫、黒姫に  一つ手柄を指してやる
 さうすりや高姫、黒姫も  手の舞ひ足の踏む所
 知らずに顔の紐をとき  お多福面になるだらう
 どうしてあれ程因縁が  悪い方へとまはるのか
 これを思へば高姫の  執着心の雲晴れず
 自ら暗路に迷ひこみ  大切の大切の神業に
 外れて行くに違ない  心一つの持様で
 善の御用を命ぜられ  悪の御用も引受ける
 善悪正邪の二道に  迷ひ切つたる三人連れ
 三つの御玉は是非なくも  因縁づくぢやと諦めて
 思ひ切つたにしたとこで  麻邇の宝珠のかくされし
 竜宮の島に遥々と  渡りて長らく住みながら
 玉の在処を探らずに  帰り来れる其後で
 五つの玉の現はれし  皮肉な神の経綸に
 定めて舌を巻くだらう  思へば思へば可憐らしい
 どうして是が事もなく  高姫さまが聞いたなら
 心の底から勇むだろ  今から思ひやられます
 あゝ惟神々々  神が表に現れまして
 言依別や高姫の  二つ柱が睨み合ひ
 どうぞ和めて下さんせ  三五教の佐田彦が
 真心こめて願ぎまつる  厳の御霊の大御神
 瑞の御霊の大御神  あゝ惟神々々
 御霊幸はへましませよ』
 滝公の波留彦は佐田彦の歌に引出され、始めて言霊の口を切つた。
『魔窟ケ原に現れし  ウラナイ教の黒姫が
 幕下となつて日に夜に  口汚くも使はれし
 体主霊従の滝公も  普甲峠の梅公が
 故智に倣つて船岡の  山の麓の森林に
 お節の後を追ひまくり  一寸芝居を打つてみた
 悪い時には悪いもの  紫姫の一行が
 暗の中より現はれて  折角仕組んだ此芝居
 蛇尾にされたる其揚句  板公さまと諸共に
 暗の谷間へ蹴落され  腰をしたたか打ちなやめ
 やうやう其処を這ひあがり  帰つて見れば黒姫の
 大い目玉に睨まれて  居た堪らねば板公と
 二人は尻に帆をかけて  漸う其場を抜け出し
 どこへ行つてもふられ蛸  骨なし男と蔑すまれ
 吸ひつく術もなくばかり  お尻を喰へ観音の
 山の峠に佇みて  此世を果敢なむ折柄に
 三五教の常彦が  情のこもつた握飯
 押戴いて蘇生り  いよいよ心をため直し
 神の恵に救はれて  錦の宮の門掃除
 塵や芥を掃きちぎり  心の奥の奥庭を
 清めて時を待ち居れば  尊き神の御恵は
 電の如身に下り  言依別の神司
 近く吾をば招きつつ  再度山の……こら違うた
 再びとなき神業を  依さし給ひし嬉しさよ
 杢助さまの愛娘  初稚姫を始めとし
 暗に紛れて縛りたる  お節の方の玉能姫
 因縁者の寄合ひで  ○○山の○○に
 五人の男女は巡り会ひ  黄金の玉は○○の
 峰に○○かくしまし  金剛不壊の如意宝珠
 紫色の御宝  初稚姫や玉能姫
 滝公さまは波留彦と  名を賜はりて谷丸の
 佐田彦さまと諸共に  帯を二つに引裂いて
 俄に狂ふ玉能姫  髪ふり乱しどんどんと
 二つの玉を肩にかけ  ○○山の山頂を
 一目散に駆出し  谷を飛び越え山伝ひ
 波打際に立並ぶ  堅磐常磐の松林
 蜈蚣の姫の手下等が  目を眩ませて訳もなく
 四人は無事に通りぬけ  胸の動悸も高砂の
 オツト違うた高まりて  息もせきせき又走る
 ○○浜に辿り着き  一艘の船に二百両
 初稚姫の御手より  渡せば船頭は仰天し
 忽ち家に駆入りて  中より戸口を押へつつ
 違約させじと力み居る  頃しも波は高まりて
 船を出すべき由もなく  ○月五日の月低う
 波は愈高くなり  大海原に永久に
 浮びて立てる○の島  神の恵に易々と
 渡り終せて初稚姫や  玉能の姫の二人連れ
 二つの玉を守りつつ  ○○山の絶頂に
 堅磐常磐に隠し置き  千代の印と○○を
 植ゑて帰りし勇ましさ  吾等は○まで送れども
 ○○○は分らない  ○○○の海上を
 夜を日に継いで漕ぎ帰る  時間の程は分らねど
 どうやら四十(始終)一日か  再度山の…又違うた
 又と再び手に入らぬ  此御宝を恙なく
 隠しまつりし神業は  空前絶後の大手柄
 あゝ惟神々々  御霊幸はへましまして
 悪に溺れし滝公も  神の光に照らされて
 転迷開悟の花咲かせ  名も波留彦と宣り直し
 今は聖地に名も高き  神の使の宣伝使
 深き恵を尊みて  遥に感謝し奉る
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  三五教の御宝
 三つの御玉の宝をば  探さにやおかぬと高姫が
 心の駒に鞭ちて  岩の根木の根踏みさくみ
 疲れ果てたる膝栗毛  やがて高姫一行は
 一先づ聖地に帰るだろ  アヽ其時は其時は
 又も五つの麻邇宝珠  心に好かぬ玉能姫
 初稚姫や玉治別の  神の司が竜宮の
 玉依姫の御手づから  麻邇の宝珠を受取りて
 帰りし後と聞くならば  さぞや御心揉めるだろ
 国依別や秋彦の  早速の頓智再度の
 山に坐します大天狗  小天狗までが現はれて
 近江の国の竹生島  玉無し場所を知らしたる
 其天罰は目のあたり  高姫さまが帰りなば
 上を下へと喧しく  又々もめる事だらう
 今から思ひやられます  あゝ惟神々々
 御霊幸はへましまして  今度計りは高姫や
 黒姫さまの一行に  何とか一つ花持たせ
 執着心の雲霧を  払ひ清めて村肝の
 心の空に日月の  澄み渡るごと爽かに
 一切万事相済みて  和気靄々と共々に
 手を携へて三五の  神の教の御光を
 四方の国々島々に  完全に委曲に布き教へ
 五六七の神世の礎を  立てさせ給へ惟神
 尊き神の御前に  慎み敬ひ願ぎ奉る』
と歌ひ了り、日頃の述懐を宣べ終りて拍手し、錦の宮の方に向つて暗祈黙祷するのであつた。
 五個の神宝を乗せたる神輿は無事に聖地に到着し、言依別命を先頭に八尋殿に設けられたる聖壇に安置され、聖地の神司を始め信徒等は立錐の余地もなく集まり来りて、神威のいやちこなるに感謝の涙をふるひつつ、五六七神政の曙光を認めたる如き歓喜の声に充たされた。
 九月九日の聖地の空は、金翼を一文字に伸べて、空中に翺翔する八咫烏の雄姿悠々として右に左に飛び交ひ、妙音菩薩の微妙の音楽は、三重の高殿の空高く響き渡つた。あゝ惟神々々御霊幸はへましませよ。
(大正一一・七・一九 旧閏五・二五 松村真澄録)
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